その「老婆心」が贔屓の引き倒しにならないことを願って・・・。

連日同じようなネタになってしまって恐縮なのだが、本日当局からリリースされた資料の中に、これは・・・というものがあったので、ひとまず取り上げておく。

テーマはもちろん「定時株主総会」。そして、出元は、今それどころではない?(かもしれない)法務省ではなく、経済産業省である。

www.meti.go.jp

元々、「バーチャル総会」をはじめ、今年のかなり早い段階から総会運営等に関して踏み込んだ見解を示し、まさに「株主総会2020」を演出しているのがこの経産省なのだが、今回のリリースは、「株主」に向けた熱いお願いにあふれている。

何といっても、出だしからして、

「今般の定時株主総会の開催に当たっては、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、例年とは異なる状況の中での開催となるため、株主の皆様には、株主総会の招集通知の記載内容を例年以上によく御確認いただきますようお願いいたします。

という強いトーンになっているし、さらに進んで、

特に以下3点について、御理解いただくようお願いいたします。


1.株主総会が例年どおりの開催時期や方法で開催されないことがあること
2.PCやスマートフォン等含む事前の議決権行使を積極的に利用すること
3.御自身を含む来場株主の健康への影響が懸念されることから、株主総会への来場は原則お控えいただくこと
(強調赤字は筆者による)

という記述まで見てしまうと、もうすごいというか何というか・・・。

確かに、こういったスタンスは4月頃から経産省が入ったオフィシャルなリリースでは随所に出てきたものではあるし、昨日のエントリーでも取り上げたように、一部の会社では「非常時モード」全開で株主に「来るな!」という姿勢を前面に出している、というのも事実なのだが、日々開示されている招集通知を眺めていると、そこまでのトーンではない会社も結構ある。

そういった謙抑的な招集通知を出している会社の中には、もしかしたら担当者が深く考えずに去年の原稿を、あるいは3月総会あたりの文例を見て用意していたものをそのまま使ってしまったがゆえにそうなっている、というところも一つ、二つくらいはあるのかもしれないけど、ほとんどの会社は「そうはいっても年に一度の、株主様と対話できる大事な機会なんだから無体な対応はすべきでない」という経営陣や総会・IR担当者の熱い思いだったり、「来場株主を減らせるならそれにこしたことはないが、6月中~下旬頃の空気感を考えると、極端なことをやり過ぎるのもまたリスクが高い」という冷静な判断に基づいて、そのような記述をしたのだろうと思われる。

自分は、以前のエントリーでも触れたとおり*1、法定の決議機関であり、かつ、法令上も様々な制約が課されている「株主総会」という場を「対話」の場として位置付けるのは、あまりに中途半端で無理がある話だと思っているから*2、報告内容を書面で公開して、議決権行使の機会をしっかり設けさえすれば、会議自体は「無人」でも「バーチャル」でもよいではないか、と思っているのだが、そこは会社ごとにそれとは違う意見、違う感覚で動く、というのがあって良いし、そういう各社の「個性」こそが、何よりも尊重されるべきだと考えている。

だから、「株主」に向けて発信しているように見せつつ、返す刀で「平時」の総会運営を志向する会社までバッサリ切ろうとしているかのような、冒頭の「お願い」(良く言っても「老婆心」。悪く言えば・・・)には、ちょっとどころではない違和感を抱かざるを得ないのだが、これが今年のデフォルトだ!と言うのであれば、ここは引き下がらざるを得ないのだろう。

ただ、監査手続の過程で会計監査人から「慎重に検討を要する事案」の存在を指摘され、3月総会で事業報告&計算書類の内容報告ができなかった結果、この6月に「継続会」の開催を余儀なくされている会社まで、

「感染拡大防止を目的として、継続会当日の会場へのご来場は極力控えて頂きますよう、お願い申し上げます。」

というところを強調するのはちょっと違うのではないかなぁ・・・ということは指摘しておきたい*3

また、ここまでの各社の開示等を見ていると、この「コロナ禍」の中でも株主提案の増加傾向に変わりはないようで*4、そういった提案を受けている会社が冒頭の経産省のトーンに合わせるのもさすがに無理があると思うので、踏み込んだリリースを出してもらったのは良いが、それを踏まえて対応した結果、さらに紛争が泥沼化した、なんてことにならないよう、今は願うしかない。

なお、昨日一覧化した6月総会での「イレギュラー対応」だが、本日も続々と「開催方針」のリリースが出ており、おそらく来週以降もさらに増えることが想定されるため、以下で再度まとめた上で、随時更新していければ、と思っている*5

■延期(議決権行使基準日変更)での対応(48社)
・㈱東芝 7月以降 基準日5月15日(配当基準日変更なし)
・㈱スカパーJSATHD 7月30日 基準日5月31日(配当基準日変更なし)
・㈱ナンシン 7月以降 基準日5月31日(配当基準日も変更)
サンデンHD㈱ 7月以降 基準日6月12日*6
・㈱ジャパンディスプレイ 8月末 基準日6月30日 
・㈱サンリツ 8月27日 基準日5月31日(配当基準日も変更)*7
ブロードメディア㈱ 7月下旬 基準日5月31日(株主優待制度は基準日変更なし)
オリンパス㈱ 7月下旬 基準日5月31日(配当基準日も変更)
日本板硝子㈱ 7月以降 基準日6月4日 (配当基準日は変更なし)
・㈱音通 7月下旬 基準日5月25日(配当基準日変更なし)
・㈱レオパレス21 7月22日 基準日5月28日(無配)*8
・㈱三城HD 7月下旬 基準日5月31日(配当基準日変更なし)
・㈱昭和HD 7月 基準日5月31日 (配当基準日への言及はなし)
・㈱リプロセル ※ 7月1日以降に延期の方針のみ発表
・㈱プレステージ・インターナショナル 7月30日 基準日6月10日(配当基準日変更なし)*9
・㈱フォーバルテレコム 未定 基準日5月31日 (配当基準日変更なし)*10
・㈱フォーバル 未定 基準日5月31日 (配当基準日変更なし)*11
凸版印刷㈱ 7月21日 基準日5月31日 (配当基準日変更なし) 
日本電波工業㈱ 未定 基準日5月31日 本社事務所会議室で開催予定(配当基準日変更なし)
・㈱日立製作所 7月下旬以降 基準日5月28日(配当基準日変更なし)
日立建機㈱ 7月以降 基準日5月31日(配当基準日変更なし)
東洋エンジニアリング㈱ 未定 基準日5月31日(無配)
・㈱アールスティ 7月以降 基準日5月31日(無配)
・相模ゴム工業㈱ 7月以降 基準日5月31日(配当基準日変更なし) 
玉井商船㈱ 7月29日 基準日5月31日(無配)
クオールHD㈱ 7月21日 基準日5月31日(配当基準日変更なし)
・㈱ケーヒン 7月以降 基準日6月12日(無配)
岩崎通信機㈱ 7月下旬 基準日5月31日(無配)
・チムニー㈱ 7月下旬 基準日6月8日(無配)
北日本紡績㈱ 7月30日 基準日6月5日*12
・燦キャピタルマーケット㈱ 7月下旬 基準日6月5日(無配予定)
・㈱やまや 7月下旬 基準日6月15日(配当基準日変更なし)
・㈱ショーワ 7月以降 基準日6月8日(配当基準日変更なし)
・㈱電業社機械製作所 7月下旬 基準日6月15日(配当基準日変更なし)
ワイエスフード㈱ 8月中旬 基準日6月30日(配当基準日への言及はなし)
・㈱フレンドリー 7月31日 基準日6月19日(配当基準日への言及はなし)
<20年5月25日開示>
・㈱フジクラ 未定 基準日6月30日(無配)
アジア開発キャピタル㈱ 7月以降 基準日未定(無配)
<20年5月26日開示>
住友精密工業㈱ 未定 基準日6月30日(無配)
理研ビタミン㈱ 8月下旬 基準日6月30日(配当基準日変更なし)*13
<20年5月27日開示>
・㈱ヴィア・ホールディングス 7月下旬 基準日6月13日(無配)
<20年5月29日開示>
富士電機株 6月下旬→8月6日 基準日6月15日(配当基準日変更なし)
曙ブレーキ工業㈱ 6月→7月30日 基準日6月19日(無配/A種種類株式の配当基準日は6月19日に変更)
・東京ボード工業㈱ 6月下旬→7月下旬 基準日6月16日(無配)
・㈱サンリオ 6月下旬→8月下旬 基準日6月30日(配当基準日変更なし)
桂川電機㈱ 7月下旬 基準日6月15日(配当基準日変更なし)
NTN㈱ 7月以降 基準日6月15日(無配)
・ユー・エム・シー・エレクトロニクス㈱ 6月→8月7日 基準日6月16日(無配)

■継続会での対応(28社)
・NKKスイッチズ㈱ 6月26日→継続会予定 ※6月総会初の継続会リリース
アネスト岩田㈱ 6月25日→継続会予定→継続会開催とりやめ*14
・㈱パイオラックス 6月24日→継続会予定
日本農薬㈱ 6月26日→継続会予定*15
芦森工業㈱ 6月19日→継続会予定
・㈱ADEKA 6月29日→継続会予定
・㈱ナカノフドー建設 6月26日→継続会予定
・国際計測器㈱ 6月29日→継続会予定 7月下旬
・㈱三栄コーポレーション 6月26日→継続会予定
・中央ビルト工業㈱ 6月19日→継続会予定
・㈱フェローテックHD 6月26日→継続会予定(7月31日) 
・Fringe81㈱ 7月22日 基準日6月10日
・ユニプレス㈱ 7月下旬 基準日6月11日
鴻池運輸㈱ 7月下旬以降 基準日6月18日(配当基準日変更なし)
・㈱リケン 6月26日→継続会予定
・㈱アイフリークモバイル 6月25日→継続会予定(無配の方針に言及)
大和自動車交通㈱ 6月26日→継続会予定
・㈱ミクニ 6月26日→継続会予定
大同工業㈱ 6月26日→継続会予定
・新田ゼラチン㈱ 6月25日→継続会予定
リズム時計工業㈱ 6月19日→継続会予定
リーダー電子㈱ 6月26日→継続会予定(7月31日)*16
<20年5月25日開示>
尾張精機㈱ 6月25日→継続会予定
<20年5月26日開示>
・岡谷電機産業㈱ 6月30日→継続会予定
・大成温調㈱ 6月29日→継続会予定 
<20年5月27日開示>
・㈱巴川製作所 6月25日→継続会予定
・水道機工㈱ 6月26日→継続会予定
・寺崎電気産業㈱ 6月29日→継続会予定
<20年5月29日開示>
戸田建設㈱ 6月25日→継続会予定

■定時+臨時の2回開催による対応(2社)
・㈱ダイセル 6月19日 → 臨時株主総会で報告予定
・オンキョー㈱ 6月25日 → 臨時株主総会で報告予定

■当初基準日から3か月以内での日時変更による対応(4社)
・㈱ぱど 6月18日→6月30日に延期を発表
高砂熱学工業㈱ 6月23日→6月29日に延期を発表
<20年5月26日開示>
・㈱ディスコ 6月23日→6月26日に延期を発表
<20年5月27日開示>
・プレミアグループ㈱ 6月25日→6月29日に延期を発表

*1:災い転じて福となるか? ~厳戒体制下の「株主総会2020」が気付かせてくれたもの。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~

*2:会社側の視点で見れば、会社の経営、将来展望に強い関心を持つ人から、お土産目当ての人まで有象無象、しかも「会議」という形でコミュニケーションを図るにはあまりに多すぎる参加者を前に、いったいどうやったら「対話」になるんじゃい、という素朴な問題意識があるし、株主の視点からも、どういう議事運営をされても最後は消化不良になってしまう今の総会の場だけで「対話しました」と開き直られては困る、という話が絶対出てくるので、総会は儀式として淡々と進め、別の機会を設ける方向に持っていく、というのが正しい在り方だと自分は思っている。

*3:当該会社のリリースはこちら(https://ssl4.eir-parts.net/doc/3906/tdnet/1836330/00.pdf)。今後のリリースや有価証券報告書の中に、どこまで詳細が書き込まれるかにもよるが、ここまでの事態となっている以上、きちんと会場で説明を聞いて質問をしたい、という株主はそれなりにいても不思議ではない。「新型コロナウイルス感染防止」を理由にするのなら、さらに先の日程で継続会を設定することだってできたはずで(6月にしたのは、当初総会から概ね3か月が限度、という従来の解釈を保守的に重視したためかもしれないが・・・)、この時期に継続会を設定しながら「控えて」というのはちょっとどうかな、と思わずにはいられなかった。

*4:昨年のLIXILグループの総会での「大逆転劇」等も影響したのか、役員選解任議案もいつになく多く見かける気がする。

*5:レイアウトの美しさや情報の正確性等に関しては、隠れ里@kakurezatさんがTwitterで日々公表されているものに遠く及ばないが、こちらは脚注等で「らしさ」を出せればと・・・。

*6:当初は日程、基準日とも未定。20年5月27日の開示で、基準日を6月12日とすることが公表された。

*7:20年5月29日付開示で決算発表日を7月15日とし、総会開催日時を8月27日とすることを公表したが、この日程は変更後の基準日からもギリギリ3か月、ということで、配当議案も付議する会社であることを考えると、かなり勇気のある選択だな、と個人的には思うところ。

*8:20年5月28日に、決算発表の日程(6/5)と総会開催日時、及び無配の見通しを公表した。

*9:20年5月28日に総会開催日時を公表した。

*10:20年5月29日に決算発表を6月9日に行う旨を開示。

*11:20年5月29日に決算発表を6月9日に行う旨を開示。

*12:5月26日の開示で、延期後の総会開催日時がリリースされている。

*13:現時点(5月26日時点)でスケジュールが示されている会社の中では一番遅い日程となっている。

*14:かなり早い段階で継続会開催方針を開示していたが、20年5月27日の開示で、決算発表が6月10日に可能となり継続会は行わない方針である旨を公表した。

*15:監査等委員会設置会社移行に伴う定款一部変更議案の付議を予定。当初は継続会終結の時をもって効力発生としていたが、2020年5月25日付のリリースで「本総会の休会の時(2020年6月26日の審議終了時)をもって」移行する旨が公表された。日本農薬[4997]:(効力発生日の変更)定款一部変更に関するお知らせ 2020年5月25日(適時開示) :日経会社情報DIGITAL:日本経済新聞

*16:こちらの会社は、継続会方針決定のリリースと同時に決算短信も公表しているため、当初総会の時期を考慮しても、もしかしたら間に合う?という気がしなくもないがさてどうなるか。

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