キャラクタービジネスの混迷

日経新聞のコラム『ランキングが語る消費』に掲載されていた
キャラクタービジネスに関する記事が興味深い*1

「民間調査会社のキャラクター・データバンク(東京・港)が調べた、キャラクター商品販売額で2005年まで4年連続1位を獲得したのは、くまのプーさん。しかしシェアは6.72%と前年より3.34ポイント減。1位のシェアが10%に満たなかったのは、01年の調査開始以来初めてだ。」

このランキングの上位には、
ハローキティ(6.09%)、ミッキーマウス(5.06%)、
それいけ!アンパンマン(4.89%)、ポケットモンスター(4.05%)
といった名だたる有名キャラクターが並ぶが、
これらの上位キャラクターは軒並みシェアを下降させている*2


そこでその原因というのが当然気になるわけだが、
コラムの中では、シェア低下の原因として次のような理由が
挙げられている。

「ディズニーストアは商業施設に店舗を広げ、ゲームセンターや百円ショップで扱う安価な商品も増えた。誰でも簡単に購入できる気軽さが、逆に希少性を薄めた。「販路を広げすぎてブランド価値を損ねた」(オリエンタルランド幹部)」

確かに、自分自身、
100円ショップに並ぶディズニーグッズを見て
軽い衝撃を受けたことがある*3


オリエンタルランド幹部」氏が自認するように、
いくら莫大なロット数になるからといって、
利幅が薄く、かつブランドとしての価値にも悪影響を与えかねない
廉価品市場にまでキャラクターの販路を広げる、
というのは、一種の自殺行為というほかない。


元々素材自体の権利性が弱く、
海賊品が容易に登場しかねないものであれば、
不利な条件でもあえて商品化契約をして、
“キャラクター”としての地位を既成事実化する、
といった戦略をとる必要性も出てくるだろうが、
著作権」によって海賊品を封じることができる
一般的なキャラクターの世界でそこまでする必要もないはずだ。


キャラクタービジネスの世界では、
とにかく売れるキャラクターで稼げる時に稼ごう、と考える
ライセンシー側の論理と、
自らのキャラクターのブランド価値を
できる限り長持ちさせたいと願うライセンサー側の論理が
とかく対立しがちなのであるが、
上記のようなキャラクターの“失速”の有様から、
ライセンサー側の“寛容さ”ゆえに、
ライセンシー主導でキャラクタービジネスが進められている実態が
透けて見えてきているような気もする。


ライセンサーの側としては、
少しでも多くの人に自分達のキャラクターを使ってもらえれば、
それで満足、という感情も少なからずあるのかもしれない*4


だが、単に「夢を与える」という思想だけでは
ビジネスは成り立たない。


コンテンツビジネスで世界に打って出よう、という
政府の意気込みだけが強調される時代ではあるが、
権利だけをいかに強化したとしても、
そこにビジネスとしての戦略が伴わなければ、
全ては空振りに終わってしまうだろう。


本コラムで取り上げられている国内市場の“異変”は、
そのことを暗に示しているように思えてならない。


(追記)
なお、上記記事に関連して、
以前取り上げたポケモンシール事件も一つの参考になる
と思われるので、以下ご参考までに。
http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20060225/1140844023

*1:日経新聞2006年8月8日付朝刊第11面。

*2:逆にシェアを上げているのは、流行りもの系のプリキュア(+1.89%)やリラックマ(+2.30%)など。

*3:最近では、他にも、特定のアニメキャラ付きの商品が恒常的に店頭に並ぶようになってきている。

*4:特に担当者のレベルではその傾向が強いのではないかと思う。

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