東京都知事選に浅野史郎・前宮城県知事が出馬することが決まったらしい。
「慎太郎には投票したくないが、他にまともな候補者がいない」と嘆いていた方々には朗報だろうが、筆者自身は、正式出馬表明に至るまでの浅野氏ご自身の言動の胡散臭さに加え、氏の不自然な頭髪にどうしても好感を抱けないためw、今回もテレビ桟敷でぼんやり眺めているだけで終わりそうである。
そもそも、都知事選に限らず、「選挙」ほどいかがわしいものはない。
業界団体や特定宗教団体の票を当て込んだ保守陣営の選挙が良く槍玉に挙げられるが、労組だの市民団体だのが支援している反対陣営の選挙だって、実に怪しいものだ。
野党系の議員の中には、「私の選挙はいつもクリーン」などとのたまわっている方々も多いが、それは大企業の労組が罪のない若い組合員に「動員」という名のただ働きをさせて、当の候補者を神輿の上に載せているからこそ成り立つ話なのであって、ただ働きさせられる側にしてみれば、迷惑なことこの上ない。
例えば、大きな選挙の前になると、「知り合いを紹介してください」という紙がノルマ付きで回ってくる。
職場の人間関係もあるから無下に断るわけにもいかないが、さりとて親戚友人に候補者の宣伝をする気にもなれない。ゆえに、黄泉の国から死んだ爺さん婆さんを手繰り寄せて、“水増し”したリストを提出するしかない。
それだけで済めばまだ良いほうで、組合のお偉いさんがおだてられて調子に乗ってしまうと、やれ電話がけだの、ビラまきだの気前良く号令を発してくれるから、せっかくの休みが台無しだ。
そこまでやらせるなら、ちゃんと手間賃くらいは払え!とグチの一つも言いたくなるもので、その意味で公職選挙法なんてものは悪法以外の何ものでもないと思っている*1。
もっとも、これは組合員を卒業した会社の管理職とて同じこと。昔、選挙前に、上司が「公職選挙法Q&A」を片手にもちながら、“長いトイレ休憩”に入っていたことがよくあったが*2、会社によっては、管理職以上が自動的に給料から“自由で民主な”某政党の党費を(事実上)天引きされているなんてこともあるようだから、五十歩百歩といえる。
与野党入り乱れた激しい選挙戦になると、組合役員の頼みで野党候補者の支持者名簿に名前を連ね、上司の頼みで与党候補者の名簿に名前を連ね、どっちも「これで組織票○○票固めた」なんてことをやっているから、それはそれで見ているだけで滑稽で、双方の陣営が右往左往しているサマは、退屈な日常に良い癒しを与えてくれるし、「独自取材」により、上記のようないい加減な票読みをベースに当落予想をしてしまうメディア、という輪をかけて滑稽な存在のおかげで、より面白いレクリエーションになっていることは否定しないが、そんなシュールな面白さのためだけに、貴重な時間を割くのは、いかにも無駄というほかはない。
まぁ、先般、「残業代ゼロ法案」にあれだけ反対した先生方のことだから、仕事が終わったその後に「動員」に駆り出されるサラリーマン組合員たちに「給与」を払わないなんてイケズなことは言うはずがない*3、と信じて、筆者は黄泉の国との交信にいそしむとしよう*4。
*1:結局、組織がバックに付かなければまともに活動できない仕組みになっている以上、金銭の授受だけ禁止しても何の意味もないのであって、“ボランティア”扱いされる人々の福利厚生面からすれば、むしろ積極的に候補者に金を使わせるべきだと思う。
*2:何のことはない。別室で支援者への電話入れをしていただけだった。
*3:それで公職選挙法で捕まろうがなんだろうが、筆者の知った話ではない。
*4:なお、筆者の知り合いでこの先数ヶ月の間に、よく知らない政治家から電話やらレターやらが届いた人がいたとしたら、それは間違いなく筆者の仕業である。煮ようが焼こうが、ストーカー対策法に則って活動員を警察に突き出そうが自由なので、平にご容赦のほどお願いしたい・・・。