誰が名付けたか、8文字の馬名、グランアレグリア。
最初に耳にしたときから、随分華やかな名前だな、と思ったものだが、デビュー以来、その名に恥じぬ走りをずっと続けているのだから大したものだ。
2000mの距離に果敢に挑んだ前走・大阪杯では、年下のレイパパレに苦杯をなめたものの、一世代上のアーモンドアイがターフを去った今、マイル以下の距離に戻れば目下国内には敵なし。
今日のヴィクトリアマイルも、いいペースで先行して世代交代&下剋上を狙ったレシステンシアと、それを目標にゴール前で激しい競り合いを演じた有象無象の牝馬たちを軽くあしらうかのように、コースの外側でルメール騎手が追い出した瞬間に勝負は決まった。
上がり3ハロン、32秒6。
勝ちタイムは1分31秒0だから、ここ2年の「1分30秒台」の数字には見劣りするが、後続に付けた差は4馬身。
奇しくも昨年のアーモンドアイの”復帰戦”の圧勝劇と並ぶことになったし、”一頭だけ雲の上”の勝ちっぷりも昨年の覇者のそれと同じ。そして鞍上はクリストフ・ルメール。インタビューでの「まだまだ勝てます」的な受け答えも、何となく去年のそれと似ていた。
前の年に「9冠」を取った超歴史的名牝が輩出された後だけに、どうしても数字には鈍感になってしまうのだが、グランアレグリアもこれでGⅠ5勝目。もはや歴史的名牝の域に達していると言ってもよい、堂々たる実績である。
タイトルの数字に関して言えば、2歳の暮れに朝日杯じゃなくて阪神JFに出ていたら、とか*1、前走で大阪杯ではなく高松宮記念を使っていたら、とか、いろいろ”たられば”は出てくる。
ただ、まだ未完成だった2~3歳時に果敢に牡馬混合戦に挑んできた歴史*2や、あれだけのマイル、スプリント適性を持ちながら大阪杯に”寄り道”してファンに期待を抱かせるところが、また彼女らしさだったりもするわけで・・・。
観客は戻ったものの、平時には戻っていない東京競馬場で、今日、豪快な勝ちっぷりを見せた彼女に注がれたのは、どこからともなく湧いてきた「拍手」だった。
それはそれで、風情があって良いではないか、といつもなら思う。
だが、やっぱり、彼女のあの弾けるような走りに注がれるのは、馬名そのままの「大歓声」であってほしい。
この先、彼女がマイル、スプリント路線で順当に2つ、3つタイトルを上乗せしてくるのか、それとも再び、自らの真価を問うべく、長い距離でのタイトルに果敢に挑むのか(そしてそこで散るのか、さらなる輝きを放つのか)、どうなるか分からないところはあるのだけれど、そう遠くないときに訪れるであろう彼女の花道が、コロナ禍を乗り越えた先に生まれる歓喜の大歓声で包まれることを信じて、あと半年ちょっとの無事是、を祈りたい。