3たびの快勝がもたらした混沌。

これまでの3場開催が東京、阪神の2場開催に変わった途端に3連休をフル活用した3日連続開催。

折しも新型コロナが再び警戒域に突入するのを見計らったように、競馬ファンたちの「Stay Home!」を後押しするJRAの巧みな番組編成にはもはや脱帽するほかない。

もちろん自分も例外ではなく、次から次へとレースが始まる先週までの慌ただしい時間の流れを抜け出し、ちょっとしたレース間の間合いを楽しみつつも、結局、土日の昼時間帯は家を出ず、溜まった仕事がてらIPATの画面でクリックを繰り返すことになった。

で、そんなもったいない連休の使い方が報われたなぁ、と思ったのが日曜日、阪神メインのマイルチャンピオンシップ

今年の秋のGⅠは、1番人気の実績馬が、まさに”千両役者”とばかりに強いレースをして勝つ、というパターンがずっと続いているのだが、今週のグランアレグリアも全く例外ではなかった。

内枠からルメール騎手の手綱に応えて難なく先行、さほど早くもないペースで好位置につけて直線に向かえば、後はまっすぐ走るだけで良い、というのがこの馬の一流たるゆえんである。

個人的には、対抗と目されたサリオスが、明らかに苦しい位置取りで最速の上がりながらスカーレットカラーすら捉えきれない5着に敗れた一方で*1安田記念の時点で明確に勝負あった、と思われていたインディチャンプやアドマイヤマーズがゴール前で思いのほか抵抗を見せ、タイム差にして0.1秒ずつの差で食い下がった、というのはかなりの誤算だったのだが、それでもレースぶりとしては、まだまだ余裕の完勝。

今年のGⅠで3勝目を挙げ、秋GⅠ初戦のスプリンターズSで自ら作った流れを翌週の(世紀の対決が予想される)ジャパンカップまで持ち越す、という粋な演出までしてのけた。

そして、このレースを彼女が制したことで、既に指摘していた古馬GⅠでの「牝馬席捲」はますます加速。

フェブラリーステークス モズアスコット 牡6
高松宮記念 モズスーパーフレア 牝5
大阪杯 ラッキーライラック 牝5
天皇賞(春) フィエールマン 牡5
ヴィクトリアマイル アーモンドアイ 牝5
安田記念 グランアレグリア 牝4
宝塚記念  クロノジェネシス 牝4
スプリンターズステークス グランアレグリア 牝4
天皇賞(秋)  アーモンドアイ 牝5
エリザベス女王杯 ラッキーライラック 牝5
マイルCS グランアレグリア 牝4

ヴィクトリアマイル以降、牡馬混合の5戦を含む7戦連続で、古馬GⅠを牝馬が勝ち続ける、という、日本競馬史上も極めて稀な状況となっている。

惜しむらくは、グランアレグリアの今回の勝利が、今年のGⅠ「3勝目」ということで、もし彼女が、モズスーパーフレアにハナ差届かなかった*2高松宮記念でも勝利を挙げていれば、今日の勝利で年度代表馬の有力候補に浮上したはずだった。

たとえ国内GⅠ3勝でも、過去には2013年、スプリントGⅠ2戦と安田記念を制したロードカナロアが、得票でオルフェーヴルを上回って年度代表馬に選出されたという歴史があるし、2015年のモーリスに至っては国内GⅠ2勝だけで年度代表馬に選出されているから、まだまだ可能性が消えたわけではないのだが、ロードカナロアにしてもモーリスにしても、国内のGⅠ勝利に加えて香港のGⅠを制していたことのインパクトが大きかったのは確かだし、同じ年の3歳陣や古馬中長距離陣のGⅠホルダーが分散していた、という事情もあった。

これに対し、今年は3歳に三冠馬が2頭。さらに、古馬でもアーモンドアイとラッキーライラックがそれぞれ2勝を挙げており、それぞれ次のジャパンカップ有馬記念で3勝目のチャンスあり、という状況にあるから、「GⅠ3勝」では頭一つ抜けている、といえる状況ではない。

ということで、「今年一番の馬はどれだ?」ということを議論するだけで、小一時間優に潰せるような気はするのだけど、面白くなるとしたら、来週のジャパンカップでアーモンドアイが3歳陣を蹴散らして勝ち、さらに有馬記念でラッキーライラックが勝つ、という事態になった時だろうか。

歴代芝GⅠ最多勝記録を更新した上に、天皇賞ジャパンカップの両方を取ったとなれば、普通ならアーモンドアイに文句なしで年度代表馬の称号をプレゼントしたいところだが、グランアレグリアと直接対決した安田記念での派手な負けっぷりは、決して印象の良いものではない。

そうなると、混迷の末に、有馬記念を勝ったラッキーライラックが、大逆転でタイトルをもぎ取る、という可能性も皆無ではないような気はするのだが・・・。

過去には、”どんぐりの背比べ”でなかなか一頭に絞り切れなかった時代もあったことを考えると、強い馬がたくさんいすぎて決められない、というのは、何とも素晴らしいことだと思う。

そして、泣いても笑ってもあと5週。

世の中の景色は再び激変しつつあるが、競馬場の光景だけは変わらずに、最後まできちんと一年のフィナーレを迎えてくれることを、今はひたすら祈るのみである。

*1:鞍上がM・デムーロ騎手になっていた、ということで、当然ながら批判は騎手に向けられるわけだが、8枠の3頭が揃って後方待機、良い脚を使ったが届かず、というレースをしていることを考えると、騎手の力量というよりは「枠の運」といった方が良いような気もする。

*2:といっても、本当は1着入線したのはクリノガウディ―だったから(結果は4着降着)、「僅差で負けた」という印象は思いのほか残っていなかったりはするのだが・・・。

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