最高裁判例アーカイブ(H21.4.1〜H21.4.17)

あくまで自分の心覚え、用ではあるが、簡単にまとめてみた。

最二小判平成21年4月17日*1・住民票不記載処分取消等請求事件*2

「嫡出子又は嫡出でない子」の記載欄を空欄にし、かつ届出義務者ではない子の父を届出人として提出された出席届が不受理となった後に、上告人父母が子を住民票に記載するよう区長に求めたところ、記載しない旨の応答があったため、提訴したもの。


一審では、区長に上告人子に係る住民票の作成を命ずる判決を言い渡したこともあって、注目されていた事案であった。


結論:一部破棄自判、一部上告棄却


意見:今井功判事


→ 追ってコメント予定

最二小判平成21年4月17日*3約束手形金,不当利得返還等請求事件*4

訴外A社が、有していた唯一の財産である過払金返還請求権を上告人Y1に取締役会決議を経ることなく譲渡したこと(Y1はAの事情につき悪意)は有効か、というのが、もっとも主要な争点になっている事件である。


結論:上告人Y1の敗訴部分について破棄差戻(Y2の敗訴部分について破棄自判)

「株式会社の代表取締役が取締役会の決議を経ないで重要な業務執行に該当する取引をした場合,取締役会の決議を経ていないことを理由とする同取引の無効は,原則として会社のみが主張することができ,会社以外の者は,当該会社の取締役会が上記無効を主張する旨の決議をしているなどの特段の事情がない限り,これを主張することはできないと解するのが相当である。」
「これを本件についてみるに,前記事実関係によれば,本件債権譲渡はAの重要な財産の処分に該当するが,Aの取締役会が本件債権譲渡の無効を主張する旨の決議をしているなどの特段の事情はうかがわれない。そうすると,本件債権譲渡の対象とされた本件過払金返還請求権の債務者である被上告人は,上告人Y1に対し,Aの取締役会の決議を経ていないことを理由とする本件債権譲渡の無効を主張することはできないというべきである。」

この辺はいかにも試験に出てきそうな(笑)判旨である。


本人側が無効の主張をしていなければ、第三者がそれを主張することも認められない、という考え方は、他の意思表示の瑕疵類型でも見かけるところだから、結論自体にそんなに違和感はないのであるが、これまでどういう議論がされていたのか、は一度見ておく価値があるのかもしれない。

最二小判平成21年4月17日*5株主総会等決議不存在確認請求事件*6

被上告人会社を解任された取締役(上告人)が、解任及び新取締役選任を内容とする株主総会決議及び新たに選任された取締役らによって開催された取締役会における代表取締役選任決議の不存在確認を求めた事案で、第1審係属中に被上告人が破産手続開始の決定を受けた場合に、訴えの利益が認められるか、が争点となった。


結論:破棄差戻

民法653条は,委任者が破産手続開始の決定を受けたことを委任の終了事由として規定するが,これは,破産手続開始により委任者が自らすることができなくなった財産の管理又は処分に関する行為は,受任者もまたこれをすることができないため,委任者の財産に関する行為を内容とする通常の委任は目的を達し得ず終了することによるものと解される。会社が破産手続開始の決定を受けた場合,破産財団についての管理処分権限は破産管財人に帰属するが,役員の選任又は解任のような破産財団に関する管理処分権限と無関係な会社組織に係る行為等は,破産管財人の権限に属するものではなく,破産者たる会社が自ら行うことができるというべきである。そうすると,同条の趣旨に照らし,会社につき破産手続開始の決定がされても直ちには会社と取締役又は監査役との委任関係は終了するものではないから,破産手続開始当時の取締役らは,破産手続開始によりその地位を当然には失わず,会社組織に係る行為等については取締役らとしての権限を行使し得ると解するのが相当である(最高裁平成12年(受)第56号同16年6月10日第一小法廷判決・民集58巻5号1178頁参照)*7。」
「したがって,株式会社の取締役又は監査役の解任又は選任を内容とする株主総会決議不存在確認の訴えの係属中に当該株式会社が破産手続開始の決定を受けても,上記訴訟についての訴えの利益は当然には消滅しないと解すべきである。」

上記判決が引用している最一小判平成16年6月10日の事案は、

「破産した有限会社の代表取締役が自ら火災保険がかかっていた建物に放火した場合に、「取締役の故意による事故招致」として保険会社の免責条項に基づく免責の主張が認められるか」

というのが争点になっていた事案だったため、「破産会社であっても取締役は取締役」という論旨をすんなりと受け入れやすかったのだが、本判決は、その射程を会社関係訴訟の「訴えの利益」の有無、という問題にまで広げた・・・? という点で興味深いものがある。


破産管財人の現実的な守備範囲等を考えると、実務的にはそんなに違和感はないようにも思えるのだが。

最三小判平成21年4月14日*8・強制わいせつ被告事件*9

いわゆる「痴漢冤罪」事件の大逆転判決である。


結論:破棄自判(被告人無罪)


補足意見:那須弘平判事、近藤崇晴判事
反対意見:堀籠幸男判事、田原睦夫判事


→ 追ってコメント予定。

最三小判平成21年4月14日*10・貸金請求本訴,損害賠償等請求反訴事件*11

本訴は、上告人(貸金業者)が,借主である被上告人Y1及びその連帯保証人である被上告人Y2に対して貸金の返済を求めたところ、被上告人Y1が,弁済によって過払金が生じているとして,上告人に対してその返還を求める反訴を提起した、というものであった。


そして、原審は、Y1の元利金の支払期日(平成13年1月5日)経過後も上告人が弁済を受け続けていたことから、上告人が期限の利益の喪失を宥恕して再度期限の利益を与えた、と解し、利息制限法1条1項所定の利率により充当計算して、被上告人Y1の過払金返還請求を認めていた。


結論: 破棄差戻。

「記録によれば,上告人は,上記期限の利益の喪失後は,本件貸付けに係る債務の弁済を受けるたびに,受領した金員を「利息」ではなく「損害金」へ充当した旨記載した領収書兼利用明細書を交付していたから,上告人に期限の利益の喪失を宥恕し,再度期限の利益を付与する意思はなかったと主張していること(以下,この主張を「上告人の反対主張」という。),上告人は,これに沿う証拠として,上記期限の利益の喪失後に受領した金員の充当内容が記載された領収書兼利用明細書と題する書面を多数提出していること,これらの書面のうち,平成13年1月9日付けの書面及び受領金額が2737円と記載された同年2月6日付けの書面には,受領した金員を上記期限の利益を喪失した日までに発生した利息に充当した旨の記載がされているが,受領金額が8万6883円と記載された同日付けの書面及びこれより後の日付の各書面には,受領した金員を上記期限の利益を喪失した日の翌日以降に発生した損害金又は残元本に充当した旨の記載がされていること,この記載は,残元本全額に対する遅延損害金が発生していることを前提としたものであることが明らかである。」
上告人が,上記期限の利益の喪失後は,被上告人Y1に対し,上記のような,期限の利益を喪失したことを前提とする記載がされた書面を交付していたとすれば,上告人が別途同書面の記載内容とは異なる内容の請求をしていたなどの特段の事情のない限り,上告人が同書面の記載内容と矛盾する宥恕や期限の利益の再度付与の意思表示をしたとは認められないというべきである。そして,上告人が残元利金の一括支払を請求していないなどの原審が指摘する上記4(3)の事情は,上記特段の事情に当たるものではない。」
「しかるに,原審は,上告人の反対主張について審理することなく,上告人が被上告人Y1に対し,上記期限の利益の喪失を宥恕し,再度期限の利益を付与したと判断しているのであるから,この原審の判断には,審理不尽の結果,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」

この種の訴訟で、つい最近まで最高裁が借り手側を保護する判決を連発していたのは記憶に新しいところだが、さすがに、上記のような事情の下で、損害金への充当を一切認めないのはナンセンスというべきで、“借り手保護の行き過ぎ”にブレーキをかけた、という点において、評価できる判決だと思われる。

*1:平成20(行ヒ)35、今井功裁判長、http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090417193516.pdf

*2:原審・東京高判平成19年11月5日、平成19(行コ)229

*3:平成19(受)1219、古田佑紀裁判長、http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090417163145.pdf

*4:原審・東京高判平成19年4月25日、平成19(ネ)377

*5:平成20(受)951、中川了滋裁判長、http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090417162419.pdf

*6:原審・仙台高判平成20年2月27日、平成19(ネ)524

*7:http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/C657FA877BCB0DA249256FBE00267B17.pdf

*8:平成19(あ)1785、田原睦夫裁判長、http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090414170745.pdf

*9:原審・東京高判平成19年8月23日、平成18(う)2995

*10:H19(受)996、藤田宙靖裁判長、http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090414114031.pdf

*11:原審・東京高判平成19年3月8日、H18(ネ)4441