オシム風語録

もし、自分の会社にユーモアを交えて含蓄のある言葉を発する
イビチャ・オシムのような上司がいたらどんなに痛快なことか、
と思っている方は少なくないことだろう。


そんな皆様に送る夏の夜の夢・・・。



筆者の友人が勤める株式会社市原工業は、
古くから続く名門企業であるが、
経営環境の悪化に伴い、近年業績がガタ落ち、
現在社内ではリストラの嵐が吹き荒れている。


そんな中、一人気を吐く人物、揖斐茶氏。


社内の権力闘争に巻き込まれ、長年不遇をかこってきたが、
定年間際でようやくポストにありついた窓際の法務部長。
社内での評価は分かれるが、
彼の一言一言が、一筋縄ではいかない味わい深さを秘めているのは
間違いない。


以下に取り上げるのは、
そんな彼の一風変わった名言集である。

企業法務編

今日一番良かったことは、
当社にとって明らかに不利なスキームが、
取り返しが付かないほど煮詰まっていたことが分かったことだ。
これで私の部下に無駄な仕事をやらせずに済むし、
おかげで残業代のコストも削減できる。
こんなに素晴らしいことはない。
(大手外資系X社との契約交渉同席後に感想を問われて。)

裁判管轄がどこになろうが、
訴訟が起きなければ関係ない、と皆さんは思うでしょう。
だが、紛争の種は常にどこかにあります。
そして(第一審の専属的合意管轄裁判所が)東京になるか、
それとも大阪になるかは、
米国資本のバーガーショップをマックと呼ぶかマクドと呼ぶか、
ということ以上に、時に深遠な問題をはらんでいるのです。
(「些細なところにこだわらずにさっさと契約を承認してくれ」とせっつく営業担当者に向かって。)

世の中には東洋と西洋の契約風土の違い、
などというものをやたらと指摘したがる者がいるが、
まず自分達の足元を見よ、と言いたい。
営業部門と法務部門の間にある契約意識の溝に比べれば、
風土の違いなど些細なことに過ぎない、
ということがすぐに分かるはずだ。
(某事業の海外進出をめぐる役員会議の席上で発言を求められて。)

その他お仕事編

「協調」とは仕事をするための手段に過ぎず、
「協調」するために仕事をするわけではありません。
皆さんは、いつも和気藹々とスタッフが談笑しているが、
大工が不器用で、一向に仕事が進まない工務店に、
一生に一度のマイホームの施工を依頼したいと思いますか?
要するに、「チームワーク」や「協調性」といったものよりも、
仕事をする上ではもっと重要なことがあるということです。
会社はそのために金と労力を惜しまずに注ぐべきです。
(「人の和」を力説する社長挨拶に対する感想を問われて。)

「他の会社がやっているから」という理由で
新しい施策を取り入れようとすることに、
根本的な哲学を欠くゆえの浅薄さがあることは否めないが、
「他の会社がやっているから」という声に一切耳を傾けることなく、
その提案を退けるのはもっと愚かなことだ。
(会議にて提案が却下された部下への慰めの言葉として。)

ミスター島は素晴らしいね。私も愛読している。
だが、彼の素晴らしい活躍は劇画の中の出来事でしかない。
私は島耕作にはなれないし、私の部下にも島耕作はいない。
人間というのは、もっと無骨で、感情的で、
時に求められる理性と本能が逆転する動物だ。
そして、だからこそ愛すべき存在なのだ。
(上司との面談の席上、必達目標をクリアできなかったことについての管理責任を問われて。)


なお、言うまでもないことであるが、
このエントリーはフィクションであり、
実在する企業、人物及び本物の「オシム語録」とは
何ら関係がないことを最後に申し添えたい。

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