コップの中の争い

男子のマラソン五輪代表の最終選考レースとなった「びわ湖毎日マラソン」。
仕事をしながら、ではあるが、珍しく42.195キロを最初から最後まで眺めていた。

テレビ桟敷で見るレースとしては、非常に面白い展開だったと思う。
このレースにすべてを賭ける選手、として、戦前に散々取り上げられてきた堀端選手や今井正人選手がリズムを失ってズルズル後退する中、常に堅実な走りを見せ、世界選手権での実績もある中本選手が一気に終盤追い上げ、日本人トップの座に踊り出たところまでは想定の範囲内

しかし、この日に関してはそこで終わらず、後方から猛追してきた佐川急便所属の山本亮選手が、最後のトラックに入ったところでとうとう中本選手に追いつぎ、最後は突き放してゴール・・・。
自己ベストを大幅に更新する2時間8分台で五輪代表を確実なものにした。

それまで無名だった選手が大きな大会で大躍進して、日本代表の座を掴む・・・
そのストーリー自体は、決して悪くないし自分も嫌いではない。


だが・・・

めまぐるしく入れ替わる“トップ”は、全体のそれではなく、あくまで“日本人の中の”のそれ。

外国人だけで形成された先頭グループが早々とスパートをかけるなか、付いていった日本人選手は耐えきれずに10番以下まで落ち、最初から優勝を狙える位置にはいなかった後方待機の選手たちが上位に浮上しただけ・・・という表現は、決して大げさとは言えないだろう。

優勝したケニア人選手は、日本の実業団チームに所属している選手。
練習環境は、日本の招待選手たちともほとんど変わらないはずなのに、初マラソンで2時間7分台。
山本選手も中本選手も、影さえ踏むことができなかった。

それでも、2時間3分、4分台の選手が名を連ねる母国に戻れば、五輪など遠い先の話だというのだから、世界は実に広い。


これまで長い間、日本のマラソン、と言えば、本番で現実に金メダルを取れるかどうかはともかく、世界のトップと肩を並べて優勝争いに加われるくらいの力は持っていたはず。

それが今や、随分と水を開けられ、優勝争いとは無縁の“コップの中の争い”でささやかに盛り上がるほかない・・・

そう思ったら、ちょっと寂しくなってしまった。

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