「転んでもただでは起きない」精神。

キヤノンマーケティングジャパン株式会社が掲げた「訳あって、今年の採用活動に出遅れます」という宣言文が、あちこちで反響を呼んでいる*1


ポッと出のベンチャー企業ならまだしも、「キヤノン」ブランドの国内営業を一手に担い、キヤノン株式会社とともに「キヤノン」グループを支えるこの会社が*2、これだけセンセーショナルなメッセージを発するのは極めて異例なことといえるだろう。

「新学期が始まったばかりの4月から面接を行うことで、学生のみなさんから学ぶ機会を奪っているのではないか?」
「各企業は「大学4年生になったら、選考活動をしても大丈夫」との暗黙の了解のもと、4月から一斉に選考を行っていました。これは、私たちも含めた企業側の「都合のいい解釈」だったのかもしれません。」

そして、「正しい“就職活動の在り方”」を追及した結果が、「選考活動を夏期休暇期間中に行う」という結論である。



企業(特に電機メーカー系販社)を取り巻く環境が厳しい現状を考えると、

「現時点で、“2011年に新卒を採用する”という最終決定に至っていません」

と採用見送りを示唆する前半部分にこのアピールのキモがあり、後半部分はそんな“お家の事情”を美しく見せるための飾りに過ぎない、と揶揄されても仕方がない面はあるだろう。


だが、これまで横並び一辺倒で、採用担当者が他社を真似することにやたら熱心な現状においては*3、たとえ“負け惜しみ”や“武士は食わねど・・・”的発想から出たメッセージであっても、他社に与えるインパクトは決して小さくないのではないかと思う。



大体、採用活動が年々前倒しになって、近年では4月前半に集中するようになったおかげで、面接だの内定者フォローだのに駆り出される社員の方もまた困惑しているのだ*4


仮に、定期採用活動のミッションを(全部といわないまでも)半分くらい、年度末の慌ただしさや株主総会対応等に追われることのない7〜8月に落としてくれるだけで、社内の負担はかなり軽減されるし、その後に続くステップ(正式内定、入社)までの間のフォローを必要以上に引っ張らなくても済む*5


勉強熱心な学生にとっても、会社の中の人間にとっても好都合な「夏採用」。


心ある採用担当者が、この流れに少しでも追随する勇気を持ってくれることを、筆者としては願うのみである*6

*1:http://teiki.saiyo.jp/canon-mj2011/contents/dm_2/index.html

*2:一応資本関係上はキヤノンが50.1%保有する形になっているようだが、キヤノンマーケティングもレッキとした東証1部上場会社であり、しかも両者の社風はかなり異なる(傍から見ていると仲が悪いんじゃないか、と思うくらいw)。

*3:それを加速するのが、リ●ルートをはじめとする就職コンサルティング系企業だと自分は思っている(あくまで独断と偏見に基づく評価だが)。

*4:3月〜4月という時期は、年度末・年度初めの業務がそうでなくても重たい上に、社内の定期異動の時期にも重なってくるので、通常の社員であれば、人事の見栄の張りあいに付き合っている暇など本来ない。

*5:そもそも、1年近く前に内々定をもらった学生に、他社や他の進路に気移りするな、という方が無理なのであって、そんな摂理に逆らってイベントを繰り返したあげく、最終的に辞退を食らった時の空しさといったら・・・筆舌に尽くしがたいものがある。

*6:なお、「真面目に授業に出たい」という学生のニーズがある一方で、「ちょっとでも早く内定をもらってその後自分のやりたいことに専念したい」という学生のニーズもあるだろうから、将来的には、各社で4月採用と8月採用の2ルートを用意する方向で収斂していくのが望ましいと思うのだが、果たしてどうなるか。なお、かつての就職協定が廃止された直後には、5・6月採用(協定廃止に伴う前倒しルート)と8、9月採用(協定廃止前のルート)の2ルートを用意する会社が結構多かった、ということも合わせて付言しておきたい。

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