ボツネタでも落合弁護士のブログでも紹介されている朝日新聞の記事。
(http://www.asahi.com/business/topics/TKY200710100010.html)
善解すれば、現在の企業における「法務部」の役割が一応高く評価されているように読めなくもないし、いわゆる“朝日クオリティ”は今に始まったことではないから*1、いつもならさくっとスルーしてしまうのであるが、個人的にミクロな2007年問題に直面しつつある今日この頃、心にどこか引っかかるものがある。
「企業の法務部門」と聞いて何を思い浮かべますか。契約書式のチェック? 特許の登録事務? 確かにそれも法務部門の仕事ですが、最近は中身も陣容も大きく変わりつつあります。
この記事で強調されているのは、買収防衛策や金融商品取引法、知的財産といった、いまどきの華やかに見えるトピック。
だが、そういった上っ面だけ取り上げるだけで、法務部というフィールドの本質を伝えることができるのだろうか。
「それも・・・仕事」です、と片付けられてしまっている「契約書式のチェック」は、今も昔も法務部の主力業務だし、この先もそうあり続けることだろう。
なぜなら、一通の契約書には、その会社が営むビジネスのあらゆる要素が詰まっているからであり、その面倒を見る、ということは、すなわち会社そのものをフォローすることに等しいからだ。
株主総会の前後にふらっと話題になるだけの「買収防衛策」なんぞとは、仕事としての面白さも奥行きも全く異なる。
また、ここでは紹介すらされていないが、顧客のクレーム対応や、細々とした不法行為への対応だって、立派な仕事だろう。
弁護士の“肩書”が一番威力を発揮するのもこの分野だし、実務レベルの人間が社外からやってくる“専門家”に何か期待するものを挙げるとすれば、このあたりになる。
企業と法曹業界とのミスマッチを指摘する記事において、そんなミスマッチをさらに加速させるような記事を載せてしまうのはどうか・・・。
と自分は思うのである。
なお、弁護士と一般の法務担当者の違いは、
弁護士の先生方(特に大企業とお付き合いされている弁護士)が、レフェリーのいるリング上で、8オンスのグローブを嵌めてルールに則ったスポーツとしての殴り合いをしているのに対し、企業内の法務担当者は、日の当たらない路地裏で、どっから来るか&どんだけいるか&敵か味方かも分からない者どもと相対峙して集団ストリートファイトをやっている*2
とでも説明すれば分かりやすい。
どちらも、自分たちが守るべきものを守りきれれば勝ち*3、という点で共通しているものの、細かいところでは求められる能力が異なる、というのは誰にでも分かることだろう。
社内弁護士になる、ということは、後者のストリートファイトに助っ人として参入する、ということに他ならないし、そういった役回りに徹し切れなければ、「社内弁護士」たるポストは機能しない。
知識や能力だけでは勤まらないし、ギラギラと浮ついた野心は却って邪魔になる・・・そういう世界なのだと思う。
企業側も、法曹界も、そういったところに思いを馳せれば、ミスマッチは自然に解消されていくと思うのだが・・・。
この話題については、気が向いたらまた、追って書くことにしたい。