ネット風評被害対策の新サービス

最近、商売上手な弁護士が、新手のサービスを展開しようとする傾向があるようだが、そんな中、日経紙に、また一つ興味深い記事が掲載されていた。

サイバーエージェントは鳥飼総合法律事務所(東京・千代田)と組み、インターネット上での誹謗(ひぼう)中傷やプライバシー侵害の被害を防ぐ新しいサービスを週内に始める。ネット企業と法律事務所が連携し、風評被害対策を手掛ける例は珍しく、著名人や企業などの需要を見込む。」(日本経済新聞2012年10月5日付朝刊・第13面)

「インターネットガーディアン」と称するこのサービス、鳥飼総合法律事務所のサイトに行くと、早速大々的な宣伝が掲載されている(http://www.torikai.gr.jp/ip-it/10444)。

サイトを見る限り、別にやっていること自体は真新しいことではなく、誹謗中傷等の実態を特定したうえで(これはサイバー側の仕事らしい)、違法性の有無を判断、さらに、削除依頼や発信者情報の開示請求、損害賠償請求、といった段階的な法的手段をとる、という、それだけの話なのであるが、元々専門家に依頼すると費用倒れになりやすいこの手の話で、調査から法的手続への移行までをパッケージで引き受けてくれる、というのであれば、費用・労力の双方で、依頼主側にとってはメリットが大きい話だといえるだろう*1

まぁ、大手企業であれば、ネット掲示板等々に少々の中傷があふれたところで、実際に受けるダメージは(ネット住民が想像しているのに比べれば)遥かに少ないし、いちいちクレームを付けるのも大人げない(&費用と時間の無駄)として、社内で「放置」する判断に持っていくことのほうが多いと思うので、主な顧客になるのは、アメブロで自分が開いていたブログが炎上してしまった芸能人とか、中小企業とかにとどまるのではないのかな・・・と思うところではあるのだが*2

なお、個人的には、法律事務所単独のサービスであればともかく、ISPがこの手のサービスを手掛けるとなると、自分のところのブログサービス等を使っている人が「加害者」となった時の処理をどうするんだろう・・・?というところが、若干気になるところ。
もしかすると、こういう取り組みが、プロ責法上の微妙なバランスの上で成り立っているISPの実務に一石を投じる動きにつながっていくのかもしれないけれど・・・。

*1:通常の企業であれば、社内の担当部署で「誹謗中傷」的な書き込みを収集した上で、明らかに違法だなぁ、と思うものについては、社内の担当者レベルで削除依頼を出し、それでもラチが明かない、あるいは、腹の虫がおさまらない場合に、弁護士に相談に行く、という流れになることが多いと思うのだが、その辺の作業をすべて一元化した形で依頼できるのか、そして、その場合のコストがどの程度になるのか(社内のリソースを活用した場合との比較で割に合うコストに収まっているのか)といったあたりが、法人顧客をつかめるかどうかのカギになってくると思われる。

*2:これが、商標権、著作権の侵害リサーチ、被害除去くらいまで含めたサービスになってくると、顧客層はかなり広がると思うのだが、そこまで広げてしまうと、既存のサービスとの軋轢もまた出てきてしまうのかもしれない。

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