東芝のレシーブ

SARVHによる提訴、という事態に至った録画補償金問題だが、提訴記者会見に対応して出された東芝のプレスリリースが読みやすくてなかなか良い。
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2009_11/pr_j1101.htm

1.補償金の徴収について
「従来のアナログ放送においては著作権保護技術(ダビング10コピーワンス)が施されておらず、無制限にコピーが可能なことから、アナログチューナーを搭載するDVDレコーダーについては補償金の対象にすることで関係者間の合意がなされていました。」
「しかし、現在のデジタル放送においては著作権保護技術が施されてコピーが制限されているため、デジタル放送の記録に特化したアナログチューナーを搭載していないDVDレコーダー(以下、アナログチューナー非搭載DVDレコーダー)が補償金の対象か否かについては、消費者、権利者、製造業者など関係者の合意にいたらず、結論が得られていません。(平成21年1月文化審議会著作権分科会報告書)」
当社は法令で定める録画機器に関して補償金の徴収に協力していますが、一方で、アナログチューナー非搭載DVDレコーダーについては補償金の対象か否か明確でないため、現段階ではご購入者から補償金を徴収できないと判断しています。」

3.今後について
「現状では、当社が販売するアナログチューナー非搭載DVDレコーダーは補償金の対象か否か明確でないと判断しています。補償対象か否かが明確でない状況で補償金の徴収を行ない、その後、当該機器が補償金徴収の対象外とされた場合は、商品のご購入者に対する補償金の返還が事実上不可能であることから、現状の下では、当該商品のご購入者から補償金を徴収できないと考えます。」
「今後も、当社は、著作物の権利者や消費者の方々とともに解決に向けた議論に真摯に取り組んでいきます。また、今後、経済産業省文化庁が、消費者、権利者、製造業者など関係者の合意のもと、必要な措置を適切に講じることを期待します。」


権利者団体側の“コンプライアンス云々”の攻撃に対抗するかのように、これまで補償金徴収に協力してきたことをアピールし、会社としての誠実さを前面に押し出しつつ、購入者から補償金を徴収できない理由をシンプルに述べる・・・。


簡潔にして明快なリリースということができるだろう。


気になる敗訴した場合の対応についても、

「アナログチューナー非搭載DVDレコーダーが補償金の対象であると明確化された場合、それ以前に当社の当該商品をご購入いただいた方から過去に遡って補償金をいただくことはありません。」

と顧客に迷惑をかけないスタンスを明確にしている。


SARVH(というかその取り巻きの権利者団体)のどこまでがネタでどこまでが本気か分からないような幻惑“サーブ”を、基本に忠実に受け止めた東芝の好レシーブ。


この先のラリーは結構長く続きそうだが、筋の通った対応を続けている限り会社が致命的なダメージを被ることはないと思われるだけに、今後も大人の対応で権利者団体側の筋の悪いパフォーマンスを軽くあしらっていただきたいものだと思う。


なお、プレスリリースの中では、「協力義務」に関して、

「注1の通り、法令では、補償金の支払義務は購入者にあり、補償金を受ける権利を行使する権限はSARVHにあるとされています。さらに法令では、当社のような製造業者に対して、SARVHが購入者に補償金の支払いを請求する場合、補償金の支払いの請求及びその受領に関して協力する義務が定められています。製造業者が録画機器や記録媒体の価格に含めて購入者から補償金を徴収することは、その協力義務の一環であるといえます。このようにして徴収された補償金は、製造業者の団体(社団法人電子情報技術産業協会、社団法人日本記録メディア工業会)が録画機器や記録媒体の各製造業者から集約して、SARVHに支払われます。」

という説明が加えられており、(慎重な書き方ではあるが)現状の補償金徴収システムが当然の前提とされているようにも読める。


以前にも書いたように、今回の訴訟では、「法令で定める対象機器」の解釈とともに、「協力義務」に基づくメーカーへの直接請求の可否も争点になりうると思われるだけに、今後は、この点を東芝側がどう扱っていくのか、という点にも注目しながら見ていきたい。

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