過ぎ行く年に感謝の思いを込めて。

2020年、という年がまもなく終わろうとしている。

世の中で起きた出来事だけ並べれば、世界では米国の政権交代を筆頭に、香港の一国二制度の(事実上の)廃止だったり、タイの王政反対デモだったり、(後忘れてたけどBrexitの離脱条件合意、も入れてよいかも・・・)、と歴史の転換点になりそうな出来事は多かったし、日本国内でも、ついこの前まで大臣だった現職国会議員が逮捕されたり、検事総長候補が賭けマージャンで飛んだり、最後は長期政権を担っていた総理が8年ぶりに交代したり・・・、と普通ならそれだけで一晩語れそうなニュースはあふれている。

純粋な法律関係のテーマに絞っても、1月の「被告人大逃亡」劇だけでお腹いっぱいになるようなところで、改正民法は施行され、それなりにインパクトのある個人情報保護法著作権法の改正も成立し、秋には非正規格差をめぐる最高裁判決が出され、そして一年を通じて世界中の競争当局、個人情報保護当局が暴れまくる、というエキサイティングな一年だったわけで、それを振り返るだけでも、いつもの年よりは十分盛り上がる話ができそうな気がする。

だが。。。

やっぱり、全てを振り返った時に

新型コロナウイルスに翻弄された一年」

という総括をされてしまうのが、この2020年、という年なのだろうし、それと平行して起きていた様々な出来事の存在感もすべてそのインパクトの前にかすんでしまうのだろうな・・・というのが、ちょっと寂しい気はして*1

純粋に個人的なことだけ言えば、仕事上もプライベートでも、自分自身が「新型コロナ」の影響を受けることはほとんどなかった。

もちろん、緊急事態宣言が出ていた頃は、気分転換と頭の整理にフル活用していた近場のカフェに行けなくなってげんなり、というようなことはあったし*2、春頃に予定していた複数の講演が延期になったり、というような話もあった*3

でも挙げてみればそれくらい*4

振り返ってみれば、自分のワークスタイル自体、元々「コロナ仕様」だったのかもしれない。

常駐のスタッフを置くわけでもなく、気の向くまま自分の場所で仕事をする。

依頼のほとんどはメールベース、もちろん細かい話は電話でやり取りすることもあるし、時には出向いて対面でやり取りすることもあるが、機会としてはそう多いわけではない*5

もろもろの効率性を突き詰めていけば当然そういうやり方に行きつくわけで、それを「ニューノーマル」というかどうかはともかく、それによってコミュニケーションが取れなくなる、とかパフォーマンスが落ちる、なんてことは微塵も感じたことはない。

そして、春頃にちらりと書いたことでもあるが、

会社を飛び出した時のドラスティックな変化に比べれば、「コロナ」がもたらした変化など、ないに等しい。

というのが率直な思いだったりもする。

当然ながら、去年の春、1年後に何が起きるかを予測していたわけでは全くないのだが、結果的に一足先の「予行演習」で仕事の「型」を構築できていたことは、ビジネスという観点からは非常に大きかったし*6、何より心理的に動揺せずに済んだ、という意味で大きかった。

さらに言えば、「コロナ」以前に所属する会社その他の組織の方針に振り回された、という声もあちこちで聞く中で、客観的な情報と信頼できる有識者の意見とこれまでの危機対応の経験と、最後は自分の直感、それだけで自分の日々の行動を自由に選択できた、ということも、この”普通でない状況”を乗り切るには非常に良い環境だったのではないかな、と思うわけで、こと今年の状況下においては、全てが良い方に作用した、といえるのかもしれない。


下世話な話は極力このブログではしないようにしているのだが、年に一度だけの呟き、ということで許していただくなら、今年は、入ってきたものも手元に残ったものも人生ベスト、という本当に出来すぎというほかない一年で*7、その一方で、組織の中に残った人たちの悲痛な叫びを聞くことも多かっただけに、単なる偶然とはいえ、運命の悪戯にはただただ感謝するほかないな、と思っている。


・・・ということで、いくら陽気に振り返ったところで「今年」はあと一日で終わり。

当たり前だけど、今年が良かったから来年も同じように、という再現性がないのがこの世界の常で、しかも、まだ新型コロナの拡大傾向が止まらない中、自分自身が罹患するリスクとか*8、トラブルに見舞われて大事な仕事を落とすリスクだとか、というものも織り込んでおかないといけない。

今の仕事のポートフォリオの中でどこに軸足を置くか、さらにチャンネルを増やすのか、それとも既存のパイプラインを太く厚くする方に重点を置くのか、そして、そろそろ限界に達しつつある活動の基盤を広げるとしても、物理的環境、人、あるいはそれ以外の何か、のどこに重点を置くか等々、考えないといけないことは山ほどある。

「目の前のことを全力で片づけることが大事」というのを言い訳に、そういう思考を全て後回しにしてしまってきたのだが、いざ年末年始で考えようか、という段になっても、どうしても違う方向に逃げてしまっているツケはどこかで回ってくるような気がする*9

ただ、この先どういう運命に翻弄されることになったとしても、この2020年という年に自分が仕事を通じて経験できたこと、学んだこと*10は決して失われることはないと思っているし、すぐに仕事に結びつくかどうかはともかく、法律、法務の枠を超えて知的好奇心を駆り立てるテーマに出会える機会も多かった*11のは間違いないので、来年も、一歩でも前に進めるように(三歩後退してもじわじわと四歩分は匍匐前進で進めるように・・・)、しぶとく生き延びていきたいと思っている。

そして、今年も一年間、Twitterでのコメントやはてなスター、さらにはメール等でダイレクトにありがたいメッセージやご指摘をいただいた読者の皆さまには、この場を借りて厚く御礼を申し上げる次第である*12

本当に、今年もありがとうございました。

*1:もちろん、株主総会の開催をめぐるあれこれ等、「新型コロナ」が法制度の在り方自体を動かす契機となった分野もあるので、そういうものに関しては、数十年後になっても「あの時、COVID-19ってやつが流行ってね・・・」という前説は常にくっついて回ることになるのだろうが。

*2:当時のエントリーにやたらカフェの話が出てくるのは、そのためである。そこにあるのは、「本当に必要なことをピンポイントで訴えかけられない切なさ」かもしれない。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~など参照。

*3:だが、結局、各所のご配慮によってそれらは夏以降全て実現したため、それによって何らかのダメージを受ける、ということもなかった。

*4:カフェに関しては、どちらかと言えば4月の健康増進法改正の影響の方が大きくて、それによって「第1波」後に、通う店やライフスタイルが変化したところもあった。

*5:不思議なことに、コロナ以前から対面でやり取りしていたクライアントとの関係では、コロナが始まってからもほとんどそのスタイルは変わらなかった。Web会議も多用はしたが、どちらかといえばそれは「電話」から置き換わったものが多かったな、というのが率直な感想である。

*6:春先の第一波の時は、裁判所が止まって仕事が・・・という叫びもあちこちで耳にしたが、自分の場合、メールベースでシンプルに相談できる気安さか、あるいは異常時対応の経験を前々から話題にしていたこともあってか、仕事のボリュームは明らかに増えた。

*7:同業者からは、諸々の補助金を活用した、という話もチラホラ聞こえてきたが、検討したところで要件を充たせるような月はひと月もなかった、という、まぁ凄い状況ではあった。

*8:そういいつつ、年末は昨年並みに「忘年会」を入れてしまったが、今のところクラスタに巻き込まれて発症、という事態は免れることができているようである。

*9:純粋に、年明け3日までに片付けないといけない仕事が山積みになっている、という事情もあるのだが、それにしても・・・である。

*10:その中には、これまでにないような新鮮なことも多かった。中にはもう二度と使わないだろうな、と思うようなイレギュラー対応のスキルなどもあるのだが、そういうものに限ってまたどこかで必要とされる時が来るのかもしれない・・・。

*11:特に逆境の中で会社をどうやって存続させていくか、経営資源の中で何を残し、何を切るか、という経営者の発想から学んだことは多かったかもしれない。

*12:歳をとるたびに過ぎていく1年1年のスピードは速くなるが、振り返った時の重みは増す、そんな気がしています。

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