気が付けば、もう四半世紀経っていた。

先日、パ・リーグオリックスの優勝が25年ぶり、という話を聞いた時に、その数字と、自分の頭の中の時間的感覚が全く一致しなくて、思わず「えっ・・・」と絶句してしまった。

冷静に考えれば、当時まだ”働き盛り”だった強肩のキャッチャーが監督を務めているチームだし、まだブレイク直後だったイチロー選手も長い旅路を経て、数年前に引退しているわけだから、それくらいの時が過ぎていても全く不思議ではないのだが、世の中の多くの出来事と違って、ルールも仕組みも大きく変わっていないスポーツの世界の出来事は、時々記憶の時計を狂わせる・・・。

そして、今日の天皇賞・秋も、そんなレースだった。


月末でバタバタしていたこともあって、直前まで出走馬もまともに把握していなかったのだが、16頭のメンバーを見れば一目瞭然。

三冠馬・コントレイルに、今年最強牝馬との呼び声も高いグランアレグリア、さらにダービーから直行した皐月賞馬・エフフォーリア。

明らかな「三強」の構図である。

凱旋門賞組が不在だったり、毎日王冠の上位組が軒並みマイル路線に回ったこともあって、他の馬とは実力差も感じられ、16頭中半分の8頭は単勝3ケタ台のオッズ、という壮絶な”格差”が生じたレースでもあったのだが、上位の三頭の勝ち負けだけで、興味を惹くには十分だった、といえるだろう。

そんな中、自分が選んだのは、エフフォーリア

元々自分のクラブの馬だから、ということもあるが、やはりあの皐月賞での勝利と、ダービーの「負けてなお強し」というレースぶりは、春のクラシックが終わってからも繰り返し語られ続けていて、鞍上の横山武史騎手の今年の大ブレイクぶりと合わせて、自分の中では間違いなく今年を象徴する馬の一頭だから、どんなレースだろうが外せるわけがない。

3歳馬を天皇賞・秋に持ってくること自体はよくあることだし*1、ステップレースを何も使わずに直行、というローテに関しても、元々間隔をあけて使って結果を出してきた馬だから、そこはあまり気にしなくても良いだろうと思っていた。

それよりは、三冠を取って以降、何かと噛み合わないコントレイルの6か月以上も空いた間隔の方が気になったし、グランアレグリアには「距離の壁」という言葉がどうしても付きまとう。

だから、エフフォーリアを本命に、ルメール騎手が確実にまとめてきそうなグランアレグリアを相対的に上位に推して、「1枠」の波乱の可能性をにらみつつ・・・というのがこの日の投資戦略だった。

終わってみれば、コントレイルもグランアレグリアも前評判以上に強かったな、というのが正直なところで、特に決して良い位置取りではないポジションでの走りを強いられながら、最後はきっちり追い込んできたコントレイルには「さすが三冠馬」という感嘆の声を上げたくなったし、グランアレグリアにしても、ペースがスローだったとはいえ、東京コースで先行して、上位2頭以外には影を踏ませず押しきった、というのはやはり只者ではない。

だが、その上を行っていたのがエフフォーリアで、絶妙のポジション取りからきっちり抜け出して、名だたる後続の古馬たちを体一つ引き離したのだから、これはもう文句のつけようがない勝利だといえるだろう。

そして鞍上の横山武史騎手は、これで2週連続のGⅠ勝利。天皇賞に関しては、祖父・父に続いて3代連続で戴冠、というおまけまでついた。

以下のエントリーでも書いた通り、”ほんの数センチ”のエピソードの時も、「十分良い騎乗だった、この先益々楽しみだな」と思ったものだが、お手馬が”変則ローテ”を組んだことで、ダービーの借りを「秋二冠」で、しかも2週続けて福永祐一騎手(とルメール騎手)を2着、3着に従える、という展開は偶然にしてもあまりに出来すぎた話のような気がする。

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com


ちなみに、冒頭で書いた「記憶の時計」だが、自分は、以前、藤沢和雄調教師が3歳馬のバブルガムフェロー秋の天皇賞に挑んで見事に勝った時のことを鮮烈に覚えていて、その後もシンボリクリスエスとかも勝ったよね・・・と、ちょっと前ではあるけど、せいぜい10年くらい前のことのような感覚で考えていたから、「3歳馬が天皇賞に挑む」ということをそこまで深く考えずに済ませていたのだが、終わった後の解説で、

「3歳馬の天皇賞制覇は、19年ぶり。」

と聞いてあらびっくり・・・*2

さらに言えば、今でも生々しい記憶が残るバブルガムフェローの快挙は、まさにオリックスがリーグ連覇を達成した時期とぴったり重なる。

かつて二度の快挙を成し遂げた藤沢和雄調教師がまさに定年前最後のシーズンを迎えておられる時に、10年下の世代の鹿戸調教師が20年の時を超えてそれを再現した、というのも一つのドラマではあるのだが、そこまで重たい出来事だと分かっていたら、エフフォーリア決め打ちで素直に張れたかどうか。

大体いつも後悔の原因になることが多い”記憶の時計の乱れ”だが、今日だけはそれに助けられたなぁ・・・と思うのである。

*1:後述のとおり、ここで記憶の時計が大きく狂っていて、こんなふうに軽く考えてたことが、今年に関しては結果的に幸運につながった。

*2:冷静に考えれば、シンボリクリスエスは、今日の勝ち馬の「父の父」だから、それくらいの時が流れているのは当たり前の話なのだが、そこは時間感覚が完全に狂っていた。

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