ようやく日本が取り返した栄冠。

浦和レッズが、ホームでサウジアラビアの古豪アル・ヒラルを撃破し、ACLチャンピオンズリーグ優勝という偉業を達成した。

日韓W杯の頃に今の大会名称になり、それまで強かった中東、韓国勢を押さえて浦和レッズが頂点に立ったのは2007年のこと。
その翌年もガンバ大阪が制した時は、Jリーグ発足15年、クラブレベルでも名実ともに日本がアジアの頂点に立てたかな・・・という思いが一瞬頭をよぎったものだった。

だが、各世代の代表チームが世界の「壁」にぶち当たったのと時を同じくして、ACLでも日本勢は迷い道に入りこむ。

翌2009年シーズンは、Jリーグ勢がトーナメントの早い時期に潰しあう、という不運もあって、名古屋のベスト4が最高成績。
さらに続く2010年シーズンは、決勝トーナメントに進む前に全クラブ敗退、という最悪の事態に陥った。

その後、2011年シーズンにセレッソ大阪がベスト8、2013年シーズンに柏レイソルが、2015年シーズンにガンバ大阪がベスト4といった具合に、隔年ごとにそこそこ健闘はするものの、最近では資金力豊富な中国のクラブが一気に地力を付けてきたこともあって、東地区のグループリーグを突破するのも一大事、といった状況になっており、昨2016年シーズンも、ガンバ大阪がグループリーグで1勝もできずに敗退、やっとのことでトーナメントに進出したFC東京浦和レッズも、初戦で早々と敗退・・・という事態となっていた。

欧州の名門クラブチームのように選手層が厚くないJクラブにしてみれば、国内のリーグ戦、カップ戦をこなしながら、興行的にはさほど期待できないACLにも注力せよ、というのが、なかなか厳しいミッションであることは分かるのだが、プロリーグができて既に20年以上経っている国のクラブがこんなレベルで低迷していてどうする、というフラストレーションは、コアな応援者たちの中には満ちていた。

それをようやく吹き飛ばしてくれた、日本勢9年ぶりの優勝、というニュース。

これまで長く東アジアを牽引してきた韓国のクラブが今大会では不振を極めていたこと、そして近年苦手にしている中国勢がトーナメントの一方の山に偏る、という組み合わせの運に恵まれたことなど、様々な巡りあわせがあっての話だとは思うが*1、昨年のクラブW杯にアントラーズが開催国枠で出場してアフリカ、南米のクラブを撃破し、決勝まで勝ち上がったことで、遅まきながらようやく光が差してきた、という見方もできるのかもしれない。

いずれにしても、ようやく世界のクラブと戦う正式なパスポートを手に入れた、ということで、大の“レッズ嫌い”の自分としても、今回の偉業だけは称えざるを得ないのだが、頂点を極めてもなお、日本国内のスポーツメディアの取り上げ方には、まだまだ冷淡なところがあるように思えるわけで・・・。

先日行われたプロ野球のアジアのローカル大会とACLを比べた時に、どちらに価値があるかなんて火を見るより明らかなのに、メディアの扱いも視聴者の関心も逆転しているようでは、クラブや選手がどんなに頑張っても、“二流国家”の域を出ることはできない。

ヨーロッパや南米はもちろん、中東でも東南アジアでもインドでも、ホテルでテレビをつければどこかのチャンネルでフットボールの試合が流れているし、新聞のスポーツ面を飾るのもまた然り。特にアジアでは日本を含めたあらゆる国のサッカーの話題に接することができる。それだけ国境を越えて浸透しているのがこのスポーツ。

だからこそ、今日、決勝戦に詰めかけた約58,000人の観衆と、地上波では見られないテレビ放送をそれでも食らいついて見ていた数少ない視聴者以外にも、全世界に通じる「サッカー」という共通言語の価値が伝わることを、自分は願ってやまないのである。

*1:そして、トーナメントに入ってからのレッズの勝ち上がりもまた「惨敗」と紙一重の危ういもので、準々決勝の第1戦を見た時は、フロンターレの方がベスト4にふさわしいチーム、とすら思った。

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