出会いと別れの交差。

競馬の世界のカレンダーで「別れの季節」といえば2月最終週だし、「新たな出会いの季節」といえば3月1週目、というのが昔からの定番・・・だったはずなのだが、今年はどういうわけか、恒例の3月1週目の新人騎手デビュー週に定年を迎えた調教師の引退が重なる、という珍しい交差が生まれた。

自分くらいの世代になってくると、毎年デビューする10代の新人騎手たちは、一括りの「若者」に過ぎない。
もちろん、年末くらいになるとそれぞれの個性も見えてくるし、「推し」の対象になるような騎手も出てくるのではあるが、デビューしたての頃は名前を聞いてもただの文字列。

一方、引退する調教師の方は、一人ひとりのお名前にその時々の記憶がラップする。

特に最近は、見始めた頃にまだ現役の騎手だった先生方が70歳を迎えて引退・・・というケースも多いから尚更なわけで、特に今年は中野栄治調教師、安田隆行調教師、松永昌博調教師、加用正調教師、と次々に引退の時を迎えられたことで、自分も相応の歳を迎えつつあるのだな・・・と思わずにはいられなかったし、トキオエクセレント高橋裕調教師や一時は美浦藤沢和雄師と並び称された小桧山悟調教師にもそれなりの思い出はある。

だから、記念すべき「デビュー週」ということは分かっていながらも、しんみりとする気持ちの方が強かったのがこの週末の自分だった。

個人的には、武豊騎手が日曜日の中山で引退間近の調教師の馬たちに乗り続け、特に中野栄治厩舎の馬で場内を沸かした、というシーンが(偶然の産物かもしれないが)この週末のハイライトだったと思ったりもするのだが、そんな宴の後の寂しさはやっぱり残る。

おそらく次の週になれば、前の週の記憶など一瞬で吹き飛んで、また新しいカレンダーを追いかけていく日々になるのだろう。

新人騎手たちも、デビュー週勝利を飾った騎手こそいなかったものの、2着、3着に食い込んだ騎手は既に出てきている。
「3月3日の第3レース」という粋な演出で藤原菜々花アナウンサーが史上初の女性場内実況デビューを飾る、というエポックメイキングな出来事もあった。

古い記憶に引きずられがちなオールドファンとしては、チューリップ賞を勝ったスウィープフィートの祖母の名に、思わず”過去とのつながり”を求めてしまったりもするのだけれど、そんな感傷とは無関係に番組は消化され、あと何週かすれば春のGⅠ、そしてクラシックシーズンに突入していく・・・。


とはいえ、なんだかんだ言いながらも、30年以上、ほぼ間断なくターフ上の歴史を眺めながら自分が今日まで生きてこられた、ということが一番かな、とも思うだけに、また改まって新しい気持ちで、これからの歴史を見届けたいと思っているところである。

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