W杯での過去最高地点（ベスト8）到達という名誉を目前にして、あと一歩届かなかった我らが日本代表。
8年の迷走を経てようやく・・・というところまで辿りつきかけていただけに、
「何でこんなに一段一段なんだろう」
というバンクーバーでの上村愛子選手のセリフを思い出してしまうくらい、試合を見ていた方の虚脱感も強かった。
もっとも、丸一日近く経って、少し冷静に思い返すと、90分+30分の間に日本が勝てるチャンスがどれくらいだったのだろう・・・ということにもなるわけで。
パラグアイの攻撃陣は、“強さ”こそ感じなかったものの、試合終盤になってもパワープレーに頼らずに足元に嫌らしいパスを通してくる巧さを持っていたし*1、守備も堅くてペナルティエリアまで入り込む隙をなかなか与えてくれなかった。
正直、後半の終わりの方から延長戦を見ていて、どこで1点取られるんだろう、と心配ばかりしているような展開だったから*2、PK戦までもつれこんだこと自体を大健闘と評価すべきで、PK戦をやった結果、「外したのが1人だけだった」*3というのは単なる結果論に過ぎないような気がする*4。
それに、試合直後にも書いたとおり、イエローカードの累積状況からいって、どっちにしろ次はノーチャンスだった。
今回のPK戦が、これまで見たPK戦の中で一番緊張しながら見たものだったのは確かだが、“惜しさ”という点では、勝てばベスト4、うまくいけばメダルも狙えたシドニー五輪のPK戦の方が、遥かに強かったように思う*5。
興味深かったのは、試合後に岡田監督が残した、
「（自分の）執念が足りなかった」
というフレーズ。
確かに、パラグアイ戦に関しては、リスクを取って90分、120分内で勝ちにいく、というベンチワークではなかったかもしれないし*6、精神論に落とし込んで自分のせいにするのが、選手を責めない岡田監督らしいとは思うのだが、勝利への執念が人一番強かった指揮官*7のコメントとしては意外感もあり・・・*8。
いずれにせよ、ワールドカップの舞台で初めての延長戦とPK合戦を経験できたのは、日本代表にとっては良い財産になったことだろう。
今回初のベスト8に進んだパラグアイは、4度目の正直でようやく壁を突破した*9。
日本代表が、次に階段を「一段」上がれるのがいつなのかは分からないけれど*10、2010年のタフな経験をどんな形でもいいから国内に還元して承継していくことができたなら、いつかは、「もう一段」階段を登れるんじゃないか・・・そう信じてやまない。
*1:カメルーンやデンマークのようにパワープレーに出てくる相手なら、空中戦に強い両CBとGKが体を張れば何とかしのげるが、つながれてスッと裏に出されるとなかなか止めるのは難しい。いつも以上に守備陣の消耗が激しい試合だったように思う。
*2:もちろん、時々日本にもチャンスは来ていたのだけれど、一歩間違えるとそこから一気につながれて失点につながる危険と背中合わせだった。
*3:日経紙の夕刊ではPK戦の“人選”に対する疑問が投げかけられていたが、パラグアイの選手たちの“巧さ”はPKでも発揮されていたから、たとえ駒野選手が失敗しなくても、どこかで日本の誰かがババを引くことになったんじゃないかな・・・と。
*4:逆に、あの展開で、パラグアイにPK戦で勝ってしまっていたら、パラグアイ国民には相当恨まれただろう・・・。
*5:何たって、ワールドユース準優勝組＋中田英寿世代という五輪代表史上最強メンバーだったし、試合自体も2-1でリードしてあと少しのところで追いつかれる、という展開だったから、あの時はホントに見ている方も悔しい思いをしたものだ。
*6:守備の要・阿部選手に代えて中村憲剛選手を入れたあたりには、おおっ、と思わせるものはあったが、最後の交代枠で攻撃のカードを切るのをギリギリまで引っ張り、しかもそのカードが無難に「玉田」では・・・。守備を捨ててでも森本の強さと速さに賭けた方が良かったんじゃないかな・・・と素人的には思ってしまう。
*7:ゆえに、リアリズムに徹して本番直前でガラッと戦術もメンバーも変えることができたのだろう。
*8:本質的な問題は「執念」のもっと手前のところにあるのでは？という気もするのだが・・・。
*9:その間負けた相手は、イングランド（次戦でマラドーナの“神の手”に沈んだものの、当時は今より遥かに欧州での地位は高かった（はず））、フランス（大会優勝）、ドイツ（大会準優勝）と組み合わせにもとことん恵まれていなかった。
*10:次回の予選では中東も巻き返してくるだろうし、中国も急激に力を付けているからヘタをすれば本戦に出られなくなる可能性だってある。仮に出場できたとしても、02年や今大会ほど組み合わせに恵まれる保障はほとんど（というか全く、か）ない。
