4年前の再来を・・・という思いむなしく、ラグビー日本代表のW杯は終わった。
何でもかんでも煽り立てるメディアの雑音を差し引けば、今大会の代表の前評判がそこまで高かったわけではない。
戦前のテストマッチでは連戦連敗。「本番」で放り込まれたグループにはずば抜けた強豪国こそいなかったものの、世界ランキングでも過去のW杯の実績でも日本を上回るチームが3チーム、と、エディ・ジョーンズ時代以前の日本代表*1なら、3連敗して早々にさようなら・・・でも不思議ではない組み合わせ。
だから、開幕してから約1か月、グループリーグの最終戦まで決勝トーナメント進出の可能性を残して日本のファンの目をギリギリまで惹きつけた、というところに、2011年以降、関係者が血のにじむような思いで積み重ねてきた日本ラグビーの底力を感じたのは確かだし、負けられなくなってからのサモア戦、アルゼンチン戦には、記憶に残るだけの熱量があったのも間違いない。
ただ、試合内容をよく見れば、初戦のチリ戦こそ最低限の結果を出したものの、イングランド戦は「トライ数ゼロ」で点差以上の実力差を見せつけられたし、サモア戦も終盤猛攻を食らっての辛勝。最後のアルゼンチン戦は、個々人の実力差と勝負どころでの集中力の差を如実に見せられる形での負けで、「地元」の声援が無かったことを差し引いても4年前からちょっと後退したかな、という印象をどうしても持たざるを得なかった。
特に、前回大会で敵陣を切り裂いた、松島幸太朗&福岡堅樹選手のような突出した「個」はなかなか現れず*2、常に存在感を発揮する堀江選手やマイケル・リーチ選手は今や大ベテランの域。
大会途中からレギュラーSHに定着した斎藤直人選手やロックのワーナー・ディアンズ選手は微かな希望を抱かせてくれたが、全体としてみれば「世代交代」が進まなかった印象で、(それでも勝ち残れば全ては肯定されたはずなのだが)再び”冬”の時代が訪れる不安とも無縁ではいられない結末だったように思う。
で、こうなると、大事なのはこれから。
日本を沸かせた2015年からの4年間は、スーパーラグビー参戦や「地元開催」に向けたモチベーション上昇のおかげで代表クラスの選手たちのレベルは保てたものの、「国内リーグ」自体はまぁまぁグダグダ。
その反省も踏まえてか、2019年W杯後に満を持して登場したのがリーグOneだったはずなのだが、新型コロナ禍下でのスタートだったこともあり、「メジャースポーツ」のリーグと呼ぶには今ひとつ盛り上がりに欠けているような気がする。
そもそも、ラグビーを興行的に成功させるのは至難の業だな、というのは、遠く離れた国でのワールドカップを見ていても思うわけで、「予選リーグ」だけで丸々一か月以上も贅沢に時間を使ってしまうような国際的なスポーツ大会などそうあるものではない。
連日熱気を保ったまま試合が繰り返されるバスケやバレーとの比較ではもちろんのこと、サッカーと比べても明らかに試合感覚が空きすぎて「間延び」してしまう、というのが選手の消耗が激しすぎるこのスポーツの最大の弱点であり、「興行」の場面でもそれは痛いほどマイナスに効いてくる*3。
「見せる」だけがスポーツじゃない、リーグに世界中の一流選手が集まってきてそこで切磋琢磨することができれば代表選手の強化・育成策としては十分だ、という発想も当然あっていい。ただ、古き良き時代、伝統企業に根を張った「体育会」人脈が築き上げてきた「実業団スポーツ」の存続がいよいよ怪しくなってきている今の時代では、国内リーグが興行として成り立たないスポーツに選手を集め、リテンションすること自体が難しくなっている、という事実にも目を向けないわけにはいかないはずだ。
幸か不幸か、グループリーグで敗退し10月上旬で代表の活動が終わった、ということは、それだけ各選手が来るリーグへの準備を早く始められる、ということでもある。
そして、そこで各代表選手たちが、今回のW杯での悔しさと、より世界に近づきたい、という野心を国内のリーグで素直に表現したらどうなるか・・・。
できることなら4年後、隆盛誇る国内リーグから代表戦、という流れが自然に定着し、名実ともにこの国が「一流国」として世界に認知される存在になっていることを今は願うのみである。