一夜明けても最大級の賛辞、そして思い出すのはあの夏の記憶。

「連続奪三振日本新記録」の速報を見て、慌ててYahoo!プレミアムの実況に飛んで行ったときには記録は既に途切れていた。でも、その後見続けたおかげで、もっと凄い歴史的瞬間を目にすることができた・・・それが4月10日の日曜日の昼下がりの出来事。

残念ながら、ちょうど休刊日にあたったために「翌日の朝刊1面」は幻に。

だが夕刊のスポーツ面では、大写しの写真とともに、彼の偉業を称える大見出しの記事が躍っていた。

プロ野球ロッテの佐々木朗希投手(20)が10日、千葉市ZOZOマリンスタジアムで行われたオリックス3回戦で史上16人目、16度目の完全試合を達成した。1994年5月18日に巨人の槙原寛己が広島戦でマークして以来28年ぶりで、20歳5カ月での達成は史上最年少。」(日本経済新聞2022年4月11日付夕刊・第9面、強調筆者、以下同じ。)

この後、さらに続けて「13者連続奪三振プロ野球新記録」、「27年ぶりの1試合最多奪三振タイ記録」、「パ・リーグでの完全試合は44年ぶり8度目」といったとてつもない記録も紹介されているが、この辺りはもう昨日から各メディアがずっと報じているから、もはや見飽きた感すらある。

ただ、その隣に書かれた篠山正幸記者の署名記事は、さすが日経スポーツ面、と言いたくなるような見事なものだった。

「投本間の距離が短くなったのか、ストライクゾーンのルールが変わったのか・・・。もちろんそんなことはないのだが、正常な野球の時空をゆがめるような投球だった。」
吉田正からは3打席連続三振を奪ったが、2つのボール球を除く10個のストライクのうち、バットに当てさせたのはファウル1つのみ。当代を代表するバットコントールの名手にしてこれだから、ほかの打者が簡単に当てられるわけがない。吉田正には4回、120キロ台のカーブを交えた。しかし、ほかの打者はほとんど直球とフォークの組み合わせだけ。これほどシンプルな配球で達成された完全試合はあっただろうか。」
「過去の完全試合における奪三振の最高記録は1968年、外木場義郎(広島)の16個。それを上回り『事故』の可能性を消した105球は2万2431人の観衆をひとまとめにして、異空間に連れ込んでしまった。」
「この先、どんな投手になるのか。(中略)という本人のコメントから想像するのは難しい。はっきりしているのは野球やスポーツの枠を超えたヒーローになりうること、この完全試合はその物語の序章にすぎない、ということだけだ。」(同上)

投球フォームだけ見ていれば決して力感のある投げ方ではないし、野茂英雄伊良部秀輝から松坂大輔まで、自分がかつて見てきたパ・リーグの剛球派投手たちの豪快さに比べると、いかにもスマートに淡々と投げ込んでいる印象を受けるのだが、それでいて球速表示はストレートで160キロ、フォークボールですら150キロ近い。

コントロールが良いのでバッターはいとも簡単に追い込まれ、そして球速以上に回転が効いているためか、ストライクゾーンに来ているボールでも強打者たちのバットはボールに全くかすりもしない。

テンポよく投げ続けた結果、あれだけの数、三振を奪いながらたったの105球で試合を終わらせてしまう、という魔法のようなピッチング。

「異空間に・・・」という篠山記者の表現は、スタジアムの観衆だけでなく、ネット回線経由で眺めていた視聴者にも見事に当てはまるものだった。

ローテーションに入り始めたばかりの時期のピッチングですらこれなのだから、この先もっと一軍のマウンドに慣れてきたらどのレベルにまで行くのだろう、ということは当然誰もが思うことで、「物語の序章」という表現は、まさに多くの視聴者が共有した感覚でもあったような気がする。

こうなると、思い返すはあの2019年夏の県予選決勝

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

まだまだ消化しきれていない関係者がいるかもしれない、ということは念頭に置きつつも、この先、佐々木朗希投手が様々な記録を塗り替えていけばいくほど、「あの夏」の監督の決断がクローズアップされて”神話化”されていくことは間違いないし、さらに、あの日夢と消えた「35年ぶりの快挙」がこういう形で次のステップにつながっていると思えば、あの日のチームメイトたちの涙も少しは報われるのではなかろうか。

この先、さらに衝撃を上書きするような華々しい活躍が続いて、シーズンの終わり頃には、「完全試合」すら彼にとっては懐かしいトピック、ということにでもなればもう言うことはないのだが、まず今は、この球界の宝・佐々木朗希選手が無事任務を全うすることを願って、ささやかに応援し続けることにしたい。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html