次々と示される「補足説明」の説得力やいかに?

もう目前に迫っている、といっても差し支えない「株主総会2021」最大のヤマ、各社6月総会。

多くの会社では招集通知の発送まで終え、日々送られてくる議決権行使状況のデータを眺めながらカウントダウンに入っているところだろうし、そんな中、役員の思い付きの無茶ぶりに振り回され、予定調和的ルーティンのサイクルに乗れずに苦しんでいる、なんてこともあるかもしれない*1

で、そんな今シーズン、大きな話題を振りまいているのが、既に当ブログでも何度かご紹介した「バーチャルオンリー」である。

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

前回のエントリーでは、先月末、㈱アイ・アールジャパンHDが、優等生的な「見解」を示した、というところまでご紹介していたのだが、その後、同じタイプの定款変更議案を出していた他の会社からも、次々に「議案の補足説明」が出されている。

www.nikkei.com

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当然ながら、立場が変わればここで主張する内容も、最初に見解を発表した会社とは違ってくる。

そして、ここで取り上げる4社(最後のソフトバンクグループとソフトバンクの内容はさすがに共通しているところも多いので「3社」という方が適切なのかもしれないが)だけを見比べても、その中身はいずれも微妙に異なる。

唯一といってよい共通点は、冒頭で、

「本議案は、選択可能な株主総会の開催方式の拡充を目的とするものです。」(三井住友FG・1頁)

という趣旨の説明をしている、ということ。

全面的に「バーチャル」に置き換えるのではなく、あくまでリアル総会やハイブリッド型と並ぶ「選択肢」を増やすものに過ぎない、というのは確かに大事な主張ではある。

さらに、バーチャル総会のメリットとして、

「海外も含む遠隔地の株主さまが株主総会に出席しやすくなる」(三井住友FG・1頁)

ということも、各社共通して挙げていることだったりする。

ただ、共通しているのはそこまで、後は会社ごとの個性がかなり出ているな、というのが自分の印象である。

まず、「バーチャル」を選択肢に加える理由として、”緊急事対応”を強調するのが、三井住友FGと、ソフトバンク2社。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大については、政府・地方自治体及び医療従事者の皆さまのご尽力の下、ワクチン接種も進みつつありますが、変異株の拡大など引き続き予断を許さない状況にあると考えられます。新型コロナウイルス感染症以外にも、今後、新たな感染症パンデミックや、大地震などによる大規模災害の発生も懸念される状況です。」(ソフトバンクグループ・1頁、強調筆者、以下同じ。)

このトーンで入ると、自ずから次のフレーズもついてくることになる。

「当社においては、平時においてバーチャルオンリー株主総会を開催する予定はありません。」ソフトバンクグループ・1頁)


ここで、何の留保もなく上記のように言い切ったソフトバンク系2社と、

「バーチャルオンリー株主総会に関する実務対応が未確立であるなど、わが国における現下の社会情勢に鑑みれば・・・」(三井住友FG・1~2頁)

という留保を付した三井住友FGとではちょっと印象が異なるところもあるが、いずれにせよ、そう簡単にバーチャルオンリーはやらないよ、ということを明言した、という点で大きな意義があるのは間違いない。


一方、これらとは異なり、来年以降の「バーチャル」での開催に含みを持たせているように読めるのが、LIXILの「補足説明」である。

「本定款変更により、当社は、今後の株主総会を全てバーチャルオンリー型株主総会で開催することを予定するものではなく、開催方法については、株主の皆様の権利の保障と安全を最優先に考え、新型コロナウイルス感染症の対策等、社会的要請その時々の当社及び株主の皆様の状況や、株主様から当社に対するご意見等を踏まえ、株主総会の開催の都度、慎重な検討を行い、当社取締役会で決定いたします。」(LIXIL・1頁)

もちろん「慎重に」という留保は付されているものの、昨年は「参加型」、今年は「出席型」と、一歩一歩電子化を進めているこの会社にとって、「バーチャルオンリー」にすることの心理的なハードルはそこまで高くないのかもしれない。

また「バーチャルオンリー」とした場合の総会運営方法については、以下のような記述が実に印象的だった。

「将来的に、バーチャルオンリー株主総会の開催を決定するにあたっては、透明性・客観性の確保、恣意性の排除が重要な課題になると認識しております。とりわけ、株主の皆さまとの対話を充実させるためには、株主総会における質疑応答の在り方が重要であることから、例えば、無作為抽出の方法で質問を採り上げるなど、株主の皆さまの利益を不当に害することのないよう充分に留意し、その時点での法制度やシステムインフラの整備状況等も考慮に入れつつ、最適な方法を選択してまいります。」(三井住友FG・2頁)


む、む、無作為抽出ですと・・・

と思わず叫びそうになってしまったが、この点に関してはソフトバンク2社も、前年のハイブリッド型総会で、株主の質問に関し、

「当日ご回答ができなかったものも含めて、 株主総会終了後、全て当社ウェブサイトにて公開させていただいております。」(ソフトバンクグループ・2頁)

という実績をアピールしていたりもするから、時代を超越した長演説をしたり、細かすぎる話題をくどくどを掘り下げたりする方向に向かう株主ではなく、建設的な対話をすることができる株主に囲まれている会社であれば、これもそこまでハードルは高くないのかもしれない、と思ったりする。

おそらく、この点に関しても、これから様々な議論が繰り広げられるだろうし、議案として出しているかどうかにかかわらず、今年の総会の場での議論を通じて知る肌感覚のようなものもおそらくあるはず。

そして、変化の早い現代、そういった過程を経て、来年、あるいは再来年の今頃には、どこかで「ベスト・プラクティス」なるものが打ち出されることになるのかもしれない。

だが、そんな「夜明け前」に示す答えとして、自分がもっともバランスが良いな、と感じたのは以下の回答だったりもしたわけで、今、もっとも「平時のバーチャルオンリー」総会にポジティブな方向で近付いているのは、こちらの会社なのかな、というのが率直な感想である。

「バーチャルオンリー型株主総会の開催にあたっては、その運営体制の整備も極めて重要であると認識しております。具体的には、ITシステムや株主名簿管理人の体制等にかかるインフラ基盤の整備、行使された議決権にかかる公平な取扱い、通信障害への対策、インターネットに不慣れな株主様へのサポート体制の構築、株主様からのご質問、株主提案、動議にかかる恣意的な運用の排除等について、経済産業省が公表するガイドライン等を遵守することはもちろん、当社においてもさらにこれらに関する株主の皆様の公平な取扱い等多角的に検討・準備し、また基準を明確化した上で、株主の皆様の権利を侵害することのない運営方法を整備し、取締役会の慎重な審議により決定してまいります。」(LIXIL・2頁)

肝心の産業競争力強化法改正案は未だ審議未了。まだまだこの先、山も谷もありそうではあるのだけれど、勇気ある各社の果敢な挑戦に微かな期待を寄せつつ、新しい時代の幕開けとなるか、もう少し見守っていきたいと思っている。

*1:そんな無茶ぶり自体が予定調和だ、という会社も少なからずあるだろうし、そんな会社の中の方々には心の底から共感を示すのみである。

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