看板は変わっても揺るがぬ玉座。

年末のお約束、というか恒例行事となっている日経紙法務面の「弁護士ランキング」。

昨年まで16回の伝統を積み重ねてきたのだが*1、今年は法務面が「法税務面」に変わった影響もあってか、タイトルも『企業法務税務・弁護士調査』と長くなり、回数もリセット。

個人的には、今年の5月に伝統の「法務」面が「法税務」面になったこと自体が、近年の企業における”法務”の地盤沈下を象徴するような気がして憂鬱な気分になったものだが、毀誉褒貶あっても続いてきた伝統の調査の回数までリセットされてしまう、となると、日本企業において15年間寄せられ続けてきた法務への期待はいったいなんだったのか・・・という思いにすら駆られてしまう。

とはいえ、変わらなかったもの。

日本経済新聞社が実施した2021年の「企業法務税務・弁護士調査」で、同年に活躍した弁護士を企業の法務担当者と国内の有力な企業弁護士に聞いた。税務分野では訴訟に強い弁護士に票が集まり、平川雄士弁護士が首位になった。危機管理分野のトップは木目田裕弁護士、企業法務全般では中村直人弁護士が10年連続で首位だった。不正調査や再発防止の対応などを求める企業が多く、危機管理のノウハウを持つ弁護士の需要が高まった。」(日本経済新聞電子版2021年12月20日2時配信、強調筆者、以下同じ。)

20日朝刊の紙面*2を見ると昨年同様、見出しになっているのは「税務」だったり「危機管理」のランキングだったりもするのだが、伝統のランキング、ということでいえば、「企業法務」こそがこの企画の真骨頂。

そして、頂点に立ったのは、今年も中村直人弁護士だった。

<企業法務>
1.中村直人(中村・角田・松本)27票
2.太田洋(西村あさひ)26票
3.倉橋雄作(中村・角田・松本)17票
4.沢口実(森・浜田松本)15票
4.柳田一宏(柳田国際)15票

これで、ベストジーニストなら2回殿堂に入れる「10連覇」

「年間のAwardなんだから今年の実績で」といった声も聞こえてこなくはないのだが、”打ち上げ花火”のような実績より安定したクライアントコミュニケーションが重視されるべきなのがこの世界だと思っているので、そういった視点で見れば、毎年変わり映えしないこの結果にも何ら異論はないし、”票集め”的なアクションとは無縁のところで君臨し続ける弁護士がトップを守り続けているからこそ、このランキングの威厳も辛うじて保たれているのではないかと思うところである。

なお、月曜日に法務面にランキングが掲載されてから、しばらくエントリーのアップを引っ張ったのは、今年の企画では五月雨的に他のランキングも公表される、という仕掛けになっていたからなのだが*3、第2弾の「企業が選ぶ法律事務所ランキング」を見て、もういいかな・・・と思ったところはある。

個々の弁護士ではなく事務所単位で評価をするためには、一度二度は実際に案件を依頼してみないと話にならないと思うのだが、今回ランキング上位に来ている事務所全てにコンスタントに依頼している会社なんてそうあるはずもなく・・・*4

今回の結果を見る限り、ワン・ツーとなった西村あさひと森・濱田松本は、クライアントのアカウント数は多いのだろうな、ということはわかるのだが、項目として挙げられている「弁護士の知識や実務経験の豊富さ」や「対応が迅速」といった評価が何と比較してのものなのか、ということは冷静に見た方がよいような気がする*5

ということで、来年が「第2回」の「企業法務税務・弁護士調査」になるのか、それとも「企業法務税務経済安保・弁護士調査」的な、より「法務」が埋没した感じの調査になるのかは分からないが、この手の企画は、紅白歌合戦同様、”いじられるうちが花”だと思うので、関係の方々には来年に向けたさらなる企画のブラッシュアップを期待したいところである。

*1:昨年のエントリーは不思議な見出し。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~

*2:20201年12月20日付朝刊・第17面。

*3:「活躍した弁護士」「頼れる法律事務所」ランキング2021: 日本経済新聞参照。

*4:自分がかつていた環境でも、「4大」のうち2つには比較的コンスタントに依頼をしていたが、その他2つのうち1つは直近10年では「敵方」での対戦経験しかなく、もう1つは個人的な友人は多いけど仕事は頼んだことはない、という感じだった。

*5:個人的には「事務所」でランキングを付けるのであれば、「実際に依頼した会社の満足度」も評価ポイントに入れた方がよいのではないかな、と思っている。

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