先週とはうって変わって、今週は比較的天気が良い日が続き一気に夏のムードも増してきた。
本格的な夏の到来までには、もう一山、湿っぽい季節を超えないといけない、とはいえ、気分も仕事もヒートアップしていくそんな季節のはずなのに・・・。
ここ何週間か、特にGWが明けるくらいから、どのSNSを見ても、昨年以上に過激な言説が飛び交い、荒んだ空気が流れているような気がする。
一番のスケープゴートは間もなく開催される予定(だった、になるかもしれないが・・・)東京五輪。次に来るのは現政権と自治体の「コロナ対策」。
どちらも温かく見守ってもらえるには程遠い状況なのは間違いなくて、特に前者に関しては、本来ならポジティブな推進役を担うはずのIOCや組織委の周辺から飛び出した”自爆”と言っても不思議ではないようなコメントが報じられ、さらに「敵」を増やしていく、という悪循環。
ほとんどのメディアを敵に回してしまっている以上、平時なら善解されるようなコメントでも、こういう時にはすべからく悪意をもって解釈され、加工して報じられる。だからこそオフィシャルなコメントも、関係者のプライベートな呟きにも最大限の注意が払われて然るべきなのに、そこで首を傾げたくないような”空気を読まない”発言、挙動がネットニュースの見出しを飾り、世論をさらなるカオスに陥れていく・・・。
五輪の歴史を引き継ぎ、愛すべき東京に「開催できなかった都市」という未来永劫消えないスティグマが押されることを避けたければ、何よりも優先すべきは、
「7月~9月の間に何が何でも競技会を挙行すること」
であって、ダラダラと聖火リレーを続けたり、それに合わせてスポンサーの車列を走らせるたり、VIPの迎え入れのために特別の取り計いをしたり・・・なんてことはどうでも良い。ましてや、大人数の観客を入れてどうのこうの、なんて話自体が論外だ*1。
それなのに、物事の優先順位がまるで整理しきれていなくて、この期に及んで平時と同じオペレーションを維持することに色気があるように見えてしまうから、あちこちでハレーションが起きて「反五輪」の機運がより盛り上がってしまうことになる。
もし、今年の五輪が中止になったとしても、それを「新型コロナのせい」ということはできないな・・・というのが今の率直な思いである*2。
あともう一つ気になっているのが、「ワクチン」の話。
最近では朝から晩までこの話題に事欠くことはない、という状況で、確かにワクチンの接種が進むことで一定のポジティブな効果があることは否定しないのだけど、そこに寄せられたあまりに過剰すぎる期待と、その裏返しとしての、やれこっちに順番が回って来ない、だの、抜け駆けで打ちやがってけしからん、みたいなニュースに接するとため息しか出てこない。
挙句の果てには「打ち手が・・・!!」などと言って、日頃注射器を扱っていない薬剤師まで現場に駆り出そうとする発想は一体どこから出てくるのか。
こんなことは言わずもがなだと思っているけど、ワクチンは万能ではないし、打ったところで罹患する人は罹患する。
ついでに言えば、ワクチンそれ自体(それ以前の注射時のミスに起因する事故だってある)が引き起こすリスクだって当然存在する。
ワクチンの接種回数を競うのが米欧を中心に世界の潮流になってしまっている中、日本だけ乗り遅れるわけにはいかない、といういかにも日本的発想は分からなくもないが、全てはあくまで他の対策とセットでやってこそ生きる話で、手段を目的化してしまうことの愚にも思いは馳せられるべきだろう。
・・・ということで、何かを書こうにも表に出てくる右往左往のアホらしさとその裏にある問題の根源的な深刻さゆえに手が止まる、そんな感じでこの1か月過ごしているのだが、そうこうしているうちに、世の中はどんどん元通りになっている、という現実もあるわけで、昨年くらいまでは、打合せに呼ばれてお客さんのところにおそるおそる出かけていくと、あらびっくりロビーにも会議室にも人がいっぱいで、「こんな時に大変ですね」的な”時候の挨拶”をすることも多かったのが、最近では、ただ唯一、皆マスクをしていることを除けば、「新型コロナ」なんてものがあることすら忘れているんじゃなかろうか・・・という空気を感じることも稀ではなくなった*3。
もちろん、仕事からちょっと離れて街中の景色に目をやれば、居酒屋のシャッターは落ちたまま、カフェですら20時になると閉まる、という現実はある。
ただ、その辺を歩いている人の数は一向に減らず、電車に乗っても「空いてるなぁ・・・」と思えるような状況には程遠い。
のろのろと走るセーフティーカーの後ろで、エンジンを温める余裕もあった1年前の緊急事態宣言下とは異なり、連日フルスロットルでいろいろ捌いていかないと一日が終わらない、という日常はもうとっくに戻ってきている。
それが、連日、一年前を遥かに上回る感染者数と悲しい報が届けられ、未だに宣言解除の道筋も経っていない2021年春のもう一つの現実・・・。
もしかしたら、もうかれこれ1年近く続いているこの「世の中」と「身の周り」とのギャップが人々の心を荒ませているのかもしれないな、と思いつつ、今は心静かに、自分のやるべきことをやる。それしかないな、と改めて心に誓う今日この頃である。