“裏金問題”さらに拡大

マチュア二選手への現金供与をめぐって、西武球団の調査委員会が行った中間報告。


以前、この問題を取り上げた際*1にボソッともらした筆者の願望空しく、事件はさらに拡大していく様相を呈している。

プロ野球の西武球団がアマチュア二選手に不正に現金を供与していた問題で、西武の調査委員会(委員長=池井優慶大名誉教授)は4日、中間報告をまとめ、高校・大学の指導者らアマチュア野球関係者延べ170人に最高1000万円の謝礼を渡していたことを明らかにした。また、これまで明らかになった二選手以外の五選手にも契約前に約6160万円を支払っていたことが分かった。選手らの氏名は公表していない。」(2007年4月5日付け朝刊・第1面)

以前“情報隠し”、“コンプライアンス体制不備”と叩かれた西武グループのこと、当時の反省を踏まえて、過去に遡って膿を全て出し切ろうとする姿勢には率直に共感することができる。


2005年6月の「倫理行動宣言」以前の情報についても問題視したこと(しかも他球団も同様の行為を行っていたことを示唆したこと)について、一部関係者からは批判も出ているようだが、アマチュア野球界の根本規範である「日本学生野球憲章」の内容自体は、「宣言」以前からほとんど変わっていないのであって、上のような批判は本質的なものとはいえないだろう。


既に問題にされている選手への現金供与に加え、監督・コーチ等への利益供与も、「日本学生野球憲章」の

第14条 選手又は部員は、コーチ、審判その他これに準ずる行為をするに際し、これらに当然に必要な旅費、宿泊費、その他の経費以外の金品の支給、若しくは貸与を受け、又はその他の利益を受けることができない。

に明白に抵触する。


それゆえ、根本規範を形式的に当てはめれば、球界はルール違反が横行する(あるいは「していた」)とんでもない業界、ということになり、それ自体断罪されねばならない、ということになる。


・・・だが、である。


そもそも、金銭の授受を絶対的に禁止する憲章のルール設定自体が、そもそも妥当なものといえるのだろうか?


能力のない選手やコーチが、「カネで自らのポジションを奪う(守る)」(あるいはカネがないために、才能がある選手が埋もれていく)ことは、スポーツ競技そのものの本質にかかわる問題といえるだろうが、能力のある選手やコーチに、それに見合った「対価」を支払うことは、スポーツそのものの本質を歪める行為とはいえないはずだ*2


欧州の特権階級の閉鎖的体質の象徴であった「アマチュアリズム」が、五輪という最高峰の舞台においてさえ、もはや放棄されつつある今、「カネ」の問題に一々目くじらを立てる必要があるのか、という素朴な疑問がここにはある。


この国には、自分自身が日々小ガネに執着する生活を送っているにもかかわらず、他人が大金をもらうことに対しては妬み、やっかみを如実に表明する人が多い*3


そして、今回の一連の騒動も、そういった妬み、やっかみを燃料として大きな炎となって燃え上がっているように見える。


だが、そんなチマチマした発想で、球界にダーティなイメージを植え付け、将来ある選手の道を閉ざすのは、それこそ世の中にとって大きな損失だと思う。


前時代的ルールに必要以上に執着するより、「能力のある者はアマチュアだろうがプロだろうが、それに見合った見返りを受けることができる」という思想を根底に、新しいルールを設ける方がよほど前向きな発想だ、と思ってしまうのは、果たして筆者だけだろうか・・・?

*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20070316/1174154244#tb

*2:しかも、その「能力」は単に生まれながらの才能だけで担保されているものではなく、日々真摯に練習に励み、技量を磨いたゆえに得られたものであろう。

*3:議員宿舎の問題などはまさにその典型だ。

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