条文化すれば分かりやすくなる、ってものでもないような・・・

毎年恒例となった「知的財産推進計画2009」が24日、発表された。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/090624/2009keikaku.pdf


まだしっかりと精査したわけではないが、ざっと見た限りは“マンネリ化”というフレーズがぴったりはまりそうな雰囲気である。


昨年の推進計画で、「濫用的権利行使への対応」や「コモンズ」の話題が登場したときは、ちょっとはムードが変わるかとも思ったのだが*1、今年は計画を立てても“ガラガラポン”になる可能性が高い*2こともあってか、全般的に真新しさがイマイチ感じられない*3



ところで、本エントリーのタイトルは、若干フライング気味に公表された以下の記事に由来している。

「政府の知的財産戦略本部(本部長・麻生太郎首相)が24日に決定する「知的財産推進計画2009」の概要が明らかになった。インターネットでの放送番組転送サービスなど、違法性の判断基準があいまいだった新しいデジタルサービスについて、著作権法で基準を明確化し、参入を容易にする方針を打ち出した。」
日本経済新聞2009年6月24日付朝刊・第4面)

実際に発表された「推進計画」との関係で、どの項目が上記「方針」に当たるのかは判然としないのだが、最近の(一見すると不安定な)裁判例の傾向から、上記のような発想が出てくることは一応理解できる。


だが、このような「著作権法による基準の明確化」が本当に可能なのだろうか?


記事の中では、

知財本部は、実態として利用者本人が楽しむのを目的としたサービスであれば合法となるよう、著作権法で定めることを促す。文化庁で審議し今年度内に結論を出す。」

とされているが、「複製(利用)」主体が誰か(個人かそれ以外か)、が権利制限の範囲を考える上での一つのメルクマールになっている今の著作権法の構造の中に、「複製の利益享受者が誰か?」という要素を“条文化して”盛り込むのはちょっと難しいように思えてならない。


もちろん、デジタルサービスのスキームがどのようなものであろうと、それが既存の権利者の利益を実質的に害しないといえるのであれば、権利行使を認めるべきではない、とする判断は実際にあり得るし、長い目で見れば権利者にとってもその方が利益につながるのでは・・・?とも思ったりするのであるが、立法技術的に克服しなければいけない点は多いんじゃないか、というのが自分の率直な思いである。


単に、“漠然としたフェアユース”規定を設けた上で、上記のような提案のニーズは満たせる、と解釈できるのであれば、それでよいかも知れないのであるが・・・。


いろいろと考えさせられる問題も多いだけに、ここはもう少しキャッチアップしていきたいと思う。

*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20080706/1215387874

*2:どんなに立派な設計図を描いても、政権が交代してしまえば絵に描いた・・・になってしまう可能性は高いだろう。

*3:一昨年までの傾向に戻った感じだ。もっとも、単に自分が見落としているだけで、ひそかに画期的な施策が紛れ込んでいる可能性もないわけではないため、落ち着いた頃にもう一度確認しようとは思っているが。

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