齢50を超えたレジェンドが教えてくれたもの。

ここ1か月ほどのラグビーブームの中で忘れ去られてしまったイベントは結構多い。

年に一度のビッグイベントにもかかわらず、開催されていることすら認識されているのかどうかわからない「日本シリーズ」の悲劇的な扱いに比べれば、競馬なんてまだまだマシな方だと思っているのだが*1、こちらの方はどちらかと言えば天気に泣かされていて、ここ何週かは、台風で開催日が飛んだり、開催されてもあいにくの雨で馬場が渋ったり・・・。今日は平日の月曜日にもかかわらず、ひっそりと振り返られた前の3連休のレースが行われていた。

で、その音声をラジオで聞きながら思い出していたのが、前日の菊花賞

ラグビーさえなければ「令和初の菊花賞」として、もう少し注目を集めても良かったのかもしれないが、今年に関しては傑出したスターホースがいるわけでもないし、そもそも秋華賞と同様に、春先のクラシックタイトルを獲った馬は一頭も出ていない、という状況だったから、事前の盛り上がりが今一つだったのも仕方ないところはある。

そして、個人的には、「レース前よりもレース後に扱いが大きくなった」というところに、今年の菊花賞のレベルの高さが如実に現れているような気がして、ちょっと嬉しかったりもする。

今年、中央のG1タイトルに見放され続けている川田騎手ともども、最後の一冠に賭けていたはずの優等生ヴェロックス。

同じく三冠皆勤賞組のニシノデイジー、サトノルークス、タガノディアマンテ、メイショウテンゲン、といった馬が挽回を期す一方で、夏競馬から直行の上がり馬ヒシゲッコウやホウオウサーベルが虎視眈々と下克上を狙う。さらに、春を故障で棒に振ったディープインパクト産駒・ワールドプレミアや、無敗でトライアルを制覇した後にダービーを回避したザダル、といった”幻のダービー馬候補”たちも、最後の最後で舞台に立つ。

毎年同じようなドラマが展開されているレースとはいえ、今年は何となく例年以上に「役者」が揃っているように見えたのは自分だけだろうか。

さらに、蓋を開けてみたら、ワールドプレミアが、道中ヴェロックスをちょっと後ろの位置でマークし続ける、という非常に分かりやすい展開となり、結局、直線で大本命ヴェロックスを捕まえて先頭に躍り出たワールドプレミアが、猛追してきたサトノルークスをクビ差しのいで勝つ、というお手本のようなレースで優勝を勝ち取った。

そして、鞍上は、あの武豊騎手。「騎手がうまかった」という絶賛の嵐に、最年長勝利記録を更新するというおまけまで付けたことも、レースの印象をより濃くするものとなった。

レース後、武豊騎手の菊花賞勝利があのディープインパクト以来14年ぶりだった、ということを耳にして、そういえばキズナ菊花賞よりもフランスで父の敵を討つ方を優先したんだったな、とか、キタサンブラックは3歳時までは北村宏司騎手が乗っていたんだったな、とか、いろいろ記憶を紐解いたりもしたのだが、それ以前に、中央で4,000勝以上上げているレジェンドも、今や他のリーディング上位騎手との比較では決して騎乗馬に恵まれているとはいえない*2、という現実がある。

そんな中、馬の力も騎手の技量も最大限引き出される淀の芝3000mの舞台で「まさに武豊」という騎乗が示されたことが、これからの状況に多少なりとも影響を与えられれば、と思ってやまない。

何といっても、「ディープインパクトがこの世を去った年に、こういう形で歴史を作る」といった不思議な引き、運の良さも持っている騎手だけに・・・。

来週以降、例年同様、レベルの高い外国人騎手たちがGⅠの連勝記録を伸ばしていくのを脇目で見つつ、円熟さを増した騎乗で、彼らに一矢でも二矢でも報いてくれれば、というのが今の自分の率直な思いである。

*1:何だかんだ言って毎週やっているし、やっている人間にとってはある種の「日課」のようなものだから、別のイベントのせいで1、2週注目されなくても、コアなファンにとっては何の影響もない。

*2:武豊騎手のGⅠ制覇の記録自体、フェブラリーSキタサンブラックを除けば、2013年(キズナトーセンラー)まで遡らないといけない。

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