「包括的利用許諾契約」は悪か?

ちょうど1年ほど前にも話題にしていたネタだが*1、ついに公取委が強権発動に向けて動き出したようだ。

「テレビ局など放送事業者向け音楽の著作権管理事業を巡り、同業他社の新規参入を阻害しているとして、公正取引委員会は24日、日本音楽著作権協会JASRAC)に対し、独占禁止法違反(私的独占)で近く排除措置命令を出す方針を固めた。」(日本経済新聞2009年2月25日付朝刊・第38面)

「別にうちは曲を使うな、なんて言ってないですよ。契約してカネさえ払ってくれればいいんですよ」

的なJASRACのスタンスを筆者が好いていないのは、本ブログの読者の方であれば元よりご承知のことと思うが、それでも本件に関しては公取委の強硬姿勢に首を傾げたくなるところが多々あるわけで・・・。


何でもかんでも競争させれば良い、ってものではない、というのは以前にも書いたとおり。


JASRACのような団体は、あくまで「管理事業者」に過ぎないのだから、「権利者に利益を配分する」という事業の本旨に従おうとすれば、仮にこの市場で競争が行われるようになったとしても、利用料対価の設定がさほど柔軟にできるようになるとは思えない。


それに、仮に利用料自体が下がったとしても、複数の団体が乱立するようなことになれば、「許諾をもらうためにかける有形無形のコスト」が格段に増大することになりかねない。


元をただせば、そもそも「権利集中」のための団体が、同業種内で複数存在しうることを認めるルールにした時点で、こういう問題が生じることは分かっていたはずで、それでもなおそういうルールを選択した以上は、甘受すべき問題、なのかもしれないが、それでもやはり不可解という思いはどうしても残ってしまうのである。


できることならJASRACには徹底的に命令の妥当性を争ってほしいものだと思うのであるが・・・・。


(追記)
27日に公取委が排除措置命令を出した。


JASRACは、

「排除措置命令を不服として審判請求するとしたうえで「公取委の意見を参考に契約方法の見直しを進める」

というスタンスのようで、何だか中途半端なようにも見えるが、それでも一応争う姿勢を見せてくれたのは、個人的には有難い話だと思う。

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