1000の壁を超え、我らはどこに行くのだろう?

じわじわと増えてきた新型コロナウイルス感染判明者数/日は、7月29日、遂に1000人の大台を超え、さらに週末にかけて1300~1500人くらいの大きな数字をコンスタントに出し続けている。

これまで一人も感染判明者を出していなかった岩手県内でも、とうとう感染事例報告が出てしまったし、地域によっては少し数字が落ち着く日曜日になっても、まだびっくりするような大きな数字が出てきていたりもする。

数字が増加する一途だった連休前のことを考えれば、先週が始まった時点では、既にこの国の誰もが「時間の問題だな・・・」と覚悟を決めていただろうとは思うのだが、いざ”4ケタ”の数字を突き付けられると、必要以上の閉じ込め圧力にも我慢した春先の苦労は何だったのだろう?という徒労感に襲われるし、ここ数日の「凪」の後に出てくるのがどんな数字なのか、ということを考えると、正直げんなりするのは確か。

遠くから見ていると、もはや中央政府は腹を括って「どれだけ感染者の数が増えようが、世の中を動かすことが最優先」というポリシーを貫く構えのように見えるし*1、各自治体も一部の自治体を除けば、3月、4月とはうって変わって政府筋の顔色を窺いつつ、世界中で起きている「第2波」を手をこまぬいて眺めているようにすら見えてしまう。

だが、以前にもこのブログで書いた通り、まだまだ感染者が増え続けている、というアブノーマルな状況において、「Withコロナ」だとか「新ノーマル」だとかといった言葉で”平時”を装うのは、どう考えても無理だ*2

感染者数の増加に抗するかのように、観客を入れて試合を催行し始めたプロスポーツの世界でも、「発熱している選手がいるのに試合やるのかどうか」で紛糾し、感染者判明で直前で試合を中止し、と、なかなか落ち着く気配がない。

それでも一晩、一興行で多くのお金が動くプロ野球Jリーグの世界なら、毎試合ハラハラし、させられても”続行”の余地をとことん追求する方が理にかなっている、と言えるのかもしれないが、これが巷の零細飲食店、零細旅行代理店といったところになってくると、あれこれコストかけて対策を施しても何か起きれば営業を止められる、ツアー客を集めても土壇場でキャンセルになる、という変化についていくのは相当苦しいはず。

少なくとも5月くらいまではうまくいっていたはずの「対策」をやめて無理やり「平時」に戻そうとしている背景に、苦境に立たされた中小事業者を救済する、というお題目があることは重々承知しているし、6月から7月半ばくらいまでのつかの間の回復過程が、”干天の慈雨”として機能した一面があることは否定しないが、今のような状況になってくると、中途半端な「両立」政策がかえって事業者の傷を深くするリスクにも思いを馳せなければならないだろう。

どんなに凶悪な感染症でも、対策を徹底すればいつかは収まる。だから、それまではリスクのある営業形態を止めコストを徹底的に押さえる、必要に応じて支援給付でつなぐ、場合によってはいったん撤退して次の参入に備える、という形だってあり得る。知恵を絞れば「平時モード」を押し通そうとしなくてもできることはいくらでもあったはずなのに、中途半端に『経済を回そう』とした結果、かえって事業者の体力を奪い、回復を遅らせているのだとしたら、何とも残念な話だというほかない。

幸か不幸か、こと、この新型コロナウイルス対策に関しては、未だに世界中のどこを見回しても、「対策が決定的に成功した」と言えるような国はほとんど見当たらない。

今の時点では、欧州の一部の国や台湾、ニュージーランドあたりが高い評価を受けているようだが、ちょっとした隙間から力強く勢力範囲を広げてくるのが今蔓延しているウイルスだから、現時点での静けさをもって、1か月後もまだ成功しているといえるかは誰にも分からない、というのが正直なところでもある。

ただ、だからといって、この国において、抜本的な対策を講じないまま感染判明者の数を増やし続けるのが賢い対策だとは思えないし、「第2波」が始まった当初、「平時モードを続ける」ことを正当化していた様々な理屈(集中的に検査しているから人数が増えるだけ、とか、若い世代や無症状者がほとんどだから感染しても深刻な事態にはつながらない、とか、そもそも「コロナはただの風邪」といった類の話とか・・・)は、一部ではすでに破たんしかかっているし、たぶんあと1~2週間もしないうちに、誰も「そんなこと言えない」って状況になってしまうような気がするので、中央政府が「緊急事態宣言」を出そうが出すまいが、生き延びないといけない理由がある者は、もう一度腹を括り直し、リスク回避のためのシェルターを自ら作る気構えで臨まないといけない、と思っているところである。

なお、先週から4-6月期の決算発表が本格的に始まっているのだが、新聞では相変わらず、大幅な減収、巨額の赤字転落の憂き目を見た会社のニュースが大きく取り上げられている一方で、増収増益(純利益ベース)の決算を出している会社も、自分がざっと眺めた限りで150社を超えるくらいはあった。

スーパー・ドラッグストア・100円ショップ、といった分かりやすい業種はもちろんのこと、家庭用食品に電子コミック・ゲーム、個人向けに配送サービスを提供する運送業、さらには証券会社まで巣籠もり族をターゲットにした業種もおおむね好調*3

メーカーでも自動車や産業機械周りが壊滅的な打撃を受けている裏で、半導体電子材料系の会社の中には、かなりの好業績となっていたところも多かった。

そして、「DX」を旗印に掲げた業務支援サービス提供系の会社の中にも、伸びているところはかなりある。

こういう時に苦しんでいる業界に目を向けることは確かに大事なことではあるが、世の中の序列をすべてこれまでどおりにキープすることを政策目的にすべきではないし、ましてや、特定業界を救済しようとした結果、健全に成長を続けていた業界まで止めてしまったら、何のための政策発動か分からない

ここ数か月の試行錯誤の中で、今の状況下では、(大集団ではなく)「個」にフォーカスした商品・サービスや、「個」にアプローチするためのサービスがいかに効果的か、ということを既に多くの人が学んでいるはずだし、成功事例も多々出ているわけだから、今波に乗れていない会社も、従来型のマーケットへの執着を捨て、柔軟に自社商品、サービスのモードチェンジをしていくのが最善手、それができなければ嵐が過ぎるまで穴熊作戦で守り抜く、といった手を打っていくしかないしかないだろう。

一日でも早くこの事態を終わらせたい、というのはすべての人々に共通する願いで、だからこそメリハリをつけ、時に結果的に残酷なジャッジになったとしても、筋の通った政策を貫き通してほしい、というのが今の自分のささやかな願いなのである。

以上、今週、少しでも明るい話が聞けることを願いつつ・・・。

*1:とはいえ、ちょっと世論の風が吹くとあっちへこっちへと流れていく”軽さ”も依然として残っていて、それが様々な政策のブレにもつながってしまっているのが現状ではあるが。

*2:本当の「ノーマル」を取り戻せる日は来るか? - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~参照

*3:証券会社などは会社によってプラス、マイナスがくっきり分かれているだけに、必ずしも恩恵を受けた業種、とは言い切れない面もあるのだが・・・。

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