単勝1.4倍、断然の一番人気を背負っていた馬だから、これも走り出す前から予想できた結末、と言えばそれまで。
ただ、第84回オークスでリバティアイランドが見せた走りは、あらゆる想定を超えて見る者を圧倒した。
逃げると目されたゴールデンハインドを抑えて、内からライトクオンタムとキミノナハマリア、外からはイングランドアイズが我先にと先手を奪いに行った序盤。
入りのタイムだけ見れば例年同様の標準ペースだが、前がごちゃ付き気味になったこともあって馬群がばらけたところで、川田騎手が手綱を取る大本命馬はすかさず好位に付ける。
やがて展開が落ち着き、規則正しく1ハロン12秒0のラップを刻むようになっても、この大本命馬は全く折り合いを欠くこともなく、勝利への道を淡々と進む。
そして4コーナーを回って直線に向くところで、川田騎手は迷わずリスクの小さい進路を取って愛馬を外に出し、その後は何らさえぎるもののない最後の直線をただひたすら突き進むのみ。
最内を走っていたライトクオンタムを交わしてからは、誰も影を踏むことすらできないような次元の異なる末脚で後続を突き放す一方で、残り数百メートルの時点で勝負の行方はほぼ決した。
終わってみれば、あれよあれよの6馬身差。
タイムは4年前のラヴズオンリーユーにわずかに及ばなかったものの過去10年で2番目の好時計だったし、何よりも自分より前のポジションにいた馬たちがほぼ例外なく潰れて失速していく中で*1、上がり最速のタイムで突き放した、ということがこの馬の並々ならぬ能力を感じさせた。
レース後の川田騎手のインタビューも、事前にアピールしていた「ゲートが開くまであと2秒我慢して」という自らのお願いをしっかり守ってくれたファンにわざわざ感謝の言葉を述べられるくらい余裕のある受け答え。
それくらいリバティアイランド、という馬は強かった。
2着に付けた着差は実に「6馬身」。
これまでの自分の記憶の中では、「圧勝」のイメージが強かった97年のメジロドーベルでも2着との差は2.5馬身差*2で、報道によると48年前のテスコガビーまで遡る圧勝劇だった、というのだから、まさにオークスの歴史に残る勝ち方だった、ということになる。
ただ、自分はそんなことよりも、この馬が常識どおりこの牝馬限定戦を走ったことで、未だ「牝馬二冠」にとどまっている、ということの方が残念でならないわけで、無事夏を越した後、「牝馬」という固定観念から解き放たれて更なる高みへと昇る日が来ることが今は待ち遠しくて仕方ない。
そしてもう一つ、距離が伸びてより強みが出る、と期待されていたコナコーストやヒップホップソウル、といったキタサンブラック産駒*3ではなく、僅か2頭しか出ていなかったドゥラメンテ産駒が1着、3着を奪い取った、というところに来週のレースを占うヒントが隠されているような気がしていて、リバティアイランド陣営の”常識”に助けられた今年の3歳牡馬たちが、もう一つの東京芝2400mのGⅠレースでどういう序列付けを示すのか、ということは注目してみておきたいと思っている*4。