どちらが悪いのか。

この日の日経紙の法務面*1で、「企業法務に詳しい」という触れ込みとともに紹介されている某弁護士のコメントを読み始めて早々に仰天した。

いわく・・・

「現行の原子力損害賠償法(原賠法)では、補償するのは直接的被害のみで風評被害は入らないといわれるが、民法上の責任は残るはずだ。」
原発がなければ農業、漁業などの被害はここまで拡大しなかったので、こうした被害も賠償の対象とすべきだ。」

筆者注:
風評被害は入らない」なんて発言は、少なくとも今公式に行われている議論の中では、誰の口からも出ていないし、JCOの臨界事故の際にも、風評被害を含めた損害賠償が原賠法に基づき認められている。農業、漁業被害は、当然、賠償の対象となる前提で議論が進められているのも周知のとおり。

「原賠法が民法など他の法律での賠償を免責することがないように必要なら法律上の手当てをしておくべきだ」

筆者注:
前提が間違っている以上、ここだけ突っ込んでも仕方ないのだけれど、既に何件も原賠法以外の法律に基づく賠償請求を排除する裁判例が存在する以上、それを意識したコメントをしないと「何言ってんの?」ってことになってしまうのは否めないだろう。

などなど。

「コメント」とはいっても、聞きとった内容をまとめて記事に起こしているのは、あくまで法務面担当の「記者」なので、当の弁護士ご本人が伝えようとしたことと反する内容の記述が“コメント”として掲載されてしまった可能性は捨てきれない。

上記“某弁護士”が、企業法務にかかわる人間であれば誰でも名前を知っている高名な先生であることを考えると、なおさらそう思いたいところである。

だが、以下で紹介する最後の一節については、単なる“要訳ミス”という次元の問題ではなさそうだ。

(東電に)「国が援助をするのなら、東電は委員会設置会社に移行し、役員の過半数原発企業統治の外部の専門家に変えるべきだ」

このコメントをどう評価するかは、読者の皆様のご判断にお任せしたいと思うが・・・。


社会的に影響力が大きい方の“コメント”だけに、天下の日経紙に掲載されるものだけでも、正確な事実を踏まえた上で、言葉を選んで補ってコメントして or 記事にしていただきたいなぁ・・・と思うのは、ちょっと欲張り過ぎだろうか?

*1:2011年5月2日付け朝刊・第18面

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