よく言われることだが、競馬の世界で英雄視されるパターンは2つ。
一つは、マルゼンスキーからディープインパクト、最近ではアーモンドアイに至るまで、圧倒的な強さで勝ち続けて伝説になるパターン。
もう一つは、強さを見せつつも、ケガによる頓挫あり、一敗地にまみれる屈辱あり、という「谷」を乗り越えて輝くパターン。
現在のように一流競走馬たちの実力が拮抗し、それぞれの得意分野でしのぎを削り合う時代には、どんなレースも「勝ち続ける」ことは決して容易なことではないから、多くの馬は後者のパターンにはまるかどうか、というところで見定められることになるのだが、無敗の三冠馬ですら一度負けたら評価ガタ落ち、という世知辛い時代に、こちらの枠に入り込むのも容易なことではない*1。
だが、この週末、ヴィクトリアマイルでのソダシの圧勝劇は、もしかしたらこのカテゴリーに新たな一頭が加わるかも・・・と思わせるのに十分すぎるほどの美しさだった。
今や言わずと知れた伝説の「白毛」馬。
元々白かった馬体は、馬齢を重ねるごとに他の一族の馬と比べてもより深みを増しており、既にただ走るだけで圧倒的な存在感を発揮できる馬ではある。
ただ、3歳の秋、二冠がかかった秋華賞で惨敗を喫し、続くチャンピオンズカップでも輪をかけて惨敗の憂き目を見た時に、少なくとも「競走馬」としての輝きが戻ることはもうないかも・・・と思った人は決して少なくなかったはずだ。
フェブラリーSでは下がった人気を跳ね返して3着に食い込み、ダート&マイル適性を一応示したが、それでも役回りとしては、カフェファラオの引き立て役に過ぎなかった。
それが、広い府中の直線で、先行馬をねじ伏せ後続を寄せ付けない、あんな豪快な勝ち方で復活を遂げるとは・・・。
一応、札幌記念を勝っている馬ではあるし、新馬、初重賞は芝1800mのコースで制した馬でもあるのだが、ここ数走を見る限り、距離に関してはマイルにこだわりを持って使った方が良いタイプではあると思う。
古馬の牡馬たちに混じって互角に戦えるかどうか、という点でも、まだまだ?マークが付くことは否めない。
だが、得意の距離で気持ちよく走らせればもっと凄い高みまで行けるかもしれない、という期待はこの日のレースだけで十分高まっただけに、陣営には、ここから再び、レース選択に徹底的にこだわって(時には冒険しながらも)、新たな伝説を作ってほしいな、と思った次第である。
飛びぬけたスターがいない、そんな時だからこそ・・・。