Look Back Again

ここ数日、諸先輩方が、
bateau-ivre.doorblog.jp
とか、
dtk1970.hatenablog.com
といった記事を書いておられるので、自分も便乗?してのエントリー。
(タイトルはもちろんヤイコのヒットナンバーから(笑)。)


自分が会社の中で初めて「法務」という名の付く仕事にかかわったのは、
ちょうどミレニアム、世紀が変わるかどうか、という時代。

その意味で、20代の早いうちにきっかけを掴めたのは、
今思えばラッキーだったのだけど、大変なのはその後だった。

「法務をやってます」といっても、所詮は地方の小さな支店の一担当者。
大きな支店だと、取り扱う事件も大きいし、仕事の幅も広がるけど、
小さな支店に大きな事件が回ってくることはほとんどないし、
そもそも、一人何役もこなさないといけないような小所帯の中で、
法律周りのスキルを磨くことだけに時間を割くわけにもいかない。

それでも、いろいろと仕事をしているうちに、
指導役だった本社の先輩たちの格好良さに何となく憧れて、
自分もそこでやってみたい、と思ったものの、
ぞこに入れるのは、大勢いる同期の中でせいぜい1人か2人。
華々しい仕事とは無縁の小さな支店の担当者にとっては、
「高嶺の花」の世界だった。

予想通り、結果的には、別の同期に先に席を奪われ、
自分は事業部で細々と知財をやる人、になったのだけど、
そこから始まったのが、「法務部の一員になるための(孤独な)戦い」。

当時、法務部にいたメンバーに、
「あいつ、うちに呼んだら?」と言ってもらえるようになるために、
20代から30代初めにかけての時間をつぎ込んで、ありとあらゆることをやった。

知財担当だと、権利化周りの仕事だけをやっていても、
法務とは基本的に接点がない。

なので、それまで法務的観点からは、
誰も見ていなかった事業部内の契約を徹底的に掘り返し、
法務部経由で弁護士に相談に行くネタを探す、とか、
他部の契約でも、ちょっとでも知財に絡む条項が入っていたら、
打合せに混ぜてもらい、法務の主担当者の分の仕事もまとめてやって返す、とか、
はたまた権利行使のアクションを積極的に起こして、
法務部の訴訟担当の人間を巻き込むとか・・・。

今の「働き方改革万歳!」の時代だったら、
それこそ、「余計な仕事を増やすな」と怒られそうな振る舞いだったけど、
当時は大目に見てもらえたところはあった。

もちろん、単に仕事を増やした、というだけではなくて、
事業部の担当者が抱えてこじらせていた契約交渉に一緒に出て行って、
うまくまとめて帰ってくれば当然感謝もされるし*1
当時の法務サイドの人たちにも、「知財」というジャンルの面白さと難しさを、
山ほどある事例とともに教えてくれる担当者はユニークな存在だと思われたようで、
そのうちに法務部内の勉強会とか主催研修にも、
ゲスト講師で呼んでもらえるようになったりもした。

そんなことを何年か積み重ねて、
「法務と知財って地続きだね。」と多くの人が思ってくれるようになったとき、
初めて「法務」という仕事にかかわってから10年近く経って、
ようやく自分の道も開けたのである。


こうやって時系列で書くと、賢明な読者の方ならお気づきになるだろう。

このブログを始めた2005年は、
まだ自分が「法務部の一員になること」を夢見ることしかできず、
「法務」のセクションの外から、「法務」という仕事を眺めるしかない時代だった。

一緒に仕事をして自分をアピールしながらも、
わき目で打合せのテクニックとか、契約書修正のツボを盗み、
「法務」に向けられた仕事のやり方への不満を、
お茶を飲みながら、他の部門の人たちに混じって一緒に聞いた経験は、
その後、立場変わって自分が「法務」の人間として仕事をするようになってから、
ものすごく生きたのは間違いなく、その意味で今となっては、
あの雌伏の時間には、どれだけ感謝してもしきれないくらいの
重みがあったと思っている。

ただ、書き始めてからしばらくの間の尖り方を見ればわかる通り、
あの頃の自分には焦りもあったし、背伸びして「我こそ法務の本流だ」と、
自分に言い聞かせていたところもたぶんにあった。

当時は、それが日々ブログを書き続けるエネルギーになっていたのは間違いないし、
それを通じて得たものもたくさんあるので、結果的にはよかったのだと思うけど、
振り返ると、まぁまぁイタイ・・・。


あれから、ずいぶん月日が流れ、その間にちょっとした運にも恵まれ、
会社の中にいる限りは、背伸びなんてしなくても、好むと好まざると、
「法務の人」と周りから勝手に思われてしまうような立場になったところで、
再び振り出しに戻った、というのが、今の状況。

そして、本当は「ゼロ」なのに、
年を取った分、中途半端に余裕があるように構えてしまうところが、
いい方に出るか、悪い方に出るか、何とも言い難い今日この頃ではあるのだけど、

「自分の手じゃなきゃ 闇を拭えない」

というところだけは、今も昔も変わらない。

だからこそ、また15年くらい経ったころに振り返って、
未来の自分に、イタイ、と思われるのは覚悟のうえで、
しばらくは、振り返らずに進んでいくしかないよね、と思うのである。

LOOK BACK AGAIN/OVER THE DISTANCE

LOOK BACK AGAIN/OVER THE DISTANCE

*1:もちろん、うまく行かなかったことも山ほどあるのだけど・・・。

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