先週「弁護士ランキング」を掲載して、見事に年末を締めくくってみせた日経紙の法務面。
そして、年明け第1週となる今週は、「法律 2016年はこう変わる」という、これまた季節感あふれる記事を掲載している*1。
ここで紹介されている特許法(職務発明関係)、景品表示法(不当表示への課徴金導入)、不正競争防止法(営業秘密侵害に関する罰則強化)、マイナンバー(番号法)、といった法令の解説はコンパクトによくまとめられているし、それ自体にケチを付けるつもりはない。
ただ、このラインナップを見た時に、「これだけでしたっけ?」という物足りなさを感じたのも確かである。
特許法・不競法は、知財の世界では確かにここ数年の“ビッグ・イシュー”だったテーマだが、特許法は紆余曲折あった結果、落ち着くべきところに落ち着いているし*2、不競法は改正内容こそドラスチックなものになっているものの、通常の事業活動を行っている限り、法改正によって実務に大きな影響が出る、ということはないはず。
マイナンバーに至っては、昨年のうちに大きな対応を終わらせた会社も多いと思われ、感覚的には“半ば終わった話”になっている人は多いはずである*3。
そういう観点からすれば、自分は、むしろ、企業側から見た「2016年の動き」として「消費者」との関係に着目しても良かったのではないか、と思うところで、特に、「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」が今年の秋(10月1日)に施行される、ということは、ここで押さえておいても良かったのではなかろうか。
今回の記事で紹介されている景品表示法の改正にしても、本当に怖いのは課徴金による制裁以上に集団的な民事上の制裁を受けることであるはずで、適格消費者団体が「集団的被害回復訴訟」という新しい武器を手に入れたことで、これまで以上に、消費者と事業者との間で緊張したやり取りが繰り返される機会が増えることは容易に想像が付く。
今年のうちには、目に見えて大きな動きにはまだならないかもしれないが、ついこの前まで審議が行われていた消費者契約法の改正と並んで、“後々振り返れば、あの頃がターニングポイントだった”と言われそうな状況を今まさに歩いているように思えるだけに、今年の年末から来年にかけて、どういう振り返りがなされるのか、ということにも、今から注目しておきたいと思うところである。