トリノ五輪が終わる。
慢性的な寝不足もそろそろ限界にきていただけに、
やっと終わった・・・という感なきにしもあらず、だが。
さて、2週間五輪ネタを細々と続けてきたこのブログだが、
最後のネタは、佐々木明選手(ガーラ湯沢所属)の“悲劇”について。
昨日のエントリーでも書いたとおり、
日本勢初の2人入賞となったアルペン男子回転だが、
エースと目されていた佐々木明選手は、
1回目8位、さらに2回目はスタート直後の3旗門目であっけなく終えた。
1本目が終わった後の佐々木選手のコメントからドラマが始まる。
「陰った時点でやる気がなくなった。下が見えないから、どんなバーン(斜面)かも分からない。」
「2回目はない。もう4年後」*1
記者に「本心であったとしたら、4年後などないに等しい。」
と酷評されたこのコメント。
ドラマの続きは27日の朝刊に載っている。
「佐々木をサポートするサービスマンの伊東裕樹氏らにとっては一番やってほしくない態度。伊東氏は佐々木に「もうやめて帰れ」と怒鳴った。「時間が欲しい」と言い残した佐々木は宿舎で30分間、自転車をこいで頭を冷やし、気持ちを切り替えた。」*2
だが、気合を入れなおして2回目のスタートラインに立った結果は、
上記のとおり・・・。
1回目で8位に付けていながらヤル気をなくしてしまうあたり、
噂どおり、典型的な天才肌タイプなのだろう*3。
同じ競技で、生田康宏選手が2本とも途中コースアウトしながら、
“戻って”最後まで滑り降りてきた(結果47位)のとはあまりに対照的な姿。
日本では、得てして、愚直で諦めの悪い「努力家」が寵愛される傾向にある。
気ムラな「天才」は、良いときはもてはやされるが、
一つ悪い方向に歯車が廻れば、次の瞬間には叩かれ、
さもなければ忘れ去られるのみである。
佐々木選手も、帰国後(しばらくはW杯を転戦するのだろうが)、
どんなバッシングを受けるか、今から覚悟しておいたほうがよいだろう。
だが、そんな「天才」も、表彰式を見守るうちに、
「涙が止まらなくなった」という*4。
そういうエピソードを聞くと、
たぶん、諦めの悪い「努力家」も、
ちまちました勝負に対しては淡白に見える「天才」も、
根っこは同じところでつながっている、と感じる。
人一倍勝負に対する思いが強いからこそ、
一方は、それに愚直にこだわり続け、
もう一方は、(無意識のうちに)あきらめた“ふり”をする。
いずれの気持ちも、ただ無難に日々が過ぎ去ることだけ願っている凡人には
到底想像のつかないところにあるはずだ。
だから、自分はどちらの人間も、決して嫌いではない。
そして、願わくば、このトリノの地で散った“天才”たちが、
4年後、愚直な“努力家”たちと再びあいまみえる姿を見てみたい、
と思うのである。
さて、佐々木選手がトリノでドラマを繰り広げていた間、
本来応援に回るべきガーラ湯沢のスタッフたちは何をしていたか。
「新潟県湯沢町のガーラ湯沢スキー場で25日夜、強風でゴンドラが停止、スキー場に取り残された約1450人のうち大部分は、26日午前1時前に運転再開したゴンドラで同3時までにガーラ湯沢駅に到着した。」*5
「ガーラ湯沢」といえば、アクセスこそ良いものの、
立地の悪さゆえ、元々天候に泣かされることが多いスキー場。
だが、よりによってこんな時にゴンドラ止まらなくても・・・(苦笑)。
トリノと湯沢町で同時に起きた“悲劇”*6。
逆宣伝効果としては最高のものがあっただろう。
最後まで“オチ”が付くあたり、
いかにも今大会の日本勢を象徴するような話だとは思うが、
これも4年後に向けた厄落としだと思えば、
そうそう嘆く必要もない。
自分が4年後、どこで五輪を見ているのかは知らないが、
再度、ささやかな願いをこめて・・・。