商標いろいろ(その3)

今回は新聞記事から抜粋。

「samco」と「SUMCO

半導体製造装置のサムコは25日、シリコンウエハー製造のSUMCOに商号や標章の差し止めなどを求め、東京地裁に提訴した。訴えによるとサムコは「samco」の商標で半導体関連装置を製造・販売しており、昨年、SUMCO東証一部に上場したことなどをきっかけに、「同じ半導体関連業界であり、投資家や商品展示会などで混乱が多数発生している」と主張している。」(日経新聞2006年5月26日付朝刊・第13面)

「サムコ」と聞いてピンときた方は、ちょっとした商標法マニアだろうか(笑)。


実はこのSUMCO社、2年ほど前に、
自ら出願した「SUMCO」商標をめぐって、貴重な勝訴判決を勝ち取っている。


東京高判平成16年7月26日(知財第2部・篠原勝美裁判長)*1


特許庁は、「半導体ウエハ」を指定商品として出願された原告商標につき、
「電子応用機械器具」の区分で登録されていた「サームコ」を引用し、
登録を拒絶、そして拒絶査定不服審判をも退けたのであるが、
裁判所は、以下のように述べて、特許庁の審決を覆した。

半導体ウエハと集積回路等の電子応用機械器具とについて,同一又は類似の商標が使用されたときに,半導体ウエハの需要者であるデバイスメーカー等において,それらの商品が同一営業主の製造又は販売に係る商品であると誤認混同されるおそれはないというほかはない。」

特許庁の審査基準において、タンザクレベルでも「同一」とされていた商品間で
「誤認混同のおそれなし」とされたのは極めて稀であり*2
当時はちょっとした注目を集めた判決だったと記憶しているが、
SUMCO社としては、それで一息ついたのも束の間、
今回提訴を受ける形になったのである。

SUMCOは2005年8月に三菱住友シリコンから社名を変更。読み方は公式に定めていないが、サムコ側は10月からSUMCOに「呼称を『スムコ』とすることを申し入れていた」という。」

「スムコ」・・・・。
自分が社員だったら、あまり嬉しくない名前だ*3


SUMCO社側は、今年に入ってからも
大量に自社の「SUMCO」商標を出願しており、
「確信犯」としてガチンコ勝負を挑む気構えのようだ。
先の訴訟で登録を勝ち取ったゆえの自信もあるのだろう。


・・・だが、特許電子図書館で検索すると(称呼検索)、
「サムコ」「第9類」の組み合わせだけで、
SUMCO」の誕生前に多くの先行商標が登録されていたことが分かる。


いかにそれが、
「住友」「三菱」の親会社の頭のアルファベットからいただいた
ありがたい“略称”だったとしても、
自社の社名かつ顔としての“コーポレートブランド”に、
そんなリスクの高い名称を指定する、というのは、
やや不用意だったというべきではないのだろうか。


半導体装置メーカーである原告を相手に戦う今度の戦いは、
SUMCO」側にとってもさすがに厳しいものとなろう*4


被告側に立たされた「SUMCO」が、
最後にどういう落としどころを見つけるか、注目されるところである。

ユニクロ」(笑)

もう一つ、ついでといっては何だが、

ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは25日、今秋に米ニューヨークのソーホー地区に開業する同社最大店舗の店名のロゴに日本語のカタカナ表記を取り入れると発表した。「日本ブランド」のイメージを前面に打ち出す。」(日経新聞2006年5月26日・第15面)

の記事に脱力・・・。


あくまで、アルファベットのロゴとの組み合わせで使うようだが、
掲載されている写真を見ると、
カタカナ部分がいかにも格好悪い・・・*5


先行出店した北米の店舗の売り上げが伸びず、
何とか浮上のきっかけにしたいと思ってのことだとは思うが、
「ニッポンの常識」を打ち破ることで地位を確立したユニクロが、
「日本ブランド」で勝負する、というのはいかにも自己矛盾だし、
そもそも日本国内でのビジネスモデルの優位性さえ揺らいでいる今、
ロゴに少々“日本風味”を加えたところで、
果たしてニューヨークでの厳しい競争を勝ち抜けるのか、
大いなる疑問を感じる・・・。

*1:http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/D1551252902BE59949256F4D00226B41/?OpenDocument

*2:侵害訴訟において非侵害とされるケースや、登録審査時においてその逆のパターンの判断(審査基準上は類似とされていなくても類似商品・役務とされるパターン)がなされることはしばしばあるのだが・・・。

*3:SUMCO社は、実際に「SUMCO」に「スムコ」のルビを振った商標も出願しているが、登録から半年も経たずに放棄している。

*4:もっとも、「samco」側が請求の根拠としている商標が何か、を記事から読み取ることはできないため、それ如何によっては、商品非類似、とされる可能性はあるのだが。

*5:まるで、ハワイや近隣アジア諸国の路地裏で看板を掲げている偽物ショップのようなロゴである・・・。