これは「著作権」の問題なのか?

TBSが米ABCを提訴したそうである。

「TBSは7日、米国の人気テレビ番組「ワイプアウト」がTBSの著作権を侵害したとして、同番組を放送する米ABCをカリフォルニア連邦地裁に提訴したと発表した。」
ワイプアウトは一般視聴者が屋外アトラクションに挑戦する人気番組で、ABCが6-9月に放送した。TBSによると、番組コンセプトや演出方法がTBSが著作権を持つ「風雲!たけし城」「SASUKE」「KUNOICHI」に酷似しているという。TBSは同日、「大きな憤りを感じている」とのコメントを出した。」
日本経済新聞2008年10月8日付朝刊・第12面)

著作権ビジネス守る」という見出しで紹介されているこのニュースだが、果たしてこれは著作権侵害の問題たりえるのだろうか?という素朴な疑問は残る。


米ABCの「Wipeout」の紹介ページは、http://abc.go.com/primetime/wipeout/index?pn=aboutで、流れている動画を見ると、「SASUKE」あたりが一番近いのかなぁ・・・と思うのだが、小道具の設定などは微妙に違うし、ナビゲーターのセリフなどもおそらく米国オリジナルであることを考えると、共通しているのは「アトラクションに視聴者が挑戦する」というコンセプトだけ、ということになる*1


そして、少なくとも日本のルールで言えば、著作権が保護するのは「創作的な表現」だけだから、コンセプトが共通していても具体的な表現が異なれば、著作権侵害は成立しないのが原則となろう。


また、ABCの番組での表現から原著作物(TBSの番組)の表現が感得できるようであれば、翻案権侵害が成立する可能性もあるが、この種の“サバイバルアトラクション企画”からTBSの創作的表現を感得できるか、と言えるかについては、何ともいえないところである*2


依拠性があるのは否定できないだろうし、訴訟があくまで米国で行われていることを考えると、適用法も含めて最終的な侵害判断がどう変わってくるかは分からないのだが、

「真似たが盗んではいない」

的な抗弁が成り立つ余地はあるんじゃないかなぁ・・・と何となく思っている。


記事の中では、「番組フォーマットの国外販売」というビジネスモデルとの絡みも論じられているが、「番組フォーマット」=「(純粋な意味での)著作権」ではない、というのは業界関係者ならみな分かっているはずで、それゆえ、TBSがどこまで勝算をもって今回の訴訟に臨んでいるのか、興味深いところではあるのだが・・・。


今後の展開に期待したい。

*1:もしかすると、アメリカ版「谷隊長」とか「働いたら負けだと思っている」挑戦者だとかが出てくるのかもしれないがw。

*2:この辺は、演出全体を見ないと何ともいえないところはあるが・・・。

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