20年ぶりの「マル外」勝利の凱歌と、頭をよぎった「たら、れば」。

気が付けばもう四半世紀を超えて今年が26回目になってしまったNHKマイルカップ

GⅠレースの中では、秋華賞とともに「第1回」から見続けている貴重なレース、ということもあって、このレースが回を重ねるたびに自分も歳をとったものだなぁ・・・と感じるのはいつものこと。

そして、長く見続けていることが勝負の巧さに直結するわけでもない、というのが、この世界のシビアなところでもあり、特にこのレースに関して言えば、未だに第1回のタイキフォーチュンの勝ちっぷりの鮮烈さが脳裏に焼き付いていたり、「マル外ダービー」と呼ばれていた時代の記憶が未だに冷凍保存されていることがかえって裏目に出ることが多く、たまに出走する外国産馬には騙されるし、内国産馬しか出ていないような年だとどこから勝負をかけたらよいのか分からなくなる・・・そんなことを毎年繰り返している。

近年での数少ない成功体験は、朝日杯FS組から指名したケイアイノーテックが豪快に差し切った3年前のレースだったりもするのだが*1、ダノンプレミアム以下、クラシックトライアルまでは「最強」と言われていたあの世代の朝日杯FS組とは異なり、今年の3歳世代の朝日杯組は、まさかのGⅢ戦(ファルコンS)でコケた、大将・グレナディアガーズを筆頭に今ひとつ安定感ないことこの上ない。

それでも皐月賞でステラヴェローチェ(朝日杯2着)が人気薄で3着に飛び込んだよなぁ・・・というのを思い出し、今回本命に指名したのが、浦河産のキズナ産駒、バスラットレオンだった。

今や押しも押されもせぬNo.1トレーナーになった矢作厩舎所属で、鞍上はケイアイノーテック以来のGⅠ勝利を狙う藤岡祐介騎手。

飛びぬけた逃げ馬がいないメンバー構成を考えると、先行してそのまま押し切れるこの馬の粘り強さは魅力的だったし*2、それでいてパドックでの気配もかなり良い、というレポートを聞けば、もう他の選択肢は考えられない・・・

満を持して当てに行った馬券の組み合わせを頭の中で反芻しながら発走を待ち、ゲートが開いたその瞬間までは、実に幸福な時間だった。

だが・・・

その次の瞬間、実況アナウンサーが伝えたのは「落馬」という悲報。

主役となるはずの先導役を失った残りの17頭は、押し出された逃げ切れない逃げ馬、ピクシーナイトを先頭に淡々と隊列を組んで進んでいき、最後の直線で”案の定”もたついたグレナディアガーズを横目に、前方に控えていたソングラインが鋭く抜け出す展開に。

そしてゴール手前、久々の牝馬V&池添騎手大金星か~ と思った瞬間、差してきたのがルメール騎手が操る「マル外」シュネルマイスター・・・。

結果、ハナ差の大逆転劇となり、クロフネ以来、実に20年ぶりの外国産馬優勝」という見出しがネットニュースに踊ることになった。

ドイツ産の「外国産馬」と言っても、生産者名の欄にあるのは「Northern Farm」で馬主もサンデーレーシング

先月発売の優駿80周年記念号には、吉川良氏が書かれた、

この馬の一口馬主*3の方が石和までわざわざ『紙の馬券』を買いに行った、というエピソード

なども載っていたりしたから、どちらかと言えば内国産馬的な雰囲気もある馬なのだが、血統表を埋め尽くすアルファベットを見ると、ああ「マル外」だなぁ・・・としみじみ思う*4

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なお、終わってみれば勝ちタイムは1分31秒6、ということで、第1回のタイキフォーチュンの衝撃の勝ちタイムから1秒も早く、その後飛び出したダノンシャンティの脅威のレースレコードと比べても0.2秒しか変わらない。

そんなデータに加え、馬場も良く、芝コースの短距離戦で綺麗な差しが決まることが多かったこの日の東京競馬場の展開を思い返すなら、仮にバスラットレオンが絶好調の勢いそのままにレースを引っ張っていたとしても、上位2頭の差し馬を抑えきるのは難しかったかもしれない。

ただ、それだけハイスピードで、かつ、ゴール前でハナの差一つの攻防が繰り広げられたレースだけに、”あの馬がもしいたら”という想像は余計に膨らむわけで、仮に勝てなくても、より速いペースで引っ張って、レースレコードを更なる高みに引き上げていたのではないか、とか、いやいや、ゴール前で破格の二の脚を使って「最強のキズナ産駒」として名を残せたのではないか、等々、「禁句」とは分かっていても、いろいろと思いを馳せずにはいられなかった。

今は、最後の最後、同じキズナ産駒だったソングラインが「マル外」に勝利を譲ったことで、キズナ産駒初のGⅠウィナー」誕生の瞬間が持ち越されたことを不幸中の幸い、と思って*5、次の大一番が再び巡ってくることを願うばかりである。

*1:やはり強かった「朝日杯」組。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~参照。

*2:何といっても、デビューして間もない古川奈穂騎手の手綱で影も踏ませずに逃げ切ってしまった2勝目のレースのインパクトが自分には強く残っていた。

*3:といっても、サンデーレーシングの場合「40分の1」口だから、その辺のクラブとは一口の重みが違うわけだが・・・。

*4:実のところ「マル外」全盛期と言われた20世紀後半から21世紀初頭の時代は、ジャパンマネーが仔馬だけでなく「種牡馬」「繁殖牝馬」まで買いまくっていた時代だったから、「マル外でも血統表にはカタカナ混じり」という馬が結構多くて、これだけきれいな「マル外血統」を見るのは随分久しぶりな気がした。

*5:ソングラインもキズナ産駒であることに変わりはないが名門・ノーザンファーム産。やっぱりキズナ産駒初のGⅠウィナーは、日高、浦河出身の馬であってほしい、というのが個人的な思いなので・・・。

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