誰も止められなかった深緑。

毎年、始まると何となく210キロ超走り終わるまでかじりついて見てしまうことが多かった箱根駅伝だったが、今年は幸先悪く往路の日に寝坊し、復路も途中から「優勝争い」という点では興味をなくさせるような展開だったこともあって、ここ数年の中では、一番醒めた感じで眺めていた*1

何と言っても、青山学院大学が強すぎたのだ。

往路こそ、1区で4位、2区でエース一色恭志選手を走らせても2位まで、と追いかける展開だったものの、3区で秋山雄飛選手が神奈川大学を交わして首位に立ってからは、ほぼ危なげない展開。

危うさを感じたところがあるとすれば、箱根初出場だった5区の貞永選手(区間8位)が後続の早大の猛追を受けていた場面と、エース格と見られていた7区の田村和希選手*2が、終盤脱水症状で大ブレーキを起こしたシーンくらいだが、それでも8区に引き継いだ時点で2位との差は1分21秒。

8区〜10区に1万メートル28分台の選手をずらっと並べる青学の選手層の厚さを考慮すれば、この時点で事実上勝負は決していた、と言えるだろう*3

終わってみれば、2位・東洋大に昨年以上のタイム差を付けて堂々の3連覇。そして大学駅伝3冠達成。
持ちタイムが速い選手を揃えても、それを結果に反映できなかった学校は過去にいくらでもあったから、選手層だけでなくチームマネジメントやコンディション調整も含めて称賛されるべきなのは間違いないが、今大会に関しては、他のチームがどんなに戦略を磨き上げても届かないくらい選手層の差が顕在化してしまった(それゆえに「勝負」の面では面白さを欠いた)、というところはあったように思う。

これで、名将の誉れ高い原晋監督の名がさらに轟くことは間違いないのだが、レース後のインタビュー等を聞いていて若干気になったのは、「あれ、この監督、もうすぐ辞めちゃうのかな?」という雰囲気が随所に漂っていたこと。

今年のメンバー*4を見れば、おそらく来年も十分優勝争いできるチームにはなるはずで、「4連覇」とか「2年連続大学駅伝3冠」といった偉業に挑戦できるチャンスがあることも考えると少なくとももう一年は監督を続けられるだろうが、その後、「4連覇」のメンバーを引き連れて実業団に打って出る、という可能性もあるような気がして・・・*5

今年のエースだった一色選手が、まだ実績のない「GMOアスリーツ」というチームに進路を定めた、というニュースと、原監督が既にそのチームの“アドバイザー”として名を連ねている、というところからしても(https://www.gmo.jp/news/article/?id=5221)、今後の動向が気になるところではある。

なお、今大会は昨年に比べると、2位以下の順位が比較的流動的で、順天堂、日体大といった名門校が終盤に追い上げて見せ場を作ったり、世紀の変わり目頃に一時代を築いた神奈川大、法政大といった学校がシード権を取り返したり、と、細かいドラマはいろいろあったのだが、個人的には、前評判の高かった1年生たちの不振*6を復路の上級生達が挽回してシード権を死守した東海大(10位)がピカイチだった。
鳴り物入りで登場した1年生トリオの一角が崩れて苦渋をなめた早大が、2年後に堂々の総合優勝を果たした例もあるわけで、現在行くところ敵なしの“深緑”を止める一番近い場所にいるのは、今回貴重な経験をしたスカイブルー軍団の1年生たちなのではないかな、と、自分は密かに思っている。

*1:それでも、いったんチャンネルを合わせると、そこから別のチャンネルに変える気にならない、というところに、TVコンテンツとしての駅伝の旨みがあるのだろうな、とつくづく思う。

*2:1万メートルの持ちタイムはチームの登録選手中最速。

*3:その意味で、今年のMVPは6区を区間2位で走り抜け、早大東洋大といった実力校の追い上げムードを一気にしぼませた小野田選手なのかもしれない。

*4:走ったメンバー10名のうち4年生は4名だけで、控えに回ったメンバーも含めて実績のある下級生がまだまだ揃っている。

*5:今は、大学側のちょっとした力の入れ具合で選手の進路動向も大きく変わってしまうし、かつては名将と絶賛された監督が、悪いサイクルに嵌って低迷するチームの立て直しに追われているような気の毒なケースもあるので、旬のうちに転身する、というのはある種の英断といえなくもない。

*6:往路では、1区で2位に付けた鬼塚選手を除き、区間2桁順位を並べる散々な出来であった。

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