権利紛争から利益紛争へ。

今日の日経新聞に掲載された不自然な(笑)記事*1

「ヤフーは自社の動画共有サイトへの投稿映像で使われる音楽について、著作権使用料を日本音楽著作権協会JASRAC)に支払うことで合意した。ヤフーが支払いを肩代わりすることで、利用者は個人の楽曲演奏シーンがある動画を合法的に投稿できるようになる。違法投稿による著作権侵害が問題となる中、ネット最大手のヤフーは権利者と共同で投稿ルールの整備に踏み出す」(日本経済新聞2007年7月24日付朝刊・第11面)

元々、著作権保護については相当意識していた「ヤフー!ビデオキャスト」。
サービス開始時には↓のようなプレスリリースも出されている。
http://pr.yahoo.co.jp/release/2007/0412a.html


それゆえ、こういった方向に流れていくことは大体想像が付いたし、驚きがあるとすれば、ヤフーが正規の権利処理を図ったことではなく、あたかもJASRACがあっさりとそれに応じたかのように見えてしまうことのほうである。


実際には、動画サイト上での音楽の使用に対してどの程度の対価を支払うのか、条件面でもめる部分も残されているのではないかと推察するが、いずれにせよ、この種のサイトでの第三者の音楽使用の問題が、「権利紛争」というフェーズから「利益紛争」のフェーズへと移行したのであれば、それは素直に評価すべきことだろう。


労働問題の例を見るまでもなく、いつ決着するか分からない「権利紛争」より、金額の高低にさえ拘らなければある程度落としどころが見える「利益紛争」の方が、交渉に臨む側としては遥かに楽なのは言うまでもないわけで。


少々金額でもめても、今回やフーがJASRACとの間で一定の合意に達したということになれば、多くの会社がこれに追随し、いずれ形成されるであろう「対価」の相場にあわせさえすれば、淡々と著作物を利用した動画の多くをサイトで提供できる、ということになるはずだ。



もちろん、JASRACがカバーできるのは、著作財産権の部分だけなので、既存の楽曲を改変して動画の素材としたような場合には、著作者人格権の問題が別途生じうることになる。


少なくとも、以前、外山某氏の政見放送に、BGMをかぶせて揶揄していたような行為は、新しいルールの下でも通用しない可能性は高いだろう。


だが、そういった不安定な状況が残るとしても、権利者・ユーザーの双方が噛み合わない議論を続ける無秩序な状況から脱却するための第一歩としては、上記のような「合意」には大きな意義があるように思われる。


今後の展開に注目したい。

*1:どの筋から出てきた情報だ?w

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