独禁法が「武器」であることを再認識させられるニュース

昨年の立ち入り調査、そして今年6月の排除措置命令、と、業界の“仁義なき戦い”を象徴するような話題として取り上げられてきた「DeNAのグリーに対する取引妨害」事件*1が、ここに来てまた新たな展開を見せようとしている。

「交流サイト(SNS)大手、ディー・エヌ・エーDeNA)が取引先のゲーム開発会社と他のSNSとの契約行為を妨害したとして公正取引委員会から排除措置命令を受けたことに伴い、同業のグリーなどが11月上旬にもゲームの供給を妨害されたとして、DeNAを相手取り、損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こすことがわかった。ゲーム開発会社など通信関連企業数社とともに数十億円を請求する見通しだ。」(日本経済新聞2011年10月22日付け朝刊・第13面)

おそらく、これに先立つ公取委の調査自体、「妨害された側」のアクションが何らかのトリガーになっていると思われるわけで、ライバル会社に対する排除措置命令、そしてその余勢をかっての損害賠償請求訴訟、と来れば、まさに最近流行りの「独禁法の戦略的活用」を地で行くような流れになってくる。

2年前には、「釣りゲーム」の著作権不正競争防止法違反でも、DeNAに対して戦を仕掛けて物議をかもしたグリーという会社*2

6月末で正社員600名弱の会社ながら、既に社内に4名の社内弁護士を抱え*3、法務・知財部門の増強に余念がないこの会社の“肉食的行動”をどう評価するかは人それぞれだろうが、仮にこの訴訟がガチンコで判決まで行くようなことになれば、独禁法事例集にまた一つ(学問的にも)面白いネタが増えることは間違いないのではないかと思う*4

個人的には、DeNAの側でも、やられっぱなしではなく、相手側がDeNAの取引相手に対して行っている(かもしれない)諸々の行為を捉えて、別訴でも起こせばさらに面白い展開になるんじゃないかと思うのだが*5、果たしてどうなるか。

今後の帰趨に注目してみたい。

*1:公取委の排除措置命令については、http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20110609/1319305910参照。

*2:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20090926/1254011872参照。自分も久々にこのニュースを思い出した。

*3:頻繁に募集もかけているようだから、現時点ではさらに増えているかもしれない。

*4:排除措置命令に関するエントリーでも指摘したとおり、公取委は直接的には「妨害行為」の存在しか指摘しておらず、具体的にどのようなダメージが競争者であるグリーに生じたのか、という点にまで言及していない(逆に言えば、そこまで言及しなくても条文上「不公正な取引方法」該当性が認められてしまうのが、一般指定第14項の類型である)。したがって、損害額が争点になるのはもちろんのこと、グリーについては損害発生の有無、というのも一つの争点になり得るのではないかと思う(公取委の事実認定について争った場合はもちろん、あの事実認定を前提としても、「リンクを切られたゲームメーカーには損害ありといえるが、グリー自体には何ら損害は生じていない」という反論は十分に成り立ちうる(それに対する再反論をするためには、DeNAの違法行為ゆえにグリーが有力ゲームメーカーとの契約を切られた、あるいは契約機会を失った、ということを主張立証しないといけないのだろうが、それがどのレベルまでできるのか、が気になるところである)。

*5:いろいろ見聞きする業界の話による限り、敢えて念入りに探さなくても、いろんなものが出てきそうな気はする。

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