それまで「外人」扱いだったミルコ・デムーロ騎手が、日本の騎手試験に合格し、腰を据えて日本で騎乗できるようになったのは2015年のこと。
その年には早速ドゥラメンテでクラシック2冠制覇を達成し、最多賞金騎手に輝くなど申し分ない成績を残したのだが、最近は、同時期に「日本の騎手」となったルメール騎手に、勝ち星でも騎乗の華やかさでもやや遅れを取っていた感はあったし、それ以上に、「日本の騎手」になってしまったゆえ、「来日する外国人騎手」に主役の座を奪われることも多かった。
それがこの秋シーズンに入ってからは、スプリンターズS(レッドファルクス)、菊花賞(キセキ)、エリザベス女王杯(モズカッチャン)と大きなタイトルを3つ並べ、そして、今週も皐月賞2着馬、ペルシアンナイトにマイルCSのタイトルをプレゼントした。
誰がどう見ても、エアスピネルが勝つことを確信したであろうゴール前で、3番手からスルスルと伸びて最後はきっちりハナ差勝ち。
1番人気のイスラボニータ&ルメール騎手がもがく中(結果5着)、世界の名手・ムーア騎手の2年ぶりの同レース制覇を阻んだ見事な技巧は、後々まで語り継がれることだろう。
2003年の皐月賞、ネオユニヴァースでの勝利に始まり、積み重ねてきたG1コレクションは、ダービー、ジャパンC、朝日杯FS、有馬記念、天皇賞・秋、高松宮杯、チャンピオンズC、フェブラリーS、桜花賞、スプリンターズS、エリザベス女王杯、宝塚記念、菊花賞、そして今回のマイルCSで15個目。
最近は、平地G1の数自体も増えていて、現在は24レースにまで達しているので、「完全制覇」までにはまだまだ長い道のりがあるのだが、今年だけでG1・6勝。コレクションも3つ増やしている勢いを考えると、30代のうちに、さらに際どいところまでいっても全く不思議ではない。
ドゥラメンテ以降は、大レースでの乗り馬に必ずしも恵まれていない、という問題はあったが、それでも勝たせてしまうのが名手の証なわけで、ここからさらに有力な2歳馬を手中に収めれば、益々確率は高くなるだろうなぁ、と。
残された今年の残りのシーズンで、前人未到の夢を広げるような展開を見せてほしいものだと思うのである・・・。