オーストラリア戦の負け方がよっぽどショックだったのか、
鼻息荒くサムライブルーを応援していたメディアの声も
トーンが下がり気味である。
神様の采配が“神様テイスト”なのは、
別に今に始まった話ではないし、
柳沢がシュートを打たないのも、
中村俊輔のフィジカルに課題があるのも、
ヨシカツの飛び出しが常に危険と隣りあわせなのも、
決して今に始まった話ではない。
それでも、代表選手も監督も、
マイナス面を上回る何かを持っているからこそ、
支持を集めていたのではないのか?
勝ったら無邪気に舞い上がって、
負けたら「そらみたことか」と叩くだけでは、
(あるいは、何もなかったかのように黙殺するのでは)
あまりに進歩がなさ過ぎるではないか。
ホリエもんからシンドラーまで、
この国に根強く残る悪弊は、
スポーツ報道の世界でも変わらないようである*1。
次の日曜日のクロアチア戦。
幸か不幸か、自分はまだ先日のブラジル対クロアチアのビデオを
見ていないのだが、
熱心に見ていた会社の同僚によれば、
「強い、強すぎる。とても勝てる相手じゃない」
という感じだったようだ。
直前の練習試合のグダグダを見て、
「楽勝、楽勝」とのたまわっていたコメンテーターたちも
俄然厳しい口調で、
「○○が機能すれば・・・」
「○○が本来の力を出せば・・・」
と慎重な物言いをするようになってきたし、
「相手の主将が欠場すればチャンス・・・」などと、
他力本願的な香りすら漂うようになっている。
だが、1試合の勝ち負けで、
力関係が決定的に変わるわけではない。
そう思うがゆえに、
自分は次の試合は日本の勝ち、と予想する。
日本代表の中にも強気な人がひとり。
Number654・655・656合併号(2006.7.13号)の中の
中田英寿選手と三浦知良選手の対談の中の
“ヒデ”のコメントである。
Number(ナンバー)905号 地方大会開幕特集 甲子園を夢見る夏。 (Sports Graphic Number(スポーツ・グラフィック ナンバー))
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「僕はクロアチアのほうが、ずいぶんやりやすいかなという気がする。グループリーグで対戦する3カ国だと、正直、クロアチアだけはあまりイメージがないんですよ。実際に98年のW杯以降は対戦してないし、話を聞いたなかでは、予選ではディフェンスがすごく良くて、あまり失点をしなかったこと。だけど「こういう特徴がある」っていうのは聞いたことがないし、昔は有名な選手がいたけど、いまはそれほどでも。」
「日本としては、3カ国のなかでは一番やりやすいかなと。そこで負けることがあったら、ちょっと厳しいと思いますけどね。」
(戸塚啓「特別対談・魂をドイツへ。」22頁。)
正直、「次こそは勝たねば」という
追い詰められたプレッシャーの中、悠然と結果が出せるチームは、
世界中を探し回ってもそうそうあるものではないし、
それに輪をかけるように、ここに来て“システム論”が
再燃している落ち着きのなさも、大いなる不安材料となっている。
ヒデのコメントを“無知ゆえの強気”と片付けるのも簡単な話だ。
だが、“輝ける日本のパイオニア”中田英寿がそういうならば、
信じてやろうじゃないか。騙されてみようじゃないか。
月曜日に東洋の島国の人々が味わった“落胆”は、
故郷の英雄に思いを託したウクライナ国民が味わった“絶望”や、
フランス人が味わい続ける“憂鬱”に比べれば、
小さな、小さなものに過ぎないのである。
自国の代表を卑下するには、まだ早い。
*1:もっとも、どこの国でもサッカーの代表チームだの監督だのが、勝てば誉めそやされ、負ければ叩かれる、という状況には変わりはないようで、日本の“特情”というにははばかられる面もあるのかもしれない。ある種、これは“マスメディア”というものがこの世に存在する限り避けられない(そして、報道を盲信する人々がいる限り不可避的な)事象というべきなのかもしれない。