「事業統合」報道に思うこと。

8月4日付けの日本経済新聞朝刊の1面に、

日立製作所三菱重工業経営統合に向けた協議を始めることに基本合意した」

というオドロオドロしい見出しが躍った。

中身を読むと、まだそんなに話は煮詰まっていないような印象を受けるが、それでも、今後、「両社の主力である社会インフラ事業などの統合」に向けて本格的に話が進んでいくことになれば、世の中に大きなインパクトを及ぼすことは間違いない*1

で、気になるのは、恐らくこの後に出てくるであろう、事業統合審査に関する公取委の反応と、それに対する日経紙の批判的論調がどこまでエスカレートするか(笑)、ということ。

“企業活動に対する行政権力の介入は小さければ小さいほど良い”というスタンスを一応標榜している日経紙*2としては、ここぞとばかりに、

「今回の統合は日本の製造業復権に向けて大きな意味を持つものであり、公取委はそれを妨げるような介入をすべきではない」

という論調を掲げることが予想される。
そして、その根拠として、国内市場の縮小、世界市場における公共インフラ受注の競争激化、といったお決まりのキーワードを掲げ、「国内的には大規模な事業統合だが、世界的にはGEやジーメンスとようやく肩を並べるに過ぎない」的な、これまたお決まりのフレーズで論陣を張ることになるのだろう。

だが、この記事で事業統合が報じられている発電プラントや鉄道システム、といった商品群は、半導体やエレクトロニクス製品とは本来異質なもので、確かに近年では大型の国際的な入札案件が増加しているものの、本質的には、各国の政治的・政策的影響を強く受ける「公共事業」の世界に属するものである。

新聞で大々的に報道されない中小規模*3の案件の中には、実質的に域外企業に対して“閉ざされた”市場の中で処理されているものも決して少なくはないはずだ。

また、国内の市場にしても、大きく報じられていないだけで設備更新等で毎年少なからず需要が発生しているし、こちらの方は、外国に比べてもより国内企業に有利な市場が形成されている。

そう考えると、「需要者の側に立った市場画定」に基づき統合審査を進める公取委としても、

「グローバルな時代ですから大目にみましょう」

と、大らかなスタンスをとるわけにもいかないだろう。

おそらく、まともに全部くっつけようとすれば、いろんなところで“寡占状態”が出現して、切り売りせざるを得ない状況に追い込まれてしまうだろうから、専ら今後の需要が新興国でしか期待できないような分野(国内市場が縮小しきっていて、弊害が出る需要者が国内にいないような分野)だとか、逆に徹底的なグローバル化が進んでいるような分野*4に絞って、統合作業を進める、というのが、一番穏当な進め方だろうなぁ・・・というのが、実務家としての素直な思いではあるのだが、果たしてどうなるか。

「徹底した当局への攻撃的論調→尽きたときに論説委員の嘆き節」という日経紙の伝統的パターンが、どのようなタイミングで飛び出すかも含め、いろいろと注目すべきことは多い。

*1:一般的に、財閥系企業と独立系企業の統合は難しい(破談になったキリンとサントリーの統合話なんて、まさにその典型)と言われるが、この両者に関しては、「なんでこの程度の話でハンコ付いた書面を出してくるの?」っていうくらいの堅さ、融通の利かなさがある、という点で(笑)、社風的に共通している面も多いから、“雰囲気で壊れる”ってことは、おそらくないだろうと思う。

*2:必ずしもこのスタンスが一貫していなくて、時々「政府の役割」を過度に重んじるような記事を書いたりするから、イマイチ信用されないんだけど・・・。

*3:といっても、その市場規模は決して小さくない。

*4:そんな分野がインフラの世界でどれだけあるのか、疑問も残るところではあるが・・・。