これは同期に捧げた花道だったのか。

第41回ジャパンカップ

ここ数年、「名ばかり国際レース」のようになってしまっていたこのレースだが、今年は外国産馬3頭が参戦*1
迎え撃つ国内勢の方は、昨年に比べるとちょっと寂しい顔ぶれにはなったが、三冠馬・コントレイルを筆頭に、今年のダービー馬、オークス馬が揃い、さらに「昔のダービー馬」2頭も元気に参戦した、ということで、一応最低限の形は整うことになった。

昨年のアーモンドアイと同じく、注目の的となったのは、「ラストレース」を掲げたコントレイルだったし、他馬との実績の違いもあってオッズは昨年以上に小さな数字となった(単勝1.6倍)。

一方で、昨年の菊花賞で「三冠」を手に入れて以降、3戦連続3着以内とはいえ「負けている」コントレイルには、アーモンドアイ以上に不安要素があったのも事実で、レース展開次第では”危険な人気馬”として飛ぶリスクも皆無ではなかった。

敗れた前走に続いて1枠。ゲートからすんなり出たものの、今一歩出足は付かず、早めに前に行ったアリストテレスオーソリティ、シャフリヤールといった馬たちがポジションを固めたのを見た時には、再び天皇賞(秋)のパターンになってしまうのか・・・という思いも頭をよぎった。

運の悪いことに、逃げたアリストテレスに騎乗していたのは、今秋もノリにノリまくっている横山武史騎手。

生来の”逃げ馬”ではないとはいえ、スタミナ十分で、菊花賞でも無敗の三冠馬に一泡吹かせかけた馬だけに、最初の1000㎡を「62秒2」という超スローペースで悠然と流している姿と、その時のコントレイルの位置取りを見た時には、波乱が起きる予感しかしなかった。

だが、そんな状況がたった一頭の馬の仕掛けでガラリと変わるのだから、競馬というものは面白く、そして恐ろしい。

そう、今年も、レースを作ったのはキセキ、ただ一頭だった。

かの馬の最後方からの渾身のまくりによって、12秒台で緩やかに刻まれていたラップは、1200㎡を過ぎたところで激変。

突き放して逃げるキセキが刻んだのは、11秒6-11秒6-11秒7-11秒6ー11秒5、というあたかもスプリント戦のようなラップ。そして、それに引っ張られた後続の馬たちのペースも必然的に上がり、4コーナーでは既に馬群もばらけ、コントレイルにとっては絶好の「花道」が開けた。

終始先行していたキセキ、アリストテレスワグネリアンといった馬たちが下がっていく中、踏みとどまったのは名手・ルメール騎手が操るオーソリティと、川田騎手騎乗のシャフリヤールの2頭だけで、それも、結果的にいい感じで脚を溜めることができたコントレイルの敵ではもはやない。

上がり33秒7。別次元で差し切って2馬身差の完勝。

かくしてGⅠ5勝目。新馬戦以外はすべて重賞、それも内8戦はGⅠというハイレベルな戦いを続けながら、【8‐2‐1‐0】と、一度たりとも馬券圏外に着順を落とすことなくラストレースを飾ることができたのである。

最後の最後に戻った往時のキレは、”有終の美”に賭けた矢作調教師の執念と、馬の力を信じて”いつものレース”に徹した福永騎手の情と技術、そして何よりも馬自身の底力から生まれたものであることは間違いない。

ただ、それも、キセキの”途中からペースメーカー”的な爆走がなければ、100%発揮できたかどうか。

キセキに騎乗していたのが、福永騎手と同期の和田竜二騎手だったことで、ゴールした瞬間、様々な想像が自分の頭の中をよぎった。

普通に考えれば、スタートで出遅れた騎乗馬を何とか勝負できる位置に戻すために仕掛けただけ、ということなのだろうし、まくりに入った時の和田騎手のポジションで、先頭にどの馬がいるか、とか、コントレイルがどこにいるか、なんてことまで把握できたかどうかはかなり怪しい。

自分の馬にベストな走りをさせようと策を講じた結果、たまたま本命馬を助ける結果になった、というのがおそらくは真実なのだろう。

それでも、2021年のジャパンカップ、王道を歩み始めてからは初めて、といっても良いくらいの大観衆の前で、無敗の三冠馬に恥をかかせない名アシストをした馬として、自分がキセキの走りを忘れることはないだろう。

そして3年前、敗れはしたものの、アーモンドアイに次ぐ驚異的なレコードタイムジャパンカップ2着、というリザルトを記録し、その後、昨年から2年連続で絶妙な”助演”役を果たしたこの馬が、今度こそ真の「主役」としてこの舞台を駆け抜けてくれる日が来るならば、どれほど嬉しいことか・・・

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

ということで、撤回された「引退」報道が、今年再び現実のものにならないことを願いつつ、今から一年後に向けて夢を託すことにしたい。

*1:一線級というにはちょっと物足りないメンバーだったとはいえ、まだコロナ禍も続く中、所有馬を遠い日本まで遠征させてくれた関係者には頭が下がる思いである。

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