「のまネコ」問題(エピローグ)&「のまタコ」

他のブロッガーがどんな見解を出しているのか、詳細に見てはいないのだが、
モナー」の著作物性を肯定した上で、類似性(=著作権侵害)を否定する
自分の見解は、どうやら少数派のようだ(笑)。
ま、そう簡単に改説はしないけど*1


ちなみに、今ホットな話題になっている「のまタコ」だが、
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0509/25/news001.html
これまたネット界の通説に反して、
浜崎あゆみロゴ」の権利を侵害しているとは言い切れないと
自分は考えている。


浜崎あゆみロゴ(あゆマーク)」は、
あくまで、「A」というアルファベットをデフォルメしたものに過ぎない。
そして、書体をベースにしたロゴマークに対しては冷淡、
というのが裁判所の判断の傾向である。


最高裁まで行った「ゴナ書体」事件*2などは、
あくまで実用書体に関する事例なので、
本件とは事案を異にするということになるかもしれない。


だが、アサヒビールの「Asahi」ロゴとそっくりな「Asax」というロゴにつき、
著作権侵害を否定した判例もある*3


「あゆマーク」は、単なる文字としての機能を離れ、
一定の美的特性を備えているロゴマークであることは確かだが、
それでも、所詮「Ayumi」の「A」じゃん?、といってしまえばそれまでの話で、
「文字」としての機能を完全に失っているかといえば、それは疑わしい。


だとすれば、著作物としての「類似性」が認められる範囲も、
自ずから狭く解さざるを得ないのではないか、と思う。
ユニークな「目」を付けるなど、
元の作品に一定のアレンジを加えている本件においては、
著作権侵害が否定される可能性は高い。


あと、「のまタコ」は典型的な商標のポリューション(汚染)事例なので、
権利者側としては、商標権や不正競争防止法2条1項2号を盾に、
止めたいところだろうが、
これまた「あゆマーク」が、
「A」をベースとした商標ないし営業等表示に過ぎないことから、
その権利がどこまで及ぶかは疑問の残るところである*4


気楽な外野の人間としては、
いっそのこと裁判所に争いが持ち込まれたら面白い、
などと不謹慎なことを考えたりもしている*5
地裁で負けたら、
高裁でフェアユースの抗弁だのパロディ抗弁だのを出してみる手もある。


今回の騒動がどのあたりで落ち着くのかは今のところ予測不能だが、
多くの人が著作権だの商標権だのに目を向ける
良いきっかけになったことは確かである。


日頃からとやかく著作権にうるさいレコード会社の
「地道な」啓発活動が実ったということで、
勇気ある担当者の行動は賞賛に値する(笑)。

*1:なお、AAが「誰でも自由に使える」ものとなっていることは、AAの著作物性を否定するものではない。それは単に不特定多数の「著作権者」が、想定される利用行為の範囲内で黙示の許諾を与えている、ということを意味しているに過ぎず、「暗黙のルール」を破って利用行為を行った者に対しては、なお著作権侵害を主張する余地はあると思われる。

*2:最判平成12年9月7日判決。書体の著作物性を否定したもの

*3:東京高判平成8年1月25日

*4:そもそも、「のまタコ」において「あゆマーク」は完全にデザインの一部に組み込まれているから、商標的使用といえるかどうか、という点にも疑念がある。

*5:前にも書いたかもしれないが、自分は日頃から時々そう思いながら仕事をしている不良法務部員である(笑)。

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