世代交代は一瞬。

どんな世界でも「主役が変わる」タイミングはある。そしてそれは一瞬の出来事だったりもする。

首都圏緊急事態宣言下、最後の週末となった中央競馬の開催で起きた出来事。

土曜日、阪神競馬場で10回騎乗して5勝、日曜日、中京競馬場で11回騎乗して6勝。

合計11勝の固め打ちで、混戦模様だった日本人リーディングから頭一つ抜け出した
松山弘平騎手がまさにその主役だった。

松山騎手と言えば、昨年もこの時期、ドバイに振り回されたルメール騎手や他の日本人上位騎手を横目に勝ち星を積み重ね、歴史的牝馬無敗三冠の第一歩を踏み出したのはまだ記憶に新しいところ。

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

その後は、他の先輩ジョッキーたちの巻き返しもあって、デアリングタクトでのGⅠ2勝こそあるものの、どちらかと言えば尻すぼみ感もあったりしたのだが、それでも堂々127勝。

今年も、出だしこそ何となくもたつき加減のように見えたが、それでもヒシイグアスで中山金杯中山記念と重賞タイトルを奪い、勝ち星も今週末の量産で39勝まで伸びた。

この週末だけ見てもほぼ全レースに騎乗、11勝のうち10頭が3番人気以内と、騎乗機会にも乗り馬にも恵まれているのは確かだが、それ以上に本人が「乗れている」のは間違いないところで、長年、武豊騎手を筆頭に、福永騎手、川田騎手と同世代競争を勝ち抜いたプレイヤーたちが長年存在感を発揮して上位を独占していたこの世界で、遂に世代の壁をぶち破ってくれそうな予感がする*1

もちろん、大一番になれば、先に挙げた”看板”日本人騎手たちに加え、ルメール騎手も当然主役に入ってくるし、騎乗機会は少なくとも大舞台では輝く池添、浜中、ミルコ・デムーロといった往年の名騎手たちとも戦わないといけないから、まだまだ「名実ともにトップ騎手」の域に辿り着くまでには一山ふた山あるとは思うのだけど、潮目が変わるとしたらこのシーズンではないかな、という予感はする。

そして「馬」に目を移せば、ここに来て俄然存在感を発揮しだしているのが
種牡馬・モーリスである。

思えば2歳戦の出だしでは、人気を集めながらも「期待外れ」となるケースが多かったし、結果的に獲得賞金では同じ新種牡馬ドゥラメンテに、重賞タイトルでも同じく新種牡馬ミッキーアイルに一歩先を行かれる形になっていたのだが、年が変わってからは、年明け早々にシンザン記念で初重賞勝利。さらにこのクラシックトライアルシーズンになって、シゲルピンクルビー、ルークズネストという重賞勝ち馬を次々と送り出してサイヤーランキング10位以内を確保。

自分たちの世代にとっては、競馬場を自分の血一色で染め、「その前のトップサイヤーはどの馬だったっけ?」と思い出すことすら難しくさせたサンデーサイレンス(とその第1世代の子供たち)のインパクトが強すぎるから、その後、どれだけ”後釜”の種牡馬が出てきても、何となく”薄い”印象になってしまうし(ディープインパクト種牡馬として出てきた時もその印象は変わらなかった)、モーリスだって、そういった過去の「新主役」たちが歩んだ道からそんなに踏み出しているわけではない。

ただ、父系を遡った時に出てくるのが、スクリーンヒーローグラスワンダーSilver Hawkという異能の系統だったり、母父にカーネギーが入っていたり、と、これまで20年以上日本の競馬場を席捲してきた主流派血脈からは、ちょっと距離を置いた血筋だったりもするだけに、何かをひっくり返せるとしたらこの馬しかないだろう、という予感もする。

騎手と同様、「次の主役」と期待を集め始めてからが本当の「壁」にぶち当たることも多いのがこの世界の常で、ブレイクするなら一気にいかないと・・・というところではあるのだけれど、これまた今年のうちに、どこかのタイミングで血の爆発があるのかないのか。

シーズンが終わった時に「変化」を感じるのか、それとも「今年もやっぱり上位が強かった」になるのか、今の時点では何とも分からないところはあるが、今のところは何となく前者を期待しつつ、来週からの「解禁」幕開けシーズンを楽しみに待ちたいと思っている。

*1:残念ながら、その裏で武豊騎手がゲートで負傷し、春のGⅠシーズンが危うくなるような危機に瀕していたりもするのだが・・・。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html