好事魔多し。

今年はいよいよ松山弘平騎手の時代が本格的に到来するだろう、と書いたのは、たった一週間前のことである。

先週2日で11勝、という荒稼ぎを見せたこの若きジョッキーは、クラシック戦線で騎乗する馬たちとのコンビも整い、まさに”収穫の春”に向けてこれから邁進するはずだった。

ところが・・・

土曜日の日経賞、昨年、牡馬混合のGⅠでも堂々の戦績を残し、今年も古馬主役陣の一角を担うであろうカレンブーケドールに騎乗した松山騎手は、「3コーナーで斜行」というまさかの事態で、あえなく騎乗停止処分発動へ・・・。

レース自体、先行するウインマリリンを捉えきれず、2着に敗れるという悔しい結果に終わっていた中で、さらに輪をかけての制裁だから、これを「好事魔多し」と言わずして何と言おうか。

世界に目を移せば、土曜夜のドバイゴールデンシャヒーンで、最低人気を覆すぶっちぎりの優勝を飾りながら、騎乗馬(ゼンデン)がゴール直後に故障を発生して安楽死、自らも歓喜の頂点から地面にたたきつけられる、という気の毒すぎる展開となってしまった騎手もいるわけで、馬にはアクシデントなし、本人もたかだか開催4日間の騎乗停止というレベルならまぁ良いではないか、という話ではあるのだが、それでも、このジェットコースターのような展開にはちょっとザワザワさせられる。

この週末に関して言えば、躍進する新鋭騎手の陰でここまで存在感が薄かった川田騎手が、土曜日にシャフリヤールの驚異的なコースレコード毎日杯を制し、日曜日は高松宮記念でダノンスマッシュを操って堂々のGⅠ勝利、という芸当を成し遂げ、久々に爽快な気分になった*1

デビューしたばかりの新人騎手たちも、角田ジュニアが初勝利、小沢騎手が特別戦を制し、古川奈穂騎手に至っては2日続けての勝利で早くも藤田騎手を追い越す4勝目、と景気の良い話が続く。

松山騎手に加え、負傷した武豊騎手、ドバイ帰りの戸崎騎手、北村友一騎手といった面々まで不在となる春のGⅠシリーズ序盤戦も、おそらく、お手馬に恵まれていなかったベテラン騎手や、抜擢された若手騎手たちの活躍で、「不在」を感じさせない展開になっても不思議ではない。

ただ、個人的には、今のようなモヤモヤした時こそ、頭一つ抜けた”新・千両役者”が出てきてほしいな、と思うわけで、次の週末、騎乗停止前の固め打ち再び、と、サリオスの大逆転劇に期待して、松山騎手に声援を送りたいと思っている。

*1:改めて眺めると、今週ドバイで好走したレッドルゼルもラヴズオンリーユーも日本で送り出したのは川田騎手である。新型コロナ禍がなければ、現地で騎乗していて日本を留守にしていたかもしれないタイミングで、2日連続重賞勝利、というのも何かのめぐり合わせなのだろう、と思う。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html