「何でも反対」の不可解さ

某証券会社に対する「野菜HD」絡みのあまりにセンセーショナルな株主提案を皮切りに、蓋をあけてみれば、かなり多くの会社で株主提案が乱れ飛び、波乱の様相を見せている今年の株主総会

さらに、従来(「3・11」以前)から反原発系株主の提案が出されることが多かった各電力会社では、複数の株主(集団)が、それぞれの株主提案を出す、というまさにカオスな状況になっていて、関西電力に至っては、議案が実に30にも上っている*1

この日の日経紙のコラム*2でも紹介されたように、関電の場合、大株主である自治体(大阪市、神戸市、京都市)が議案を出している、ということで、一体どう収拾を付けるのか、興味深々なのであるが、関電の取締役会が、株主から提出された議案の全てに対して、「反対」の意見を出している、という点はちょっと気になる。

いきなり「原発を全廃する」といった乱暴な提案をされても、そりゃ当然賛成するわけにはいかないだろうし、「監査役を環境NGOの推薦とする」といったような株主サイドのお手盛り的議案にも当然反対、となるのは理解できる。

また、「定款」という時宜に応じた機動的な変更が難しい領域に株主提案が踏み込んでいる(というか、そうしないとなかなか提案が出せない)ゆえに、経営方針に関する事項をここに書きこむ、という提案にも俄かには賛同しづらいはずだ。

だが、「情報開示をすることにより経営の透明性を確保する」といった類の、毒にも薬にもならないような定款変更についてまで、イチイチ理屈を付けて反対意見を書き連ねることが、果たして合理的な対応と言えるのか?といえば疑問もあるところである。

さらに、既にあちこちから指摘されているように、関電はこともあろうに、社外取締役の責任限定契約導入を認める第21号議案についてまで「反対」を唱えてしまった。

関電取締役会は、定款において、既に会社法426条1項による取締役会決議による免除の規定があるから、というのを主な理由としているようだが、一般的には427条により責任限定契約を締結する方がむしろ最近のスタンダードのようにも思える中で、あえてこの提案に反対する理由が、自分にはまったく理解できない。

日経紙のコラムにもあるように、大株主といっても、実際の持ち株比率は10%未満にとどまっており、定款変更に必要な3分の2以上の賛成を得ることはかなり難しいことに鑑みれば、会社としてはあくまで強気に反対を唱えておけば大丈夫・・・というハラなのかもしれないが、もう少し是々非々の対応はできないのか・・・と思ったのは、自分だけではないはずだ。


ちなみに、この「株主提案に対して取締役会がすべからく反対する」という傾向は、関電や電力会社に限らず、ほぼ全ての大手企業に共通している。

どこの会社でもそうだが、株主総会を取り仕切る、いわゆる“総務系”の人種には頭の固い人が多いから、そもそも「取締役会以外の一般株主が行った提案に会社が賛成する」などという発想自体が出てくる余地がないのかもしれないけれど、

「取締役会も株主も言いたいことを言いっ放し。会社提案可決、株主提案否決、というシナリオ通りにダラダラと形式的な採決手続きが続く・・・」

といった不毛な株主総会をちょっとでも実りあるものにしたい・・・という思いを持っている経営者や、総会担当者がいらっしゃるのであれば、できるところからちょっとでも変えていく・・・といった対応があっても良いはず。

せめて社内で一定の権限を持っている人だけでも、今後、そのような対応に取り組んでいただけることを期待しつつ、あと半月ちょっとの株主総会シーズンの行方を引き続き見守ることにしたい。

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