どうせ議員立法するのなら・・・

先月末に文化庁のHPに法案がアップされたのを確認しつつも、なかなかこのブログでのアップに向けて手を付けられないままここまで来てしまった著作権法改正案。

国家的知財戦略の名の下に、華々しく“日本版フェアユース”が打ち上げられたのも今は昔。
やっとのことで辿りついた法制問題小委員会報告書の中で、ギリギリ何とか「3類型」が記されたものの、出来上がった法案は、それと比較しても想像以上に後退したもので、一体どういう使い方をすればよいのやら・・・

という趣旨の解説、というか感想をいずれ書こうとは思っているのだが、こちらの作業が追い付く前に、あっと驚く記事が日経紙の1面に踊っていた。

「民主、自民、公明の3党は13日、違法にインターネットに配信されていると知っているのに音楽や映像などをダウンロードした場合に罰則を科す方針で大筋合意した。著作権保護の強化が狙い。政府が3月に国会に提出した著作権法改正案には盛り込んでいなかったが、3党で罰則を明記した同法案の修正案を近く議員立法で提出する。今国会で成立する見通し。」(日本経済新聞2012年4月14日付け朝刊・第1面)

元々、「第三者が複製した音楽・映像ソフトの私的なダウンロード行為」を権利制限の対象から外す改正が行われる以前から、「刑事罰」をもって対処できる時代にする、いうのは音楽、映画業界の悲願だったように思う。

そして、映画の“(私的)盗撮”を議員立法でまんまと違法化、刑事罰対象化することができた過去もあり、業界としては、当然にこの手を狙っていたのだろう。

だが、文化審議会の議論も経る中で、「私的違法ダウンロード」を刑事罰の対象にしなかったことには、ちゃんと理由があったはずだ*1

にもかかわらず、長年の悲願をこのタイミングで達成しようとするとは、業界の力の強さにつくづく敬服するほかない(苦笑)。

いずれ、議員法案の中身も見えてくるだろうから、それを見ながらコメントしたいと考えているが、個人的にはどうせ修正を加えるのであれば、今回の政府案の中でイマイチだった権利制限に係る条文の作り込みの方に時間を割いてくれれば・・・と思ってしまうのが、素直な人間の心理というわけで・・・。

最終的にどういう動きになるかは分からないが、本件についても、もう少し付きあってみたいと思うところである。

*1:日経紙の記事(第4面)にあるように、海外では罰則化が当たり前、というのが、導入主張論者の一つの理由になっているのだが、日本と海外とでは「刑事罰」の位置付けが全く異なり、「刑事手続」が、法的な側面だけでなく、社会的にも非常に大きなインパクトを持っている我が国のような場所で、罰則化したところで、かえって効果的なエンフォースメントが期待できなくなる可能性が高い。

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