知財分野における制度間競争の行方

ついこの前、ジュリストで知財特集が組まれた、と思っていたら、今度はNBLに場を移して、またしても「新たなデザイン保護体系を目指して」というタイトルの知財関係の特集が掲載されている。

知財法体系における「デザイン保護」といえば、ここ最近ホットに盛り上がっていた「画像デザインの保護拡充」という論点もあり*1、その議論の過程では、「意匠権により保護する」ことに対して、激しい批判の声も上がっていただけに、冒頭に掲載された中山信弘名誉教授の論稿で、

「本特集においては、主として法制上の問題点、なかんづく他の法制度(著作権法、商標法、不正競争防止法)との関わりを中心に、意匠制度の問題点を探ることとした」(中山信弘「特集に当たって」NBL1020号14頁)

と書かれていたこともあって、個人的には期待するところが多かった。

実際、読み進めてみると、「画像デザイン」だけにとどまらず、「デザイン」全般について、著作権法(市村直也弁護士)、商標法(金子敏哉専任講師)、不正競争防止法青木大也准教授)それぞれの視点からこれまでの議論状況がかなり詳細にまとめられており、資料的価値も高いものとなっている。

当然ながら、紙幅の制限もあるし、研究自体がまだまだ緒に付いたばかり、ということもあってか、これまでの議論を踏まえた掘り下げや横断的分析については、まだまだこれから、という感が強い状況になってはいるものの、冒頭で中山名誉教授が投げかけられた問題意識に添って検討が進められていくのであれば、非常に価値のある研究になるだろう、と個人的には思うところである。

そんな中、今回の特集に掲載された論稿の中で、異彩を放っていたのが、杉光一成教授による「「規制立法」としての知的財産法‐デザイン保護における意匠法の役割に関する試論」(NBL1020号37頁)という論文だった。

元々、「規制立法」と呼ぶことがためらわれる知財諸法について、あえてこのタイトルを用いる大胆さも凄いと思うし、知財法=規制立法という前提に立って、

「知的財産のような無形の情報を対象として人の行動を制約する人工的な特権は、いわばその規制を許容または正当化する要件として本来的かつ可及的に権利の存否を外形的に明らかにして認識可能ならしめることが要求されている」

と、「可及的公示の原理」なる仮説を立てたり、それを元に制度設計の検討にまで分析を進めたりしているところにも、他に類を見ない面白さがある。

この論文では、私人の予測可能性を担保する、という見地から権利調査が可能な「TYPE1」(審査して登録する制度)を原則とすべき、とし、無審査登録制度の「TYPE2」や、無審査で登録しない「TYPE3」の制度はあくまで例外としてのみ許容し得る規制態様、と位置付けた上で、

・「TYPE1」の制度である意匠法は、「デザイン」をなるべく保護対象として広く取り込むべき。
・しかし、現行法においては、「TYPE3」の制度である不正競争防止法著作権法の方に一種の「強み」があり、「TYPE1」の補完という位置づけを超えた「逆転」現象が起きてしまう可能性もある。

と「意匠法の危機」に警鐘を鳴らしており、意匠権の出願件数低迷に苦しむ特許庁にとっては、まさに“救世主”的な論文が現れた、と言えるだろう。

個人的には、「知財権」=「規制」=「明確性が必要」=「審査登録制を原則とするのが望ましい」という流れには、やや論旨に強引さがみられるのではないか、と考えているし、そもそも「登録審査制」だからといって「予測可能性」が常に立つとは言えないのではないか、とも考えている。

著作権法のような「依拠」要件がなく、登録された権利の内容に抵触すれば知・不知に関わらず常に違法となりうる産業財産権による保護は、事業者側の萎縮効果を招く可能性が極めて高いことも既にあちこちで指摘されているところだけに、この結論をそのまま丸のみするわけにはいかないだろう。

ただ、今後も、保護領域が交錯する分野において、それぞれの立場からの制度選択をめぐる主張や解釈論、立法論が飛び出してきそうな気配があるだけに、議論を行うための一つの視座として、今回のような分析は活用できるように思われる。
将来的に、それぞれの制度が仲良く共存し続けるのか、それとも、権利公示型/非公示型のいずれかが積極的に選択される方向に舵を切っていくのか。今がその分かれ目ではないか・・・という気もしているだけに、こういったアプローチからの今後の展開も期待したいところである。

*1:直近の記事としては、http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20140106/1389025087参照。

1ヶ月遅れのジュリスト特集レビュー

最近、日々のあまりの慌ただしさゆえ、いろいろと入手している法律雑誌の論文も、判例も、読めずに放っておくか、あるいは読んでもなかなかアウトプットにつなげられずにいるのだが、しばらく放置していたジュリスト2月号(1463号)の特集もその一つ。

昨年末、1月号の特集予告が「独禁法」になっているのを見て、“知財の時代”も一昔前のことになってしまったのかなぁ・・・と思い始めたタイミングでの特集だっただけに、嬉しい思いはあったし、「クラウド電子書籍著作権」という企画自体、非常にタイムリーな好企画だったと思う。

何よりも印象に残ったのが、特集冒頭の小泉直樹教授の論文*1

あくまで「企画趣旨の紹介」という位置づけの論稿であり、個々の論点については各執筆者の論稿の紹介にとどめているのだが、冒頭で中山信弘東大名誉教授の『著作権法』での名言、「著作権法の憂鬱」の一節を引用した上で、クラウドサービスと著作権の関係について、今や「規制改革」の文脈でも議論がなされている現状を捉え、

著作権は私人の権利であって、そもそも政府の規制ではない。著作権法は、著作権の保護と著作物の利用の円滑化の調和が図られるよう、私人と私人との権利関係を規定した私法(民法の特別法)であって、他の行政法規とは性格が異なる。にもかかわらず、今日、著作権という私的な財に関する権利の効果としてビジネスが行えないことがあたかも「事実上の規制」と同じような効果を持つととらえられ、規制改革の文脈で論じられようとしていることは、まさに「著作権法の憂鬱」を象徴する出来事といえよう」(13頁、強調筆者)

とある種の皮肉も込めて(?)述べられているくだりなどは、現在の混迷した状況に対する学界の方々のもどかしさが代弁されているような気がして、何とも言えない気分になった*2

また、各論を構成する個々の論文も、それぞれ光を放っている。

宮下佳之弁護士の「クラウドの私的利用をめぐる実務上の問題点」(17頁)では、ロッカーサービスの分類ごとに事業者の行為主体性が検討され、さらに最後で、「ロッカー・サービス用システムの「自動複製機器」該当性」という、目下、関係者の頭を悩ませている最大の問題点に答えを出そうとされている*3

また、三浦正広教授による、EU司法裁判所のVG Wort事件判決等、欧州における補償金制度の紹介に続いて*4、上野達弘教授が、現行の我が国の私的録音録画補償金制度の問題状況と将来展望に言及されたくだり*5などは、補償金制度をめぐる議論に関わろうとする者にとっては必読、と言える。

特に、上野教授が分析されている「基本的な考え方」において、「私的複製というのは本来自由であり、権利者に報酬を支払う必要もないという考え方」(補償金制度を政策の実現手段と捉える考え方)と、「私的複製は完全に自由というわけではなく、著作権等は私的複製について排他的権利を有しないとしても、報酬を受ける権利は有するという考え方」(補償金制度を権利の実現手段と捉える考え方)を分けた上で、我が国の著作権法30条をめぐるこれまでのルールから、

「わが国では、私的複製というものは無許諾かつ無償で行うことができるというのが、いつしか自明の出発点と捉えられてきたようにも思われる。」(34頁)

とし、双方の考え方の是非には立ち入らない、としつつも、

「この点について、いずれの考えも成り立ちうるということを共通の理解にすることによって、本制度に関する生産的な議論が可能になるように思われる」(34頁)

と述べられているあたりは、関係者の意見が“真っ二つ”に分かれがちな現状においては、非常に示唆的、というべきではなかろうか。

一方、横山久芳教授による自炊代行訴訟の判決に関する評釈*6は、このブログですでに取り上げた池村評釈、田村評釈が世に出る前に書かれた*7もの、ということもあり、先行する評釈との絡みがないのが若干残念なのだが、内容的には、

「「枢要な行為」を行っていない者でも、別の実質的考慮により、複製の主体と判断されることはありうるというべきである。」(39頁)

として、利用者の複製主体性をあっさり否定した東京地裁判決を批判した上で、「自炊代行サービスの可否は、30条1項の解釈問題に帰着することとなる」という見解を示しているなど、注目すべき点は多い。

結論としては、

「30条1項は、36条1項とは異なり、複製主体を厳密に「使用する者」に限定している。これは、私的複製の過程に外部の者が介入することを排除し、私的複製の量を抑制することを意図したものとされる。そうだとすると、外部の業者が物理的に複製を行う場合に、利用者が規範的な意味で複製の主体になることを理由として30条1項の適用を認め、権利を制限することは、同条の立法趣旨に反するものというべきである。」(41頁)

ということで、判決の結論を支持しているし、本件のような代行サービスとの関係で結論のバランスが良く問題視される「機材・書籍提供型」についても、

「自炊代行サービスを複製権侵害と解する場合には、「機材・書籍提供型」も複製権侵害になると解するのがバランスの取れた解釈論といえよう。」

と、きちんと辻褄を合わせる姿勢を見せているから、これまでに世に出た評釈の中では、むしろもっとも“自炊”に厳しいもの、ともいえるところだが、こういう形で様々な立場からの論稿が世に出るのは、今後の議論を深める上では、悪いことではない、と思うところである。


他にも、電子書籍に関して、「デジタル消尽」に関する奥邨弘司教授の論文や、これまでの立法に大きな影響を与えている明治大学の金子敏哉専任講師、出版者側の立場から発言されている村瀬拓男弁護士が、それぞれの立場から書かれた論稿が掲載されるなど*8、現在の立法動向を見守る上での資料的価値が高い今回の特集。

ジュリストで次に特集が組まれるのは、おそらく一年後くらいまで待たなければならないのかもしれないが*9、次の特集の時にはいったい何がホットイシューになっているのだろうか・・・というところに思いを巡らせつつ、今回の紹介はひとまずここで終えることにしたい。

*1:小泉直樹「クラウド電子書籍著作権‐企画の趣旨」ジュリスト1463号12頁。

*2:この「規制改革」的アプローチに対しては、自分も極めて懐疑的なのだが(http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20131002/1380936808)、それでも時と場合によっては、このアプローチも使わないといけない状況もある中で、小泉教授ほどの立場の方にこうおっしゃられてしまうと一層複雑な気持ちになってしまう。

*3:宮下弁護士の解釈アプローチは、「著作権法30条1項の立法経緯や趣旨等に立ち返って「公衆用設置自動複製機器」の範囲を限定的に解釈しようとするものだが、同時に、これまで一般的に唱えられているいくつかの限定解釈手法への批判も行なっており、複雑な思いをこの論稿を眺めた方も多かったのではないかと思われる。

*4:三浦正広「補償金制度をめぐる欧州の動向」ジュリスト1463号23頁。

*5:上野達弘「私的録音録画補償金制度をめぐる課題と展望」ジュリスト1463号29頁。

*6:横山久芳「自炊代行訴訟判決をめぐって」ジュリスト1463号36頁。

*7:末尾に「脱稿後…接した」とある(42頁)。

*8:特に村瀬弁護士の論稿は、出版者が今回の出版権設定の議論に今一つ乗り切れないように見える理由の一端が明らかにされており、個人的にはとても興味深い内容であった。

*9:もしかしたら年内にもう一回くらいはチャンスが巡ってくるのかもしれないが・・・。

開幕前のフィーバーと一抹の不安

4年に一度の冬の祭典がまた始まろうとしている。

4年前に、自分がどこで何をしていたのか、ということに思いを馳せると時の早さには驚くばかりだし、そこから始まった新しいストーリーと、4年前に完結できなかった終わらないストーリーが交錯している、という五輪ならではの様々な人間模様をメディア等を通じて見聞きするたびに、わが身に照らしていろいろと思うところはある。

で、やはりこの時期になると、Number誌に期待せざるを得ないのだが、今回も4年前と同じく表紙は当然浅田真央選手。

そして、前回以上に凄いのが、今回は「フィギュア特集」という域を超えて、「浅田真央選手」に完全にフィーチャーした特集記事になっていること。

お馴染み、宇都宮直子氏の巻頭言に始まり、

野口美惠「涙のバンクーバーから最高のソチへ」*1
松原孝臣「15歳の世界女王」*2

と同誌自慢の執筆陣が続き、さらに極めつけは、

「2005-2013 銀盤の軌跡&私だけが知る真央」

という実に15ページ近い関係者の証言集&ヒストリーのまとめ。
ローリー・ニコル、タラソワといったコーチ、振り付け関係者から、スルツカヤプルシェンコといった往年の名選手たち、さらには、松岡修造氏(笑)まで・・・
とにかく、最後の浅田真央選手のとことん応援し尽くす、という企画で満ちている。

個人的には、2006年から2008年まで、ロサンゼルスで指導にあたっていたラファエル・アルトゥニアンコーチが、“喧嘩別れ”のエピソードを振り返り、

「指導して1年半たった08年1月、アメリカに来られないと真央が急に言い出したので、当時の僕は怒りました。今より若かったし、白黒はっきりつける性格でしたから。お母さんの具合が良くないためというのは隠されていて、後で知ったことでした。自分のキャリアの中で一番の後悔です。今だったら、絶対に違う指導のやり方をアレンジしたと思います。」(Number846号・40頁)

と語るくだりなどは、“運命の悪戯”を感じざるを得ないし*3、プロスケーターになった太田由希奈氏が、ノービス時代の浅田姉妹のエピソードなどを振り返りつつ、「子供の頃のように、キラキラした目で生き生きと舞って欲しい。」というコメントを寄せているのを読んで(36頁)、改めて、この10年近い浅田真央フィーバー&女子フィギュアフィーバーの功罪を思い知らされるなど、いろいろと読み甲斐のある記事は多い。

ただ、本来目玉であるはずの「ソチ五輪注目競技完全ガイド」のページ数の倍近いページが浅田選手関係の記事に割かれている、というのは、五輪特集号としては、やっぱりバランスが良いとは言えない。

前回のNumber誌の冬季五輪特集では、フィギュアスケート関係の記事が多すぎないか、というのが気になったのだが(http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20100213/1266043013)、今回はそれを遥かに超えている。

今回の五輪に臨む選手たちの中でも、浅田真央選手が一番世界の頂点に近いところにいて、しかも、表舞台に出るようになってからの歴史が長い*4選手であることは何ら疑いがないし、今の日本で、フィギュアスケートが、冬季五輪の様々な種目の中で、もっとも商業的に取り上げることにメリットがある競技であることを疑うつもりもない。

だが、現実には、フィギュアほどメジャーではなくても、日本選手が地道に実績を積み上げていて、もう少しでメダルまで手が届きそうな、あるいはメダルまでは行かなくても、これまでにない良い成績を残せそうな、そんな競技がもっとあるように思えるだけに、スポーツ専門誌の看板を掲げる雑誌としては、もう少し取材対象とフォーカスする対象を広げてほしかったなぁ、と思えてならない。

そして、一般紙*5でもフィギュアスケートにばかり注目が集まる中、他の競技の選手たちの頑張り如何にかかわらず、今回のソチ五輪の価値が、フィギュアスケートでの日本勢の結果如何に左右されてしまう・・・そんな世論が形成されてしまわないか、という点に自分は一抹の不安を感じざるを得ない。

他の競技がことごとく不振でも、荒川静香選手の金メダル一つで(一般国民的には)「いい大会」になったトリノの例もあるから、結局は、フィギュアスケート陣が男子も女子も期待通りの結果を残してくれれば、何も心配することはないのだけれど、個人的には、今回は、むしろ“長野までのお家芸”+カーリングが主役の大会になるような気がしているだけに、フィギュアスケート中心に五輪期間中のメディアたちのカレンダーが回り過ぎることがないように、と心の中で祈るばかりである*6

*1:バンクーバー五輪後の浅田選手と佐藤信夫コーチの4年間を中心に構成した記事

*2:彼女が初めてシニア世界一の称号を手にした2005年のGPファイナルの衝撃を当時の関係者の証言とともに振り返る記事

*3:2007年の世界選手権の時点で既に指導力を発揮し始めていたアルトゥニアンコーチが、そのままバンクーバーまでコーチを継続していたら、おそらく4年前に彼女は金メダリストになり、その後のストーリーはまた違ったものになっていたのではないかな、と思わずにはいられない。

*4:もちろん、ジャンプの葛西選手やモーグルの上村選手に比べれば短いとはいえ、競技としてのメジャー性を考えると、人目に晒されてきた期間も時間も、やはり浅田選手がずば抜けている、と言わざるを得ないだろう。

*5:この日の日経新聞でも2面使ってフィギュアスケートの特集を組んでいる。

*6:今大会では、「フィギュアスケート団体」という、正直どうでもよい種目が入って、フィギュアスケートの競技期間がいつも以上に伸びているだけに、なおさら他の競技の中継が食われないように、と願うばかりである。

新しい年の新しい動き。

年も改まった、ということで、昨年のうちに届いていた法律雑誌の「新年号」に目を通してみた。

まずは、毎年恒例、新しい年の「ビジネスローの展望」を特集に掲げるNBL誌(1016号、2014年1月1日号)から。

宣言されたリミット 〜いよいよ正念場となった「債権法改正」

基本的にこの企画は、所管官庁のそれなりの立場の方が書かれる記事、ということもあってか、毎年、法改正動向の簡単な概要の紹介に留まることが多く、資料価値は認めうるものの、“読み物”としてはそんなに期待できる代物ではない。

たが、今年は、冒頭の「債権法改正の動向」*1から、「おっ?」と思わせるコメントが登場する。

まず、今後の進行について、「部会での改正要綱案の決定は、おおむね来年1月ころに行われる」見通しであり、それに先立って「本年7月末までに改正要綱仮案を取りまとめることが予定されている」という方針が公に示され、「改正要綱仮案は、この段階で実質的な改正内容を固めることを意図するもの」であることが、参事官のコメントとして明確に示されたこと*2

法制審部会周りでは、既に当然の「既定路線」として受け止められていたスケジュールではあるが、これまで「期限を決めずにじっくり審議する」というのが“公式見解”になっていたことを考えると、こういう形で当局のコメントとして“リミット”が活字になり、公にされた、ということには、大きな意味があると個人的には思っている*3

また、「改正要綱案の取りまとめに向けて」(6頁)という章で述べられている内容も、今後を占う上では大変興味深い。
特に、以下の部分は。

「最終的な改正要綱案を確定させる前に3回目のパブリック・コメントの手続を実施すべきであるという意見も寄せられているが、今後さらにこの手続を実施することは、基本的に想定されていない。法制審議会で得られた成案は、その後に法律案として国会に提出され、国民の代表である国会の審議を通じて国民の声を反映することが予定されているからである。」
「もっとも、この意見は、さらに時間をかけてよりよいものを目指すべきであるという趣旨にも理解することができ、それは立法作業の一つのあり方として傾聴に値する。しかし、他方で、一定の合理的な審議期間の中で、それぞれの論点項目について大方の賛同を得ることのできる成案を得られるかどうかを見極めるという観点も、立法作業においては必要である。」(6頁)

要するに、いろんな意見があるのは分かるけど、もうそろそろ纏めに入るので“見極め”のプロセスに協力してくれ・・・ということなのだろう。

これに続けて、「部会資料や議事録に対して意見を寄せていただくことは常に歓迎」だとか、「部会の内外での意見交換を十分に図りながら審議を進めることを心掛けていきたい」といったコメントも出てくるので、無茶苦茶な進め方にはならない、と自分も信じたいところではあるが、昨年末のアドバルーン記事の一件といい*4、そろそろ水面下のいろんな動きが出てこないとは限らないわけで、今年もやきもきしながら審議会内外でのプロセスを見守っていくことになるのだろう、と思っている。

消費者裁判手続特例法ほか

さて、その他のビジネス法令の動向については、会社法知財等を含めて、これといって特筆すべきものはないのであるが、強いてあげるとすれば、今年前半、BtoCビジネスを営む会社にとって、一番の悩みの種になりそうな「消費者裁判手続特例法」の話だろうか。

この点については、消費者庁の担当課長が書かれている記事*5よりも、特集記事の後ろに掲載されている「第28回民事紛争処理研基金設立記念講演会」の講演概要記事*6の方が、より踏み込んだコメントもあって、より読み甲斐があるのではないかと思う。

あと、「ビジネスロー」というよりは、もっと広い範囲に影響が及ぶ話だと思うのだが、相続法制に関して、非嫡出子相続分差別規定の廃止に伴い、「相続法制全般について見直しをする」ためのワーキングチームを設置する、という動きについては、個人的には興味深いところであった*7

独禁法の時代の本格的な訪れを前に。

一方、もう一つのメジャー雑誌、ジュリストの方に目を移してみると、目につくのが独禁法関連記事の多さである。

まず特集が「国際カルテル規制の最前線」ということで、神戸大の泉水教授と、独禁法分野の第一人者として活躍されている多田敏明弁護士、長澤哲也弁護士の3人による鼎談など、多くの紙幅が割かれている*8

そしてさらに、新企画として、「企業法務独禁法事例コレクション」の連載が開始され、白石忠志教授の企画趣旨の解説(「連載開始にあたって」)に続いて、島田まどか弁護士の「競争事業者間の情報交換」についての事例解説が第1回として掲載されている*9

奇しくも、先ほどのNBLの特集の中で、公取委の担当官が、「平成26年においても・・・競争政策の積極的な展開に取り組んでいく」と高らかに宣言している*10ことからも分かるように、近年、独禁法周りのリスクは国内外で、“机上のコンプライアンス”を超えた現実的な脅威となりつつあるのだけれど、実際に摘発事例に直面した企業や、その事例を担当した弁護士がまだまだ一部に限られている(さらに言えば、公取委の命令を超えて審判や裁判所で争われる機会が少ないため、審決例、判例の形で違法性判断のプロセスが明確になることも多くはない)ということもあって、どうしても正確な実態を伝える情報が、表に出にくい状況があったことは否めない。

それゆえに、本格的な独禁法規制の嵐が吹く前に、「有益な素材が一段と増えて議論が活性化し、以て一般読者の利益が確保され、独禁法の民主的で健全な発達が促進される」ように、という白石教授のご配慮は、実務サイドとしても大変ありがたいところであり、一読者に過ぎない自分としても、こういった積極的な情報シェアの動きは、陰ながら応援したいと思っている。

*1:筒井健夫「債権法改正の動向」NBL1016号4頁(2014年)。

*2:その後、要綱案が出るまでの間には、「条文案の起草作業を進める過程でなにか問題がみつければ」フィードバックする(逆に言えば、そういった問題がなければ基本的に動かさない)にとどまる、ということも示唆されている。

*3:この期限までに纏め切れる、という確信を当局が掴んだためか、それとも、何としてでもこのリミットまでには終わらせる、という当局の決意を表しているのか(あるいはその両方か)は、筆者の知る限りではないが・・・。

*4:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20131229/1388841623参照。

*5:加納克利「消費者裁判手続特例法について」NBL1016号23頁(2014年)。

*6:鈴木敦士「消費者裁判手続特例法案の概要」NBL1016号31頁(2014年)。

*7:堂園幹一郎「嫡出でない子の相続分に関する民法の改正と相続法制等の見直し」NBL1016号12頁(2014年)。

*8:ここでは書ききれないので割愛するが、この鼎談は、これまで関係者の間で“ボソッ”と呟かれていたような国際カルテル規制に関するあれこれのこぼれ話を、かなりの部分まで活字にしている、という点で、極めて資料価値が高いものではないか、と個人的には思う。

*9:なお、企画趣旨の説明の中で、『Business Law Journal』誌の「ビジネスを促進する独禁法の道標」という類似企画に言及され、「私事ながら少々板挟みの感」があったことを表明されているあたりに、白石教授のお人柄が表れているように思え(何の断りもなく、同じような企画を複数の雑誌にマルチポストされる方も多い中で・・・)、個人的には大変好感が持てるところである。

*10:笠原宏「競争政策の動向と課題」NBL1016号21頁(2014年)。法務省等の“立法”だけの府とは立場が違う、という前提があるとしても、独禁法、下請法ともに、ここまで高らかに宣言されると、実務サイドとしては、ため息の一つや二つ付きたくなってしまう・・・。

続きを読む

人生いろいろ、実務もいろいろ 〜 BLJ2013年9月号より

相変わらず、発売と同時に・・・というわけにはなかなかいかないのだが、今月もBLJの最新号をご紹介しておくことにしたい。

BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2013年 09月号 [雑誌]

BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2013年 09月号 [雑誌]

「FOCUS」として取り上げられている「消費税転嫁対策 特別措置法の実務対応」の特集は、さすがBLJならでは、という演出が随所に盛り込まれていて、秀逸な企画だと思う。

この特措法は、自由市場経済国家の法律にしては、あまりにベタな規制が盛り込まれているがゆえに、巷では様々な批判があふれている法律だし、それは「実務上の課題と疑問」(31頁以下)の中で取り上げられている法務担当者の声にも如実に表れているのだが、そこで、根岸哲先生を登場させ、

「日本では、規制緩和による自由な競争に基づく経済成長戦略を掲げる一方で、弱者保護的発想から中小事業者であれば何でも保護すべきというような風潮があります。国全体でバランスよく成長していくためには保護すべき中小事業者の選別も必要なはずであり、その点には十分注意しなければならないと思っています。だからこそ、『特措法は必要なのか』という議論はしっかりなされるべきです」(20頁)

と、おっ、と思わせるご発言を引き出しているあたりはお見事*1
公取委での実務を経験された池田毅弁護士が解説されている「実務ポイント」も、簡にして要を得た分かり易いものになっている(22〜30頁)*2

池田弁護士のコメント(23頁)にもあるとおり、BLJの発刊後まもなくして、特措法の一連のガイドライン(案)が公表され、パブリックコメントの募集も行われているのであるが*3、いかに特措法自体がそれ自体で完結した法律だといっても、各省庁が出しているガイドラインは、独禁法、下請法、景表法といった従来から存在する法令のガイドラインをベースに作られたものであるため、付け焼刃的な知識だけでガイドラインを読むのは危険・・・というのが実態なわけで、その意味では、本誌の企画は、非常にタイムリーなものだったのではないかと思う*4

いずれにしても、多くのBtoC企業では、これから消費税率アップの日に向けて*5、実務での対応を否応なしに迫られることになるのは確実な状況だけに、実務担当者の声も含め*6、この特集に盛り込まれている問題意識を手掛かりに、自社内での対応スタンスを早めに固めてしまうのが吉だと思う。

「特集・労働トラブル収束法」の不思議。

さて、個人的に、今月号の一番の“ツボ”だったのが、この特集である。

といっても、必ずしも真正面から“絶賛”できる、という趣旨ではない。
むしろ、それなりに労働事件の場数を踏んできたつもりの一担当者の視点で見た時に、「え、こんなことするの?」「え、こんな発想ってありうるの?」というサプライズに満ちている(笑)、という点で、ツボにはまった、というのが正直なところだった。

特に、一人目の先生の論稿は、「これ、法務担当者向けではなく、新人弁護士向けに書いた記事ですよね?」と思ってしまうくらい、“やるべき”とされている内容がマニアックで、かなりびっくり・・・*7

さらに言えば、

「法務担当者は『労働問題の特殊性』という言葉に目を奪われてはいけない。」(41頁)

というフレーズは、確かにその通りだと思うのだが、

「法的問題を検討する場合には、『当事者間の権利義務関係』と『規制法規・判例の有無・適用範囲』を調査すべきことは他の法務問題と同様である。そのうえで『社内問題(社内対策)』や『組合対応』等の問題が出てくるのであって、基本的な作業を疎かにしてはならない」

とまで言ってしまうと、法務担当者が社内で存在感を発揮するために必要な紛争直後の“初動”対応を見誤りかねないんじゃないか・・・ということが、少々懸念される。

おそらく、様々な事案を担当される中で、「社内対策」「組合対応」ばかりに目が行って、肝心の法的検討に必要な材料を一向に出してこないクライアントに懲りたご経験があってのこと、なのかもしれないが、人事関係の事案は、とにもかくにも生々しいものだけに、法的検討よりも何よりも、まずは上層部も含めた社内の混乱を最小限に抑えて、事案ごとに訟務部門が信頼を得られるような動きをしないと、どうにもならないだろう、と自分は思っている。

また、訴訟の決着自体、法的な理論構成の巧拙よりも、「事実調査の巧拙」で決まってしまう、というのが労働事件の本質*8であり、特に被告側(使用者側)の場合、口が重い人事サイドのガードを取っ払って、関係者から必要な情報と証拠をかき集めないことには、守るに守れない(それでも勝てる時は勝てるのだけど・・・)というのが実情だけに、「証拠の探し方・作成方法」が、たった2行しか記載されていない、というのも、驚きであった*9

一方、法務実務者が匿名で書かれている「最近の問題事例と解決へのアプローチ」(52頁以下)の各記事にも、ちょっと驚かされるくだりがチラホラ・・・。

特に、最初の方の、

「人証尋問前の和解で終わった事件でも1000万円を軽く超えたことがありました。」
「できることなら、ゆくゆくは弁護士資格者を採用して労働訴訟を内製化したいですね。」

というコメント(53頁)には、素直に仰天した。

確かに労働事件は、通常の訴訟に比べれば多少は時間も労力もかかるものだが、会社として腹を括って判断した結果が争われている以上、法務担当者としてはその手間を惜しむべきではないと思うし、経験豊富な事務所の多くは、そういう事情も理解した上で、商事、知財等の事件に比べると遥かにリーズナブルな報酬で対応してくれるものだ。
それをわざわざ、タイムチャージ制(?)の事務所に依頼して、コストがかかると嘆いても始まらんだろう、と・・・。
ましてや、「内製化」には一番向かない領域ですよ、労働事件は・・・*10

さすがに、これに続く論稿には、腑に落ちるコメントが多く、「司法解決のメリット」を説くメーカーBの法務部長氏のコメントや、「有期労働契約の手続きの甘さ」を指摘するサービス業法務部長氏のコメント等は、ふむふむ・・・という感じだったのだが、初っ端のインパクトがあまりに強かっただけに・・・(以下略

*1:結論としては、「適用範囲が明確かつ限定的であり」「時限立法という点からも」「バランスはそれなりに確保されているのではないかと肯定的に捉えている」というところに収まってしまっているのではあるが。

*2:ちなみに池田弁護士は、31頁以降の「実務上の課題と疑問」の中でも一問一答形式のQ&Aの回答を担当されており、今回の特集では獅子奮迅のご活躍(?)である。

*3:http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h25/jul/gl_pabukome.html

*4:ここで、独禁・景表畑の先生方にとっては、願ってもない商機到来ですね・・・というと、言い過ぎになってしまうだろうか(笑)。

*5:ここに来て、消費税率が本当に3%引き上げられるのかどうか、雲行きが怪しくなっているところもあり、それが一番悩ましいところなのかもしれないが・・・。

*6:個人的には「現場をできていない規制」という意見には非常に共感するのだが、立ち位置を変えれば・・・というところもあるので、ここはどれが正しい意見なのか、ということを断言するのは難しい。

*7:個人的には、よほどリサーチが好きで、時間的余裕がある担当者でなければ、このやり方を踏襲しない方が良いのでは・・・と。

*8:もちろん、これは懲戒解雇や雇い止め、ハラスメント等の旧来型のベタ事案の場合の対応で、最近のテクニカルな労働事件への対応としては、本稿に書かれているような“スマート”な対応の方が、「新しい」のかもしれないが、幸か不幸か、自分はそういった類の事件にはまだ遭遇したことがない。

*9:この点については、次の先生が書かれている論稿である程度カバーされてはいるのだが、こちらも若干抽象的で、実戦で使うには物足りない。

*10:「同じ釜の飯を食っている」人間が扱うには事柄自体があまりに重すぎるし、会社経営のいわば暗部に触れて、時には経営者の方針と正面から対峙しないといけなくなる、というのが使用者代理人となる弁護士の宿命だけに、社内弁護士が扱うにはリスクが大きすぎる、と個人的には思っている。

続きを読む

法律雑誌としての立ち位置

債権法改正「中間試案」の座談会が連続で掲載されたこともあって、ここ数か月は、毎月読むことが習慣化している(笑)BLJ誌について。

BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2013年 08月号 [雑誌]

BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2013年 08月号 [雑誌]

「中間試案」に対する誌上座談会に関して言えば、今回は、「今後の改正論議に向けて」というタイトルの下、某マッチポンプ誌の座談会への批判から「こびとのくつや」の話まで、参加している各実務担当者から相当踏み込んだ発言も出てきており、いかにもこの雑誌らしい仕上がりになっている、という印象を受ける。

もちろん、これまで掲載されていた、個別論点に対する分析・検討も、ビジネス系法律雑誌にしては異例の紙幅を割き、実務者にとって気がかりな細かい解釈にまで入り込んだ議論が展開されていた、という点で貴重な資料になっていたと思うのだが、後から出てきたジュリストの特集で、法制審部会委員の先生方をずらっと揃えて、主要な論点について網羅的な議論が掲載されているのと見比べてしまうと、どうしても同じ方向性だけでは難しいなぁ・・・と思うところはあるわけで*1、その意味では、連載の最終回になって、ようやく本来の持ち味を発揮できた、というところなのかもしれない。

(参考)


で、同様に、8月号の中で、「BLJらしさ」が十分に発揮されているのが、「消費者裁判手続特例法のインパクト」というシリーズの第2回(五條操「消費者団体側から見た新制度活用法」68頁)であろう。

何と言っても、ビジネス系の法律雑誌に、適格消費者団体側の弁護士が、思いっきり“自分たちの視点”から書いた記事が掲載されている、というのはそれ自体が貴重なこと。

特に71頁以降の「手続における留意点」や「新制度への懸念等について」といった項では、企業側の実務家から見れば物議をかもしそうなフレーズが、あちこちで登場してくる。

例えば、「仮に第一段階(共通義務確認訴訟)において、義務の存在を争った場合であっても、事業者が情報の開示に積極的かつ適切に協力することを期待している」と述べた上で、注17)で

「事業者にとっても、情報開示に協力せずに消費者の権利行使を妨害したと評価されれば、その後の事業の継続にとって大きなダメージとなるであろう」(71頁)

と、ジャブどころかいきなり本気モードで喧嘩を吹っかけているし、「施行前事案との関係」として、附則2条により施行前の契約が対象とならないこととなったことに対しては、問題点をひとしきり指摘した上で、

「この手続分離による消費者の不満は主として事業者に向かうと予想される。」
「他方、事業者の中には紛争を一回的かつ公平に解決するため、施行前の事案についても新制度の適用を希望する可能性もある。立法論ではあるが、申立団体と事業者の合意により、施行前事案に新制度を適用する余地が制度上残ることを期待している」
(72頁)

と、殴りかかりながら秋波を送る・・・という、極めてややこしいことをやっておられたりもしている*2

↑の注)などでも書いた通り、“敵方”の理屈ゆえ、突っ込みどころを挙げればキリがないのは事実である。

ただ、伝統的法律雑誌にあるような“おすまし”的な記事ではなく、企業実務家という読者を意識しながら、それでもなお筆を走らせた著者の弁護士の勇気と、この原稿をBLJという雑誌に掲載した編集部の英断が、僅か6ページ程度の記事にとてつもない緊張感をもたらしている、ということは、やはり特筆すべきことだろう。


こういった“対角線上にある記事”を、いかに取り上げて、実務にもっとも近い“BLJ”という雑誌の存在意義をいかにアピールしていくのか、というところに、今後、より注目していきたいと思うところである。

*1:本当は、ジュリストに掲載されたような「基調報告」の後に、BLJの過去2回の座談会を持って来ればバランス的には良くなったのだろうけど、先にBLJの座談会の方から読んでしまうと、これまで深く検討してきた人以外は、微妙に“ちんぷんかんぷん”なことになってしまうんじゃないか・・・という懸念もある。

*2:このような見解に対しては、事業者側が勝訴した場合に、(適格消費者団体のみならず)全ての対象消費者に対して既判力や再訴禁止効といった効力が及ぶのであればともかく、そうではなく、事業者が敗訴した場合にしか既判力が生じない、という片面的な制度設計が採用されている以上、いったいどこに「適用を希望する可能性」があるのか、という突っ込みを入れざるを得ない。注21)で指摘されているような「大量の個別訴訟の係属」が施行前事案において実際に生じたとしても、事業者が自ら問題があると感じていればさっさと和解か請求認諾で決着を付ければよいだけの話であり、不用意な判決の効力が幅広く及んでしまうことによるダメージに比べれば、事業者が個別に対応するコストなど大したことはない、と自分は思っている。また、この記事の著者は、附則導入の経緯をあくまで「一部の事業者団体やその意向を受けた専門家の強い意向により実現した」ということにしたいようだが、自分が知る限り、附則2条のような規定を望んでいなかった事業者など、皆無ではないかと思う。

「システム開発契約」が注目され続ける理由。

「Business Law Journal」誌において、すっかり定番となった感がある「システム開発契約」の特集。
今月号も「システム開発トラブル〜実務対応の最前線」というタイトルが表紙を飾った。

BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2013年 07月号 [雑誌]

BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2013年 07月号 [雑誌]

表紙の頭を飾った特集だけで見ても、

2011年12月号 「システム開発契約〜成功と失敗の分かれ目」
2010年5月号 「IT ベンダ対ユーザ システム開発契約をめぐる紛争」

と、毎年一回くらいのペースで、この手の特集が組まれていて、もういい加減ネタ切れなのではないか・・・と思いながら、最新号の特集を読んでみたのだが・・・。

続きを読む
google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html