地上の星より輝いた薔薇。

春の牝馬クラシックで二冠に輝いた今年の一番星、スターズオンアース

オークスの後、一頓挫あったと伝えられていたが、何とか秋華賞には間に合わせて、春から直行での三冠チャレンジ。

元々、何となくきれいな名前の馬だな、と思っていたのだが、この週末、馬柱をぼんやり眺めながらふと気づく。

この名前、意訳すると地上の星ではないか・・・。

いわずもがな、中島みゆき様の稀代の名曲。「プロジェクトX」とともに蘇る最強のイントロ。

桜花賞は7番人気、オークスは3番人気。自分も2回続けてノーマークだったこの馬が、今回1番人気に支持されたのも、多くの人々が馬名に隠された真意に気づいたからだったのかもしれない。

だが、今年のGⅠに関して言えば、「1番人気」は即、敗北に直結する

スタートで大きく出遅れながらも、最後の直線で馬群を縫いながら繰り出した上がり33秒5の末脚は実に見事・・・でも3着。
今年の平地GⅠ1番人気馬の宿命と、今年国内重賞はわずか2勝、GⅠもこの馬で取ったオークスだけ、というルメール騎手の勝ちきれない騎乗を見事に体現するようなレースになってしまった。

そして、二冠馬に代わって主役に躍り出たのは、華麗なる薔薇一族4代目ローザネイ起源)のスタニングローズだった。

2歳時から牡馬に混じって力走を続けていたこの馬。
3歳になって牝馬路線に転向してからは、オークス2着を除いて負けなし。前走の紫苑Sも勝って、大本命に名前が挙がっても不思議ではなかったのに、なぜかレース前、ナミュールの後塵すら拝する状況だったのは、悲劇の血筋を受け継ぐ者だったからなのか・・・。

第1回秋華賞のロゼカラーは、それでも人気薄で3着に飛び込んできただけ良かった。

気の毒だったのは、力走を続けながら最後までGⅠに縁がなかった弟・ロサードに、牝馬三冠もエリザベス女王杯もあと一歩届かなかった2代目・ローズバド

3代目になって、ローズキングダムが2歳GⅠでようやく念願のタイトルを奪ったものの、クラシックでは惜敗続き。そして、ジャパンCではブエナビスタ降着事件により優勝馬として名を刻むも後味は実に悪かった。

そういえば、あれからずいぶんと長い間、GⅠの舞台で「薔薇一族」の名を聞く機会には恵まれていなかったし、自分自身、あまり意識することもなくなっていた気がする。

実際、このスタニングローズ、という馬は2歳の最初の重賞の時からずっと見ているが、血統表に懐かしいロゼカラー、ローズバドの名が刻まれていることを意識したこともほとんどなかったのだ。

上位馬の実力が拮抗する中、坂井瑠星騎手の手綱に導かれ、先手先手で主導権を握った末に、1,2番人気を封じて先頭でゴールに飛び込んだ瞬間から、この馬の血のドラマも急に騒がれ始めた気がする。

懐かしい馬名が飛び交い、平成の、いや20世紀の競馬に逆戻りしたような感覚にすら襲われる。それが競馬の面白さであり醍醐味であることは否定しない。
ただ、そんな喧騒にオールドファンとしての心地よさを感じつつも、まずは今日のレース、この馬のレースが全てだよな、と思ったのも事実なわけで、「一族」よりも目の前の一輪のバラをまずは讃えなければならないだろう。

かつては”小柄”が代名詞だった薔薇一族*1も、世代を重ねて今や488kgの立派な馬体の牝馬を輩出するに至った。それをもって「薔薇一族らしくない」といってしまえばそれまでなのだけれど、個人的にはここから始まる新しい”薔薇”の歴史に期待を込めてみたいと思っているところである。

*1:ロゼカラーは426kgで秋華賞に出走、ローズバドも422kgでの出走だった。もっというと、ロサードの3歳春時点の馬体重は410キロに満たないくらいだったし、ローズキングダムですら450~460㎏のボリュームでGⅠを連戦していた。

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